ソムリエ教本の「イタリアのワイン」に関する記述での間違いや気になったことについて書いています。
「歴史・気候・風土・土壌」の歴史の説明で p.249 に ワインの生産は僅かに6,0000年の歴史、これはエジプトの王の墓にその製造法が刻まれていることにより知ることができる。
と書かれていますが、ワインの製造法が刻まれた6,000年前の王の墓とは誰の墓なのでしょう?また、この説明では初めて人の手によってワインが造られたのはエジプトということになりますが本当なのでしょうか?
ちなみに、p.75 には 紀元前3,100年から1,500年にかけて、エジプトでは第1王朝から第18王朝まで栄えたが、往時を物語るピラミッドの中の壁面に、ぶどう栽培やワイン醸造の絵が描かれている。
と書かれていますが……。
p.251 のイタリアの緯度の説明に、比較としてドイツの緯度が載っていますが出鱈目です。
p.252 で「地形からくるワインのタイプ」としてワインを5つのタイプに分けていますが出鱈目です。どこに地形とワインの関連性があるのでしょう!!
p.254 の「ワインの法律と品質分類」の原産地呼称の説明に「単純原産地呼称」の名がありますが存在しない呼称です。
教本の同じページに その後1963年発行のイタリアワイン法にも長所と短所が見られ、それらを改善するために1992年にワイン法が改定された。
と書かれていますが、その1992年のワイン法で Denominazioni di Origine Semplice(単純原産地呼称)は廃止されています。
イタリアワイン法の長所として 世界的にも最も大規模なワイン法であった。
と書かれていますが、何が大規模なのでしょう?
p.258 に[D.O.C.G.銘柄]という表がありワイン産地と属する州、DOCG として認められた年が載っていますが、ガッティナーラ、カルミニャーノ、トルジャーノが DOCG として認められたのは1989年ではなく1991年で、タウラージは1992年ではなく1993年になると思います。(ソムリエ教本では、官報の公示をもって認定されたものとされています。)
参考ページ : DOCG として認可された年月日のリスト
「ワインの産地と特徴」のヴェネト州の説明で p.261 に この州は総面積の57%を占める平地が中心で、丘陵地14%、山地は29%という条件で
と書かれていますが、平地が中心であることと「ぶどう栽培」にどういう因果関係があるのでしょうか?州全体の平地が多い少ないかより、ぶどう畑が平野・丘陵・山地のどこにあるかのほうが重要だと思うのですが……。
ちなみに、2010年の国勢調査(Censimento Agricoltura 2010)のデータではヴェネト州のぶどう畑の 55.29 % が平野(pianura)に、42.90 % が丘陵(collina)に、1.81 % が山地(montagna)にありますが、DOP(DOCG, DOC)の畑に限ると平野 45.92 %、丘陵 52.03 %、山地 2.05 % になります。
イタリア各州における平野・丘陵・山地の比率は Zone altimetriche d'Italia - Wikipedia で確認できます。
フリウーリ・ヴェネツィア・ジューリア州の説明で P.262 に ぶどうの樹は主に丘陵地帯で栽培されているが、平地でも少量ながら造られている。
と書かれていますが出鱈目だと思います。
フリウーリ・ヴェネツィア・ジューリア州の2010年のデータでは平野にあるぶどう畑が 79.15 % を占め、丘陵にあるぶどう畑は 20.82 % でしかありません。1998年版教本の発行から十数年でここまで劇的に栽培比率が変わるとは思えませんし……。
概略のぶどう栽培面積・ぶどう生産量・ワイン生産量のデータが更新され、DOCG, DOC も幾つか追加されています。
p364 の「ワインの産地と特徴」に州別ワイン生産量上位5州(1998年)とVQPRD上位5呼称生産量(1997年)が追加されています。
概略のデータが更新されています。
DOCG と DOC の一覧表に発行日が加わっているのですが、日付が官報の公示日ではないので教本的には出鱈目ということになると思います。
概略のデータが更新されています。
概略のデータが更新されています。
「歴史・気候・風土・土壌」の歴史に使われていた ワインの生産は僅かに6,0000年の歴史
という記述が ワインの生産は僅かに4,0000年の歴史
に変わっていますが、ワインの生産がエジプトから始まったことは変わらないようです。
p.198 に州別ワイン生産量上位5州とVQPRD上位5呼称生産量が載っていますが、まだ2000年版教本と同じデータが使われています。
概略のデータと、州別ワイン生産量上位5州(2004年)とVQPRD上位5呼称生産量(1999年)のデータが更新されています。
概略のデータと、州別ワイン生産量上位5州(2005年)とVQPRD上位5呼称生産量(2003年)のデータが更新されています。
ワイン法に関する記述が増え、新しい項目も加わっています。
1998年版から載っていた「単純原産地呼称」という存在しない呼称が2007年版教本でやっと削除されました。(9年間も出鱈目を載せていたことになります。)
ヴィーノ・ノヴェッロ(Vino Novello)の説明で p.300 に 醸造期間は醸造開始後10日以内でなければならない。
と書かれていますが出鱈目です。参考ページ : DECRETO 13 luglio 1999
2007年版教本とほぼ同じ
概略のデータと数字で見るイタリアワイン(ワイン生産量上位10州とワイン生産量上位10位VQPRD)のデータが2005年のものに更新されています。
現在のワイン法の説明で p.240 にガス添加をしないヴィーノ・スプマンテが5タイプあるように書かれていますが、3タイプに分類するのが普通ですし、EU指定のアローマ付き品種
というものはありません。参考ページ : ワインの種類
VSQ と VSQDOP を分けるのであれば、VS も Vino Spumante a Denominazione di Origine Protetta (VSDOP) と分ける必要があります。
原料ワインがD.O.P.ワインの場合
は VSQDOP や VSQTADOP になるように書かれていますが、DOP として認められた産地で造られるヴィーノ・スプマンテであって、ヴィーノ・スプマンテのベースになるワインはD.O.P.ワインではありません!!
