ワインエキスパートに教わるワイン入門
赤ワインと白ワインを混ぜてロゼワインを造る
EU域外では赤ワインと白ワインを混ぜてロゼワインを造ることは認められていますか。
EU法では、完成した白ワインと赤ワインをブレンドして「スティル・ロゼワイン」を造ることは、委任規則 2019/934 第8条などにより原則として認められていません(スパークリングワインや一部のセミスパークリングワイン用のキュヴェなどは例外です)。一方、EU域外の生産国では、国レベルで同様の全面禁止を定めている例はほとんどなく、赤白完成酒のブレンド自体は一般に認められています。ただし各国とも GI(地理的表示)や地域・品種表示を行う場合には、個々の規格や審査基準が優先します。
米国(TTB 管轄)
- 連邦法(27 CFR Part 4)はブレンド比率や製法を定めず、クラス表示「Rosé」あるいは「Blush」を付せば完成酒同士のブレンドが許容されます。
- ワイナリー向け実務解説でも「赤ワインと白ワインを混ぜてピンクにする方法は確かに認められている」と明言されています。
オーストラリア
ニュージーランド
- Wine Act 2003 も製法を限定しておらず、教材(NZ Wine Textbook)では「スパークリング・ロゼは白ワインに少量の赤ワインをブレンドすることができる」と説明しています(静止ロゼでは稀)。new-zealand-wine-textbook
南アフリカ
註 : 「赤ワイン熟成に使用された木樽で熟成された白ワインが、視覚的にロゼ様になった場合、そのようにラベルに表示せよ」という制度的対応
南米・英国ほか
- チリ、アルゼンチン、英国など主要生産国でも国レベルの禁止はなく、EUでは禁じられている赤白ブレンド製法のロゼを、英国で造って販売するフランス人醸造家の事例が報告されています。
- ただし原産地呼称(DOC/DOP など)を取得する場合は、当該規格が醸造方法を限定していることがあります。
なぜEUでは、赤ワインと白ワインを混ぜてロゼワインを造ることが禁止されているのですか。
EUにおいて「赤ワインと白ワインを混ぜてロゼワインを造ること」が原則として禁止されている理由は、以下の通り制度的・品質的・伝統的な観点によるものです。
制度的理由:EU法の明確な制限
- EU基本規則の位置づけ
- EUのワイン共通市場秩序(CMO 規則)〖Regulation (EU) No 1308/2013〗に基づき、委任規則〖Commission Delegated Regulation (EU) 2019/934〗第7条・第8条などで、ロゼワインやクーパージュに関する一般原則が定められています。ポイントだけ整理すると:
- ロゼワインは、カテゴリー上は「wine」の一種として、赤ワインと白ワインの中間的な色調をもつワインと位置づけられており、実務上は黒ブドウ(場合によっては少量の白ブドウを含む)を直接圧搾するか、短時間のマセラシオンによって造ることが前提とされています。
- 委任規則 2019/934 第8条第1項は、非PDO・非PGIの白ワインと赤ワインのクーパージュによってロゼワインを得ることを禁止しており、多くの PDO/PGI の製品仕様書でも同様に、完成した赤白ワインをブレンドしてロゼを造る方法を認めていません。
- 例外規定
- ただし、スパークリングワイン(特にシャンパーニュなど)においては、赤ワインと白ワインのブレンドによるロゼが認められています。この例外は【Regulation (EU) No 606/2009】のAnnex I, Part A に明記されています。
品質と透明性の確保
- 「ロゼらしさ」の確保
- 赤白ブレンドでは、通常のロゼと異なる味わいや色調になりやすく、EUはこれを「本来のロゼとは異なる製法」として排除しています。
- 例えば、赤ワイン由来のタンニンと白ワイン由来の酸味がうまく調和しないことも多く、安定性や品質上の課題を生みやすいという実務的な側面があります。
- 消費者誤認の防止
- 「赤+白=ロゼ」という単純な図式により、消費者が本物のロゼワインの製法を誤解するおそれがあるため、透明性と表示の正確性の観点からも制限されています。
