ハンガリー 2015年版教本

『日本ソムリエ協会教本』のハンガリーの章はほとんど更新されずにきましたが、2015年版で栽培面積など新たな情報が加わりました。

p.342 に、もともと1826年にソーダ水(炭酸水)の生産方法を確立したのはアーニョシュ・イェドリックというハンガリーの物理学者だったが という記述があるのですが、Johann Jacob Schweppe が18世紀後半に炭酸水の生産方法を開発したとする記述とどちらが正しいのでしょう?

参考サイト : 「シュウェップス」ブランドの歴史, en.wikipedia.org, ja.wikipedia.org, 夏の定番!リフレッシュドリンク「Fröccs」〜アルコール編〜

p.343 の主なぶどう品種の説明に、ハンガリーで生産されるワイン用のブドウ品種は、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、カベルネ・ソーヴィニヨンといった国際的亜種のほか、ハンガリー特有のフルミント、ハーシュレヴェル、ユファルク、カダルカなどもあり、主なものでは白ブドウは22種類、赤は9種類である。 と書かれていますが、テキスト編集委員は「亜種」を「品種」という意味で使っているのでしょうか?何故、「品種」に統一しないのでしょう。

「白ブドウは22種類、赤は9種類」というのは表に載っている品種なのでしょうが、Arany Sárfehér (Izsáki) のように主にハンガリーで栽培され、栽培面積もそれなりある品種が何故除外されているのでしょう。

p.343-344 で「ワイン法と品質分類」について書かれていますが、ワイン産地の分類で「保護された原産地名称」と「保護された地理的表示」に全く触れられていません。ハンガリーも EU 加盟国なので、フランスやイタリアのように説明があってもいいと思います。

Védett eredetű bor を「統制保証原産地表記付き最上級ワイン」と訳すのは無理があるように思います。

また、2013年までの三年間で全品種の約15%にあたる9,000ha弱のブドウは新しく植え替えられ と書かれていますが、p.343 の表に載っている品種ごとの栽培面積は植え替え後のデータなのでしょうか?大規模な植え替えで品種構成が変わったのに、植え替え前のデータを載せても意味がないと思いますが…。

p.344-347 に各ワイン産地の栽培面積が載っているのですが、合計で 77,178 ha にもなります。

p.344 に北トランスダヌビア地方のワイン産地として名がある Ászár-Neszmélyi は、1997年のワイン法では22産地のひとつに数えられていたものの、現在は Neszmélyi という産地名になっています。

また、Balatonmelléke、p345 の Pannonhalma-Sokoróalja, Bükkalja, Mátraalja、p.346 の Tokaj-hegyalja, Dél-Balaton、p.347 の Mecsekalja, Villányi-Siklós という産地名も使われていません。

Balatonfüred-Csopak の説明に、バラトン湖北部にあり、二つの村に挟まれる産地 と書かれていますが、「二つの村」とは Balatonfüred-Csopak を構成する市町村(Alsóörs, Aszófő, Balatonakali, Balatonalmádi, Balatonfőkajár, Balatonfüred, Balatonkenese, Balatonszőlős, Balatonudvari, Balatonvilágos, Csopak, Dörgicse, Felsőörs, Lovas, Mencshely, Örvényes, Paloznak, Pécsely, Tihany, Vászoly, Balatoncsicsó, Monoszló, Óbudavár, Szentantalfa, Szentjakabfa, Tagyon, Zánka)のどれを指しているのでしょうか?

Etyek-Buda の説明に、気温は高め と書かれていますが、OEM Etyek-Buda の仕様書ではハンガリーの平均より気温は低め(9.5-10.5 °C)と書かれています。

教本で気温はやや低めとされる Eger の平均気温は、仕様書では 10.65 °C と Etyek-Buda より高くなっています。

p.345 の Somló の説明に、独特のミクロクリマを持つ と書かれていますが、「ミクロクリマ」とは何を意味しているのでしょうか?

p.346 のトカイ・ヘジャリヤ地方の説明に、OEM Tokaj の規定が載っているのですが、廃止されたのは「3、4プットニョシュ」だけでなく、3,4,5,6 Puttonyos と Aszúeszencia が廃止され Aszú のみの表示になりました。

教本で「3、4プットニョシュ」だけ廃止と書かれているのは、2014年の春頃ネット上で3、4プットニョシュが廃止されるという噂が流れたからだと思います。(Aszú に求められる残留糖分量が 120 g /l 以上に規定され、3,4 Puttonyos に該当する甘さのワインが造れなくなることを言っていたのですが……)

Szamorodni の説明に、ふつう貴腐菌の付着しなかった粒から造られる。 と書かれていますが、Szamorodni の「自然のままに」というのは貴腐化した粒と貴腐化していない粒を選り分けないことで、貴腐果の割合が少なければ辛口に、多ければ甘口になります。

Szamorodni の最低残糖分が 30 g/l 以上になっていますが、辛口は 9 g/l 以下で、甘口は 45 g/l 以上です。

Aszú の説明に、プットニュと呼ばれる26kg入りの背負い桶 と書かれていますが、桶の大きさは「27.2 l」のように容量であらわすのが普通だと思います。

136 l 入りの樽の名称が ゲンツィ(Genci) になっていますが、Gönci Hordó の間違いだと思います。

最上格のナトゥールエッセンシアは、貴腐ブドウ100%で造り、残糖分は250g/lと決められている と書かれていますが、250 g というのは1997年より前の規定で、1997年のワイン法で以下のように規定されました。

Tokaji eszencia (nektár): a tokaj-hegyaljai borvidék zárt területén termett, a Botrytis cinerea hatására nemesen rothadt, tokén aszúsodott és szüretkor külön szedett szolobogyókból préselés nélkül kiszivárgó, mustból minimális erjedés útján keletkezo tokaji borkülönlegesség, mely literenként legalább 450 gramm összes természetes cukrot és 50 gramm cukormentes vonadékanyagot tartalmaz, ezen kívül az aszúra jellemzo különleges illattal és zamattal rendelkezik.

また、OEM Tokaj の規定にあるのは Eszencia で「ナトゥールエッセンシア」という表現はされません。

「その他」の説明に、マーシュラーシュ(Máslás)は、英語の "コピー" の意味。上記アスー、または次のフォルディ夕ーシュ用ワインの搾り滓に、マストないしはワインを注ぎ、再発酵、熟成させたもので、辛口。フォルディターシュ(Fordítás)は、アスー用ワインの二番搾りの果汁にマストを加えて再発酵、熟成させたワインで、甘口。 と書かれていますが、どこから情報を入手したのでしょうか?

Máslás と Fordítás は以下のように定義されているのですが…。

Máslás : Wine made by pouring wine onto lees of Tokaj Aszú wine of the same vintage.

Fordítás : Wine made by pouring wine onto pressed aszú pulp of the same vintage.

また、Máslás が辛口で、Fordítás が甘口と決まっている訳でもありません。

p.347 の Tolna の説明に、1998年にワイン産地として新たに認定されたが と書かれていますが、1997年のワイン法の22産地に Tolna は入っています。

注 : OEM は Oltalom alatt álló Eredetmegjelölés の略語で、「保護された原産地名称」をあらわすハンガリー語です。「保護された地理的表示」は Oltalom alatt álló Földrajzi Jelzés (OFJ) になります。

posted : 2016-01-02 | category : 日本ソムリエ協会教本2015年版

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