また、ワインに糖と酵母を加えて発泡性を持たせる Vino Spumante や Vino Spumante di Qualità と違って、ぶどう果汁を醗酵させることによって発泡性を持たせる Vino Spumante di Qualità del Tipo Aromatico の場合は「原料ワイン」という表現は相応しくないと思います。
協会では芳香性上質発泡性ワイン(Vino spumante di qualità del tipo aromatico)のことを Aleatico, Brachetto, Gewürztraminer などのアロマティック品種と呼ばれるぶどうだけを使って造られる発泡性ワインだと認識しているようですが、造られるワインが芳香性(tipo aromatico)であるから Vino spumante di qualità del tipo aromatico として分類されているだけで、アロマティック品種以外のぶどうも使われます。協会では品種のリストに載っている Gamay もアロマティック品種だと思っているのでしょうか?
英語表記の Quality aromatic sparkling wine だと、アロマティックな発泡性ワインということが分かりやすいと思いますが……。
p.242 に「イタリアワインのピラミッド」という図があるのですが日本語訳が出鱈目で階層の上下関係もおかしなものになっています。この図は2018年版教本でも使われていますが、この図を削除しないソムリエ協会はどうかしていると思います。
図は以下のような階層になっているのですが、Vigna はぶどう園ではなく、個々の「ぶどう畑」をあらわすのに使われる用語ですし、Microzona は Vigna と同等か、より小さな区画をあらわすのに使われると思います。
Fattoria は醸造所ではなく「農場」です。
Frazione は小村や部落に該当し、Wikipedia には分離集落として載っています。市町村の1地区と言えるのかも知れませんが……。
Sottozona は地域というより「地区」と訳すほうが妥当だと思うのですが……。
D.O.P. | Vigna ぶどう園名 |
Fattoria 醸造所名 | |
Microzona 区画名 | |
Frazione 地区名 | |
Comune 市町村名 | |
Sottozona 地域名 | |
D.O.P. ワイン | |
I.G.P. | Indicazione Geografica Protetta(I.G.P.) |
Vino | Vino |
p.244 に「イタリアワインの3つの魅力」という項目が加わっていますが無茶苦茶なことが書かれています。
他のワイン生産国のワインと違うイタリアワインの魅力には次の3つがある。
- 使われているぶどうの品種が土着・国際両品種合わせて約440品種あり、それによって白・ ロゼ・赤、辛口・薄甘口・中甘口・甘口・極甘口、非発泡性・微発泡性・弱発泡性・発泡性など、あらゆるタイプのワインを生産しているので、世界のワイン愛好家の全ての好みを満足させることが出来る。
- イタリアワインは3000年の歴史の中で育まれて来たワインなので、昔からあるワインはそれぞれがロマンスを持っている。秋の夜長のひと時、古代ローマの歴史を紐解きながら、かつての英雄たちの物語に思いを馳せて当時の生き残りのワインを楽しむのはイタリアワインならではの楽しみである。
- ワインの生産力に余裕があるので、一部のワインに人気が出て、その結果としての投機によって品質と不釣合いに価格が高騰することが無く、常にワインの品質と価格のバランスが取れているので安心して購入することが出来る。
ソムリエ教本の執筆者に「イタリアワインがあれば世界のワイン愛好家の全ての好みを満足させることが出来る。」と思っている人がいることには驚きますが、一個人の考えではなく、ソムリエ協会の総意であることには呆れてしまいます。
イタリアのワイン造りの歴史は長いとしても、昔からあるワインなんてものは存在しません。同じ土地で何百年、何千年とワインが造られ続けていることはあるでしょうが、何百年、何千年前に造られていたワインと現在造られているワインは全く別のものです。
ワインの生産力に余裕があるというのは人気の無いワインが大量にあるということでしかなく、人気の出たワインを急に増産することはできないので、一部のワインの価格高騰は避けることができないと思います。
p.244-248 の「ワイン用主要ぶどう品種一覧表」に各ぶどう品種の産地などの説明がありますが、間違いやおかしな説明が結構あります。
ギリシャ起源のぶどうと書かれていますが、VIVC ではイタリア原産のぶどう品種とされています。
北部の一部の州を除く残りの全州と書かれていますが、2010年のデータでは北部のリグーリア州の栽培面積が 4.65 ha と最も小さいものの、南部のバジリカータ州は 11.9 ha で全州の 0.06 % を占めるだけですし、カンパーニア州も 16.71 ha で全州の 0.08 % と産地というには無理があると思います。
全州で増加中と書かれていますが、シャルドネが認可品種でないリグーリア州での増加があるのでしょうか?
ギリシャ原産のぶどうと書かれていますが、VIVC ではイタリア原産のぶどう品種とされています。
かつてTocai Friulanoと言った。と書かれていますが、現在でも TOCAI FRIULANO がイタリアでの正式名称です。
北部のロンバルディーア、ヴェネト、フリウーリ - ヴェネツィア・ジューリア州と書かれていますが、2010年のデータではヴェネトとフリウーリ - ヴェネツィア・ジューリア州で栽培面積の 93.20 % を占めているので、栽培面積 43.25ha 1.49 % のロンバルディーア州を加えなくてもいいと思います。加えるなら中部のマルケ州 107.11 ha のほうが……。
ギリシャ起源と言われている。と書かれていますが、VIVC ではイタリア原産のぶどう品種とされています。
北部のロンバルディーア、ヴェネト、フリウーリ - ヴェネツィア・ジューリア州と書かれていますが、2010年のデータではヴェネト州が栽培面積の 94.67 % を占め、ロンバルディーア州は 31.95 ha 0.28 % 、フリウーリ - ヴェネツィア・ジューリア州に至っては 0.52 ha しかありません。
ギリシャ原産のぶどうと書かれていますが、VIVC ではイタリア原産のぶどう品種とされています。
北部のエミーリア・ロマーニャ、中部のトスカーナ、マルケ、ウンブリア州と書かれていますが出鱈目です。2010年のデータではマルケ州の栽培面積は 7.93 ha で全州の 0.53 % でしかありませんし、エミーリア・ロマーニャ州は僅か 0.47 ha です。ちなみに、ウンブリア州が栽培面積の 90 % 以上を占めています。
ギリシャ原産のぶどうと書かれていますが、VIVC ではイタリア原産のぶどう品種とされています。
北部、中部、南部の数多くの州と書かれていますが、ラツィオ、カンパーニア、エミーリア・ロマーニャ、プーリアの4州で栽培面積の 87.5 % を占めています。
同系統・異系統に Malvasia del Lazio など8品種がある。と書かれていますが、Malvasia Bianca di Candia と異系統の品種は何と言う品種なのでしょうか?異系統の品種は数多くあると思いますが、Malvasia Bianca di Candia との関連性は?
北部、中部、南部の数多くの州と書かれていますが、北部のピエモンテ、ロンバルディーア、ヴェネトの3州で栽培面積の 90.5 %を占めています。
スイスでリースリングとシルヴァーナーの交雑で生まれた。と書かれていますが、交配はスイスではなくドイツで行われたのでは?参考ページ : MUELLER THURGAU WEISS
北部の一部の州を除く残りの全州と書かれていますが、南部のバジリカータ、カラブリア、サルデーニャの3州の栽培面積はそれぞれ 10 ha もありません。
スペイン系のぶどうと書かれていますが、VIVC ではイタリア原産のぶどう品種とされています。
ギリシャ起源のぶどうと書かれていますが、VIVC ではイタリア原産のぶどう品種とされています。
北部の一部の州を除く全州と書かれていますが、中部のアブルッツオでの栽培面積は 1.87 ha と全州の 0.01 % でしかありません。また、他にも産地というには栽培面積が小さすぎる中部や南部の州が幾つかあります。
ロンバルディーアではCroatinaと言う。D.O.P. Colline Novaresi の中の単一品種ワインになる。と書かれていますが、Bonarda と Croatina は異なる品種です。Croatina のシノニムに Bonarda はありますが……。
北部のリグーリア州、中部のトスカーナ、ウンブリア、ラツィオ州と書かれていますが、リグーリア州での栽培面積は 4.2 ha 全州の 0.39 % でしかありません。
北部のロンバルディーア、ヴェネト州と書かれていますが、99.67 % がヴェネト州で栽培されているので 0.12 % のロンバルディーア州を産地として載せる必要はないと思います。
北部のピエモンテ、ロンバルディーア州などと、南部のサルデーニャ州と書かれていますが出鱈目です。2010年のデータでは 97.7 % のドルチェットがピエモンテ州で栽培されていて、ロンバルディーア州とサルデーニャ州は 0.1 % にも届きません。
古代ローマ時代からのギリシャ原産のぶどうと書かれていますが、VIVC ではイタリア原産のぶどう品種とされています。
古代ローマ時代からあるギリシャ原産のぶどうと書かれていますが、VIVC ではイタリア原産のぶどう品種とされています。
中部のラツィオ州、南部の諸州と書かれていますが、96.17 % が南部のプーリア州で栽培されていて、ラツィオ州での栽培面積は 0.07 % にしかなりません。産地として書くのは「プーリア州」だけでいいと思います。
北部のヴェネト、フリウーリ - ヴェネツィア・ジューリア州、南部のプーリア、サルデーニャ州と書かれていますが、プーリア州とサルデーニャ州を産地と呼ぶには無理があります。
「ワイン用語とその解説」 p.248 でヴァリエタ・アウトリッザータ(Varietà Autorizzata)の説明に 使用しても良い二次的な許可品種
と書かれていますが、「二次的な」というのは間違いです。州によっては推奨品種(Varietà Raccomandata)と許可品種(Varietà Autorizzata)を分けていますが、「推奨品種」という分類をしていない州もあります。
p.249 のバリック(Barrique)の説明で 225ℓの木樽
と書かれていますが、単に Barrique というだけでは容量は限定されません。参考ページ : Barrique - Wikipedia
「ワインの産地とワインの特徴」の説明で「平野型」や「山麓型」のワインという訳の分からない表現が使われていますが、「平野型」や「山麓型」のワインはイタリア以外では造られないのでしょうか?ここまで無茶苦茶な記述が許されるのも日本ソムリエ協会らしいと言えるのですがあまりにも酷いとしか……。
山麓地帯のワインらしく赤ワインが約90%と大半を占めていて
山麓地帯のワインらしく、赤ワインが全ワインの約70%をしめて
大陸性気候のせいもあってワインの生産力も多く、山麓型・平野型の赤ワイン50%、丘陵型・平野型の白ワイン50%ワインと半々である。
辛口赤ワインのD.O.C.ヴァルテッリーナValtellinaは山麓地帯のワインらしいジビエの肉や成牛の焼肉に向く
この地方は山岳地帯なのでワインの比率では赤ワインが60%で、中でも山麓地帯型の力強い赤ワインが主流になっている。
この州のワインは典型的な平野型
ワインの55%は赤ワインで家畜の肉料理向きの平野型のワインである。
アルコール度が高い山麓型の赤ワインが主流で平野型を含めて全ワインの78%が赤ワインである。
現在では赤ワインのD.O.C.G.トルジャーノ・ロッソ・リゼルヴァ Torgiano Rosso Riserva、D.O.C.G.モンテファルコ・サグランティーノ Montefalco Sagrantino のような山麓型の力強いワインが少量ながら造られるようになって
ワインは全て軽めの平野型のワイン
トレッビアーノ・ダブルッツオはトレッビアーノ・トスカーノ種を主体に造られることが多く、魚貝類向きのスタンダードな平野型の白ワインである。
全体の60%が赤ワイン、残りの40%が白ワインと、平野型のワインらしくバランスが良い。
この州では珍しいジビエの肉向きの山麓型ワインである。
赤ワインは一般に平野型の軽めのものが少しあるが
中程度の重さの平野型のワイン
参考ページ : 山麓(さんろく)とは - コトバンク
ヴァッレ・ダオスタ州の説明で p.250 に ワインの生産量は全州中では最も少ないが、22品種のぶどうで多彩な個性のあるワインを造っている。山麓地帯のワインらしく赤ワインが約90%と大半を占めていて、白ワインは10%に過ぎない。
と書かれていますが、ヴァッレ・ダオスタ州で栽培されているぶどう品種は「22品種」より多くあります。「22」という数に何か意味があるのでしょうか?また、山麓地帯だと赤ワインが多く造られるのでしょうか?
Tavola C26B : Produzione di vino e mosto per tipologia (ettolitri). Dettaglio per Provincia - Anno 2010 - のデータでは白ワインが3割以上を占めていますが……。
リグーリア州の説明で p.253 に アルコール度が17%以上で、ぶどうを半乾燥させて造る薄甘口・甘口ワインのチンクエ・テッレ・シャッケトラCinque Terre Sciacchetràの原料はボスコ種とヴェルメンティーノ種
と書かれていますが、乾燥させたぶどうの糖度が潜在アルコール度数で 17 % 以上ということで、ワインに求められるアルコール度数は 13.5 % 以上になります。
「D.O.P.一覧表」に各 DOP で造られる赤・ロゼ・白ワイン用のぶどう品種が載っています。
2011年版教本までワイン生産国の説明はフランス、ドイツ、イタリアの順でしたが、2012年版教本からフランス、イタリア、ドイツに変わっています。
幾つかの州の説明にワイン産地の地図が加わり、この年の認定試験問題にトスカーナ州のワイン産地 DOCG Brunello di Montalcino, DOC Bolgheri の位置を問うものが出ています。ちなみに、トスカーナ州の地図に載っているキアンティの生産区域は実際より広く描かれているようです。参考ページ : Territorio « Chianti
2012年版教本では各州の説明として「主要ぶどう品種」が載っていますが、2010年の統計資料を見ると栽培面積が少なく主要ぶどう品種というには無理があるものが幾つかあります。参考ページに各州の主要なぶどう品種が載っています。
I numeri del vino の元データは http://dati-censimentoagricoltura.istat.it にあります。
各州にある DOCG の説明が加わって、p.231 の Ruché di Castagnole Monferrato〈ルケ・ディ・カスタニョーレ・モンフェッラート〉の説明では ミディアムタイプの辛口タイプが多いが甘口のパッシートも造られる。
と書かれていますが DOCG Ruché di Castagnole Monferrato にパッシートはありません。
p.237 の Amarone della Valpolicella〈アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ〉のタイプとして赤パッシートと書かれていますが、DOCG Amarone della Valpolicella はパッシートではありません。
Conegliano Valdobbiadene - Prosecco〈コネリアーノ・ヴァルドッビアーデネ゠プロセッコ〉のタイプがスプマンテとフリッツァンテ白のみで、イタリアを代表する発泡性ワイン
と書かれていますがスティルワインもあります。
各州の説明で使われている「ワイン生産量」は Istat のデータと同じものもありますが……。
ぶどう栽培面積、ワイン生産量 : Superficie (ettari) e produzione (quintali): uva da tavola, uva da vino, vino. Dettaglio per regione - Anno 2010
DOP, IGP 別ワイン生産量 : Produzione di vino per marchio di qualità (ettolitri). Dettaglio per regione - Anno 2010
色別ワイン生産量 : Produzione di vino e mosto per tipologia (ettolitri). Dettaglio per regione - Anno 2010
p.243 に紀元前8世紀からイタリア南部のシチリア、カラブリア、プーリアなどを植民地化したギリシャ人は、今日でも栽培されている多くのぶどう品種(グレーコ、グレカニコ、アリアニコなど)を持ち込むと同時に、優れた栽培法、醸造技術を持ち込んだ。
と書かれていますが、グレーコ、グレカニコ、アリアニコはイタリア原産の品種になるようなので上記の記述は出鱈目ということになってしまいます。アリアニコがイタリア原産の品種ということは2006年に出版された『The Oxford Companion to Wine : third edition』でも触れているので広く知られていることだと思うのですが……。
p.281 のキアンティ・クラシッコの説明に フィレンツェとシエナの間に位置する8コムーネで造られる。
と書かれていますが9コムーネの間違いです。
「D.O.P.一覧表」の日付が「2011年11月30日」から「2012年10月5日」に変わっているので内容が更新されているのかと思いましたが、新たに加わった DOP は表に追加されていません。
ピエモンテ、ヴェネト、トスカーナに加え、幾つかの州のワイン産地の地図が追加されています。
ピエモンテ州の主要ぶどう品種のひとつコルテーゼの説明で p.221 に ピエモンテ全体で栽培されている白ぶどう
と書かれていますが、コルテーゼの栽培面積の 99.95 % をアレッサンドリア、アスティ、クーネオの3県が占め、中でもアレッサンドリア県は 80 % 弱を占めているので、ピエモンテ全体という表現はおかしいと思います。
p.222 のバルベーラの説明に イタリア語ではぶどう品種は男性形であるが、唯一バルベーラは女性形で「ラ・バルベーラ」と呼ばれ愛されている。
と書かれていますが本当なのでしょうか?it.wikipedia.org に載っているぶどう品種の幾つかは冠詞に La が使われています。(Glera, Falanghina, Coda di Volpe, Croatina)
リグーリア州の説明で p.228 に この州の魅力は100種類以上とも言われる土着品種である。
と書かれていますが、リグーリア州で認可品種となっているぶどう品種は30品種ほどしかなく、2010年のデータでは栽培面積が 0.01 ha 以上あるぶどう品種は100品種ほど、その中にはメルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、シャルドネも含まれています。
p.232 のロンバルディア州の地図で7番のヴァルカレピオ(Valcalepio)と10番のモスカート・ディ・スカンツォ(Moscato di Scanzo)の生産区域が同じだと誤解されるような描き方がされています。また、地図では3番のガルダ(Garda)と4番のルガーナ(Lugana)の生産区域が完全に分かれて描かれていますが、ガルダとルガーナの生産区域は重なっている思います。
ロンバルディア州の DOCG Oltrepò Pavese metodo classico の説明で 特にピノ・ネーロを使ったものが素晴らしい
と書かれていますが、DOCG Oltrepò Pavese metodo classico の主要ぶどう品種はピノ・ネーロなので、ピノ・ネーロが使われるのは当然です。
ヴェネト州の主要ぶどう品種としてトレッビアーノ・ディ・ソアーヴェが載っていますが、2010年の栽培面積が 335 ha しかないトレッビアーノ・ディ・ソアーヴェをグレーラ(17,742 ha)やガルガネカ(10,690 ha)と共に主要品種と呼ぶのは無理があると思います。栽培面積は少なくても、ヴェネト州だけで栽培されているとか、特定の DOP の主要品種であれば、ヴェネト州の「主要ぶどう品種」として載せるのもありだと思いますが……。
p.239 のヴェネト州の地図には何故か DOC Garda と DOC Lugana が載っていません。4番のコッリ・ディ・コネリアーノと9番のコネリアーノ・ヴァルドッビアデネ・プロセッコの生産区域が完全に分かれて描かれていますが、生産区域は重なっているのではないのでしょうか?
また、コネリアーノ・ヴァルドッビアデネ・プロセッコの生産区域と8番のモンテッロ・ロッソの生産区域も完全に分かれて描かれていますが生産区域は重なっていると思います。
エミリア・ロマーニャ州の主なワインの説明で p.247 に コッリ・ピアチェンティーニで造られるD.O.C. Gutturnio はバルベーラとボナルダのブレンドで
と書かれていますが、DOC Gutturnio のぶどう品種は Barbera と Croatina になります。p.279 の表では「Barbera, Croatina」になっているのですが……。
ロマーニャの平野部では、D.O.C. Romagna Trebbiano が大量に造られていて
と書かれていますが、DOC Romagna Trebbiano という DOC はなく、DOC Romagna の品種名表示ワインとして「Trebbiano」が付くことがあります。ちなみに、DOC Romagna Sangiovese という DOC もありません!
エミリア・ロマーニャ州の地図も訂正されず DOC Romagna Trebbiano と DOC Romagna Sangiovese が載ったままです。
p.252 のキアンティの説明に 生産量が多く(約80万ヘクトリットルで D.O.C.、D.O.C.G. ではモンテプルチャーノ・ダブルッツォ、プロセッコに次いで第3位
と書かれていますが、p.216 の「数字で見るイタリアワイン」での順位は4位になっています。2013年版教本の「数字で見るイタリアワイン」ではモンテプルチャーノ・ダブルッツォ、プロセッコ、キアンティの順だったので、p.216 のデータは差し替えたものの、本文は古い教本からのコピペで済ましたのでしょう。
また、キアンティの生産区域からプラート県が抜けています。プラート県は1992年にフィレンツェ県から分かれたということですから、教本では古い資料をそのまま使っているのだと思います。
p.254 のカルミニャーノの説明に 収穫年から2年目の1月1日より消費が可能
と書かれていますが、6月1日の間違いです。
エルバ・アレアティコ・パッシートの説明に amabileとdolceがある
と書かれていますが、造られるのはドルチェだけです。
モンテクッコ・サンジョヴェーゼの説明で riservaはアルコール12.5%以上で24カ月の熟成を要する。
と書かれていますが、リゼルヴァのアルコール度数は 13.5 % 以上で、熟成期間は30ヶ月以上(木樽で24ヶ月以上)になります。
p.255 のヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノの説明で リゼルヴァriservaは収穫翌年1月1日より1年の熟成が必要
と書かれていますが、1年ではなく11ヶ月です。
ヴィーノ・ノビレ・ディ・モンテプルチャーノのアルコール度数について リゼルヴァriservaは13.5%以上
と書かれていますが、13.0 % 以上です。
ウンブリア州の DOCG Montefalco Sagrantino の説明で p.257 に サグランティーノ種はペルージャでのみ栽培され
と書かれていますが、サグランティーノはトスカーナ州でも栽培されています。ちなみに、サグランティーノはハンガリーやオーストラリア、アメリカのカリフォルニア州などでも栽培されているようです。
ラツィオ州のフラスカーティの説明に カンネッリーノというのは昔甘口ワインを造るために栽培していたぶどう品種のことで、その名が残って甘口ワインに使われるようになった。甘口を造るためにかつては原料ぶどうを陰干しして貴腐ぶどうにして糖度を高めてから搾汁していたが、現在はすべての醸造所が濃縮果汁のモスト・コンチェントラートを添加している。
と書かれていますが、ぶどうを陰干しするだけでは貴腐ぶどうにはならないと思います。また、甘口ワインの DOCG Cannellino di Frascati の規定ではモスト・コンチェントラートを添加することはできないと思います。
p.262 アブルッツォ州の主要ぶどう品種に「トレッビアーノ・ダブルッツォ」の名がありますが、現在では「トレッビアーノ・ダブルッツォ」が品種名として使われることはほとんどありません。DOC の仕様書や統計資料ではイタリアでの公式名称の Trebbiano Abruzzese が使われ、OIVのリストにも TREBBIANO ABRUZZESE で登録されています。
アブルッツオ州の主なワインの説明として 近年 D.O.C.ワインに認定されたテラーモ県の白・赤の他にシャルドネなど9タイプの単一品種ワインを持つ D.O.C. Controguerra がある。
と書かれていますが、DOC Controguerra の規定で単一品種ワインとして認められているのは4品種(Merlot, Passerina, Chardonnay, Pecorino)だけしかないと思います。
プーリア州の主なワインとして p.266 で紹介されている DOC Rosso Canosa は DOC Castel del Monte に併合されたので、DOC としては存在していません。
プリミティーヴォ・ディ・マンドゥリアの説明で ブリンディジ県で黒ぶどうのプリミティーヴォ種で造る辛口赤ワインのD.O.C.Primitivo di Manduriaが古代からの銘酒として知られている。
と書かれていますが、プリミティーヴォがブリンディジ県に持ち込まれたのは19世紀と Primitivo (vitigno) - Wikipedia には書かれていて辻褄が合いません。Primitivo がブリンディジ(Brindisi)県で古代から栽培されていたという記録はどこにあるのでしょうか?
カラブリア州の説明で p.268 に この州のワインの代表は南のカタンツァーロ県で造られる白・赤・ロゼワインの D.O.C.Cirò で
と書かれていますが、DOC Cirò のぶどう栽培区域はクロトーネ県の北部になると思います。
サルデーニャ州の主なワインの説明で p.271 に この州のその他の白ワインにはモニカ、ヌラグス、また、赤ワインにはカンノナウ、カリニャーノ、ジロなどのこの州独特の土着品種が使われている。
と書かれていますが、カンノナウ(Cannonau)は主にサルデーニャ州で栽培されているもののこの州独特の土着品種ではないと思います。ちなみに、Cannonau が許可品種になっているのはサルデーニャ州のみですが、Cannonau は他の州では Alicante や Tocai Rosso として知られています。
それから、モニカは黒ぶどう品種なので、白ワインに使われることは稀だと思います。
「イタリアワインのD.O.P.一覧表(2012年10月5日)」には、規定の変更箇所が修正されていないものや間違いが幾つかあります。
「2012年10月5日」と書かれていれば、多くの人は2012年10月5日に更新された最新情報だと勘違いすると思いますが、2012年10月5日に意味はないようです。
「州別 I.G.P.(I.G.T.)一覧表(2012年10月5日)」でシチリアの IGT のひとつに Sicilia とありますが、Sicilia という産地名は2011年から DOC Sicilia として使われていて、IGT Terre Siciliane が IGT Sicilia に変わるものになると思います。
DOP と IPG の仕様書(PDFファイル)が Provvedimenti generali relativi ai Disciplinari consolidati dei vini DOP e IGP italiani からダウンロードできます。
「イタリアワインのD.O.P.一覧表」の間違いの多くが訂正されています。
p.190 に主なぶどう品種の栽培面積が載っていて、2010年データ 出典istat
と書かれていますが、I numeri del vino で纏められているものをパクっているのでは?ちなみに、元データは http://dati-censimentoagricoltura.istat.it にあります。
教本には DOCG, DOC, IGP の認定年が載っているのですが間違いだらけです。参考ページ : 『日本ソムリエ協会教本2016年版』に載っているイタリアの DOCG の認定年、『日本ソムリエ協会教本2016年版』に載っているイタリアの DOC の認定年、「州別 I.G.P. 一覧表」の認定日が間違っていたので協会に報告しました。
DOCG, DOC の認定年が訂正されて「官報の公示日」になっていますが、ピエモンテ州の DOCG Gattinara(DPR 20.10.1990, G.U. 59 - 11.03.1991) は訂正されていません。
IGP に関しては認定日から認定年に変更することで訂正を簡略化しています。
日本ソムリエ協会では2014年教本からイタリア文化の紹介として住民の人柄を取り上げているのですがリグーリアの方からの抗議はないのでしょうか?
- ヴァッレ・ダオスタ州 : やや閉鎖的なところあるが、控えめで勤勉な人が多い
- ピエモンテ州 : 派手なことが嫌いで、非常に控えめ
- リグーリア州 : イタリアで最も吝嗇
- トレンティーノ - アルト・アディジェ州 : アルト・アディジェの非常に伝統を重視し、勤勉である | トレンティーノの住民も、勤勉で、控えめな人が多い
- フリウリ - ヴェネツィア・ジューリア州 : フリウリ人は寡黙で、頑固な人が多い
- トスカーナ州 : 非常に強烈な皮肉精神を持っている
- アブルッツオ州 : やや閉鎖的だが、素朴
- モリーゼ州 : 家族、伝統を大切にする保守的な人たちが多い
- カンパーニア州 : 表向きは非常に陽気な人たちであるが、奥に深いペシミズムを抱えていて、いかにも南部の人らしい運命論者で、迷信深い
- プーリア州 : 非常にのんびりしていて、自分たちの伝統的を守ろうとする人が多い
- バジリカータ州 : 寡黙で、疑い深く、なかなかよそ物を受け入れてくれないが、一度友人になると、非常に義理堅く、深い情を持った人たちである
- カラブリア州 : やや閉鎖的な印象を与えるが、素朴で親切な住民も多い
- シチリア州 : 猜疑心が強く、外部から来たものに強い警戒心を抱くが、一度友人になると、こちらが戸惑うぐらい親切な人たち
- サルデーニャ州 : シチリアとは対照的に、サルデーニャ人は閉鎖的
2018年版教本では各州の「ワイン生産量」として Superficie (ettari) e produzione (quintali): uva da tavola, uva da vino, vino. Dettaglio per regione - Anno 2016 と Produzione di vino e mosto per tipologia e per marchio di qualità (ettolitri). . Dettaglio per regione - Anno 2016 のデータが使われていますが、ブドウ栽培面積として載っているのは「ぶどうが収穫されたワイン用ぶどう畑の面積」で、赤ワインの比率は「赤ワイン+ロゼワイン」の比率になります。
ヴァッレ・ダオスタ州の主要ぶどう品種プリエ・ブラン(Prié Blanc)の説明で ヴァッレ・ダオスタのラ・サル村とモルジェ村の狭い範囲でだけ栽培されている白ブドウ品種
と書かれていますが、栽培面積は小さいものの他の州でも栽培されているようです。2010年のデータでは主にヴァッレ・ダオスタ州(28.95 ha)のラ・サル村(4.99 ha)とモルジェ村(23.62 ha)で栽培されていますが、他の州で 4.35 ha の栽培面積があります。(最近の栽培面積は分かりませんが「ラ・サル村とモルジェ村だけ」ということはないと思います。)
フミン(Fumin)の説明では ヴァッレ・ダオスタの固有黒ブドウ
と書かれていますが出鱈目です。
リグーリア州の主要ぶどう品種ヴェルメンティーノ(Vermentino)の説明で ファヴォリータは同属
と書かれ、ピガート(Pigato)の説明では リグーリア州の白ブドウでヴェルメンティーノの一種と考えられている。
と書かれていますが、イタリアの品種リストに登録されている Vermentino, Favorita, Pigato は同じ品種です。何故、「同属」などと訳の分からない説明をいれるのでしょうか?
ボスコ(Bosco)は リグーリア州の固有白ブドウ
ではありません。
アルバローラ(Albarola)の説明で ビアンケッタ・ジェノヴェーゼと同属
と書かれていますが、Bianchetta Genovese と Albarola は同じ品種です。
トレンティーノ - アルト・アディジェ州の主要ぶどう品種マルツェミーノ(Marzemino)の説明で 主にトレンティーノ地方南部で栽培されている固有の黒ブドウ
と書かれていますが、ロンバルディア州の DOC Cellatica で造られる赤ワインには Marzemino が 30 % 以上使われます。他にもロンバルディア州の DOC の幾つかで Marzemino が使われていることは教本の「イタリアワインのD.O.P.一覧表」に載っているので分かると思いますが……。
エミリア・ロマーニャ州の主要ぶどう品種ランブルスコの説明で ランブルスコ・ディ・ソルバーラ、ランブルスコ・グラスパロッサ、ランブルスコ・サラミーノ、ランブルスコ・マエストリ、ランブルスコ・マラーニなど多くの下品種がある。
と書かれていますが、「下品種」という用語は日本ソムリエ協会以外でも使われているのでしょうか?Lambrusco Grasparossa や Lambrusco Salamino の総称としてランブルスコ(Lambrusco)が使われることはありますが……。
また、ランブルスコのことが エミリア地方とロンバルディア州の一部で栽培されている黒ブドウ
と書かれていますが出鱈目で、ランブルスコ・マエストリ(Lambrusco Maestri)は主にプーリア州で栽培されています。
ウンブリア州の主要ぶどう品種プロカニコ(Procanico)の説明で トレッビアーノのビオタイプの一種で
と書かれていますが、ビオタイプとはどういった意味の用語なのでしょうか?biotype?Procanico は Trebbiano Toscano のシノニムのひとつなのですが……。
教本では隠花性のぶどう、山麓型、下品種といった意味不明の用語が時々使われています。ググっても意味が分からない「ソムリエ協会独自の用語」には解説を付けてもらえれば嬉しいのですが……。
各州の「ワイン生産量」で使われているデータは Superficie e produzione と Produzione di vino e mosto per tipologia e per marchio di qualità に載っている2017年のものですが、赤・白ワインの比率や DOP ワインの比率には間違っているものがあります。
山麓地帯のワインらしく赤ワインが約65%で、白ワインは35%と書かれていますが、2017年のデータでは白ワインの比率は 30.77 % になります。
赤ワイン49%、白ワイン51%とほぼ半々と書かれていますが、白ワインの比率は 48.46 % になります。
白ワインが72%と書かれていますが、白ワインの比率は 67.83 % になります。
生産量のうちD.O.P.ワインは56%で、白ワインが約76%と書かれていますが、DOP ワインの比率は 73.04 % で、白ワインの比率は 78.32 % になります。
生産量の64%をD.O.P.ワインが占める高品質ワインの産地である。赤ワインの生産量が89%と際立って多いと書かれていますが、DOP ワインの比率は 65.47 % で、赤ワイン(+ロゼワイン)の比率は 85.38 % になります。(白ワインの比率は 14.62 %)
白ワインが全体の72%を占め、残りの28%が赤ワインと書かれていますが、白ワインが全体の 73.23 % を占め、残りの 26.77 %が赤ワイン(+ロゼワイン)になります。
赤ワインの生産量が68%である。と書かれていますが、赤ワイン(+ロゼワイン)の比率は 58.48 % になります。(白ワインの比率は 41.52 %)
ワイン生産量の63%が赤ワインと書かれていますが、赤ワイン(+ロゼワイン)の比率は 69.77 % になります。ロゼワインが 6.77 % を占めているのでしょうか?
赤ワインが全ワインの56%を占めている。と書かれていますが、赤ワイン(+ロゼワイン)の比率は 52.80 % になります。
白ワインが58%、赤ワインが42%である。と書かれていますが、白ワインの比率は 56.94 % で、赤ワイン(+ロゼワイン)の比率は 43.06 % になります。
全ての県でワインが造られているが、生産量はシチリア州の7分の1に過ぎない。と書かれていますが、2017年のデータでは生産量はシチリア州の10分の1(9.87 %)に過ぎません。
p.491 のヴァッレ・ダオスタ州の地図に Arnaz というコムーネが載っているのですが、現在は Arnad と呼ばれているようです。ギリシャの地図もですが、教本にはコピペしたままでチェックされていない地図がまだあると思います。
ピエモンテ州のワイン産地 DOCG Barolo〈バローロ〉の説明で p.497 に 法定熟成期間は収穫年の翌年1月1日より3年間(うち木樽熟成2年)で、riservaは同5年
と書かれていますが、規定では熟成期間の開始基準日は11月1日で熟成期間は38ヶ月になっています。(日数的には収穫翌年の1月1日より3年間と同じになりますが……)また、木樽の最低熟成期間は2年間ではなく18ヶ月になります。
DOCG Gattinara〈ガッティナーラ〉の説明で アルコール12.5%以上で法定熟成期間は3年間(うち木樽熟成1年)で、リゼルヴァriservaは13%以上で4年(うち木樽熟成2年)
と書かれていますが、熟成期間は基準日の11月1日から35ヶ月(うち木樽熟成24ヶ月)、リゼルヴァは47ヶ月(うち木樽熟成24ヶ月)になります。
DOCG Ghemme〈ゲンメ〉の説明で アルコール12%以上で法定熟成期間は3年間(うち木樽熟成20カ月、瓶内熟成9カ月)、リゼルヴァriservaは12.5%以上で4年(うち木樽熟成25カ月、瓶内熟成9カ月)が義務付けられている。
と書かれていますが、熟成期間は基準日の11月1日から34ヶ月(うち木樽熟成18ヶ月)、リゼルヴァは46ヶ月(うち木樽熟成24ヶ月)になります。瓶内熟成は6ヶ月以上。
DOCG Ruché di Castagnole Monferrato〈ルケ・ディ・カスタニョーレ・モンフェッラート〉の説明で スペリオーレあり
と書かれていますが「スペリオーレ」はないと思います。
ロンバルディア州のワイン産地 DOCG Valtellina Superiore〈ヴァルテッリーナ・スペリオーレ〉の説明で p.503 に riservaは最低30カ月の熟成が必要
と書かれていますが、熟成期間は基準日の12月1日から3年間以上になります。
ヴェネト州のワイン産地 DOCG Colli di Conegliano〈コッリ・ディ・コネリアーノ〉の説明で p.510 に 赤のパッシートRefrontoloレフロントロは生産量も少なく個性的な食後のワインである。
と書かれていますが、パッシートではない Refrontolo も造られます。教本の書き方ではレフロントロがパッシートであるように読めてしまいます。
DOCG Montello rosso〈モンテッロ・ロッソ〉のスペリオーレの説明で アルコール12.5%以上
と書かれていますが、スペリオーレに求められるアルコール度数は 13.0 % になります。
DOCG Recioto della Valpolicella〈レチョート・デッラ・ヴァルポリチェッラ〉のタイプで「スプマンテ」が抜けています。「D.O.P.一覧表」には載っているのですが……。
フリウリ-ヴェネツィア・ジューリア州のワイン産地 DOCG Colli Orientali del Friuli Picolit〈コッリ・オリエンターリ・デル・フリウリ・ピコリット〉の説明で 総体アルコール16%以上(既得は13%)でriservaは4年の法定熟成期間を要する。
と書かれていますが、総体アルコールは 15.0 % 以上で、既得アルコールに関する規定は無いようです。また、リゼルヴァ(Riserva)の表示ができるのは地理的表示 Cialla を伴う場合です。
ちなみに、地理的表示 Cialla を伴う場合は総体アルコール 16.0 %以上で、4年以上の熟成でリゼルヴァ(Riserva)の表示ができます。
DOCG Rosazzo〈ロザッツォ〉の説明で 約50haの総面積に10軒程度のワイナリーが1200hℓのワインを生産している。
と書かれていますが、50 ha や 1,200 hl という数値は Rosazzo が DOC Colli Orientali del Friuli の1地区だった時のもので、V.Q.P.R.D. D’ITALIA のデータを見ると栽培面積も生産量も半分以下になっているようです。
p.521 のキアンティ・クラシッコの説明に フィレンツェとシエナの間に位置する9コムーネで造られる。
と書かれていますが、Barberino Val d'Elsa と Tavarnelle Val di Pesa が合併して Barberino Tavarnelle というコムーネになるので、2019年1月1日からは8コムーネになるようです。参考ページ : Territorio - Chianti Classico - Il primo territorio di vino - Sito ufficiale
ウンブリア州のワイン産地 DOCG Montefalco Sagrantino〈モンテファルコ・サグランティーノ〉の説明で p.524 に 最低熟成期間は30カ月(うち12カ月の木樽熟成)を要する。パッシートPassitoのタイプも認められ、味わいは薄甘口Abboccato最低アルコール度数14.5%で最低熟成期間は30カ月
と書かれていますが、熟成期間は基準日の12月1日から33ヶ月で12ヶ月の木樽熟成と4ヶ月の瓶内熟成を要します。また、パッシートは甘口のみが認められ、最低アルコール度数の規定はありません。
アブルッツオ州のワイン産地 DOCG Montepulciano d'Abruzzo Colline Teramane〈モンテプルチャーノ・ダブルッツォ・コッリーネ・テラマーネ〉の説明で p.532 に 最低アルコール度数12.5%で最低熟成期間は24カ月(うち木樽熟成12カ月、瓶内熟成6カ月)を要する。riservaは36カ月以上の熟成が必要。
と書かれていますが、熟成期間は基準日の11月1日から1年間で、2ヶ月の瓶内熟成を要します。また、リゼルヴァ(Riserva)の熟成期間は36ヶ月で1年間の木樽熟成と2ヶ月の瓶内熟成を要します。
バジリカータ州のワイン産地 DOCG Aglianico del Vulture Superiore〈アリアーニコ・デル・ヴルトゥレ・スペリオーレ〉の説明で p.541 に 法定熟成期間2年(内1年は木樽熟成)。riservaは4年熟成(2年木樽、2年瓶内)を要する。
と書かれていますが、熟成期間の規定は木樽で12ヶ月と瓶内で12ヶ月になります。リゼルヴァは木樽で24ヶ月と瓶内で12ヶ月
サルデーニャ州のワイン産地 DOCG Vermentino di Gallura〈ヴェルメンティーノ・ディ・ガッルーラ〉の説明で p.549 に 最低アルコール度数12%(スペリオーレは13%)
と書かれていますが、12.0 % というのは総体アルコールのことなので、アマービレ(Amabile)の場合は 12.0 % 未満になることもあると思います。
また、ワインのタイプが「白」だけになっていますが、vendemmia tardiva, frizzante, spumante, passito もあります。
posted 2019-03-06, update 2021-12-15
posted by katabami