伝統と文化の尊重
- 地域伝統の保護
- EUのワイン政策は、PDO(原産地呼称)・PGI(地理的表示)といった制度を通じて伝統的な製法の保護と価値の向上を目指しています。
- 多くのPDOではロゼワインに対し、「黒ブドウ主体で直接圧搾または短期間のマセラシオンで造る」という地域に根ざした伝統製法を規定しており、それを保護するためにブレンド製法が排除されています。
国際的な影響と例外的状況
- 新世界の影響と市場の混乱回避
- 一部の新世界諸国では赤白混合によるロゼ製造が行われており、EUがこれを広く認めてしまうと、EU内の伝統ロゼとの混同や価格競争の激化を招くおそれがあります。これを避けるため、あえて厳格に制限しています。
EUでも規制を緩和しようとする流れがあったと思いますが
ご指摘のとおり、EUでは一時的に「赤ワインと白ワインのブレンドによるロゼワイン製造」を認めようとする動きがありました。以下、その経緯と背景、反発、結果について整理します。
規制緩和の動き(2009年)
- 欧州委員会の提案内容
- 2009年、欧州委員会(DG AGRI)は、静置ロゼワインに対しても
「赤ワインと白ワインのブレンドによる製造(クーパージュ)」を認めるという規則改正案を提出しました。
- この提案は、同年6月に発効予定の実施規則(当時のRegulation (EC) No 606/2009)の一部として計画されており、条文案ではロゼに関して以下が含まれていました:
- 「ワインの着色調整のため、白ワインと赤ワインの混合を認める」
- 「スティルワイン(非発泡)であっても、ブレンドロゼが可能となる」
主な目的と背景
- 新世界ワイン生産国(例:南アフリカ、オーストラリア)との競争を踏まえた、製造の柔軟化
- ロゼワインの市場拡大(特に価格帯の低いデイリーワイン市場)
- 加工自由度の向上により、余剰白ワインの有効活用(当時のワイン在庫過多対策)
激しい反発と撤回
- 反対の中心
- フランスのロゼ生産者団体(特にプロヴァンスAOP連盟)が強く反対
- スペイン、イタリアなどの伝統的ロゼ産地も同調
- 主張の要点
- 「ブレンドロゼは“偽物”であり、伝統製法の価値を損なう」
- 「EU原産地呼称制度の信頼性が揺らぐ」
- 消費者の混乱と、ラベル表示上の透明性の喪失
- 結果:欧州委員会が案を撤回(2009年6月)
- 公式発表では、当初の実施規則案から「ロゼに関するブレンド許可条項」が削除され、従来通り静置ロゼにおける赤白ブレンドは禁止されたままとなりました。
- なお、スパークリングワインにおけるブレンドロゼ(例:ロゼ・シャンパーニュなど)は引き続き合法です。
ワインのブレンドを表す用語「クーパージュ」と「アッサンブラージュ」の違いを、わかりやすく説明してください。クーパージュはできあがったワインのブレンドという感じでとらえていますが
「クーパージュ=できあがったワイン同士のブレンド」という捉え方は、実務的にも法制度的にも一定の妥当性があります。ただし、そこには歴史的・制度的なニュアンスの違いがあるため、以下のように整理できます。
クーパージュ(coupage):できあがったワインの混合
- 基本的な意味
- フランス語の「coupage」は、「couper(切る)」に由来する語で、本来の性質や風味を断ち切るように、別のワインを加えて調整・変化させる行為を指します。すでに発酵を終えたワイン同士を混ぜ合わせて、新たなスタイルを構成する操作として用いられます。
- 混合対象は、異なる品種・産地・ヴィンテージ・色調のワインである場合もあります。
- 実務的な使われ方
- 補正目的が強く、たとえば:
- 色が薄いワインに色調の強いワインを加える
- 酸度が足りないワインに酸の強いワインを加える
- 味わいの不均衡を整える
- つまり、完成ワインを用いた調整的・技術的ブレンドという側面が強いです。
- 法的・制度的な含意(EU文脈)
- EU委任規則〖2019/934〗第7条・第8条では、「coupage(クーパージュ)」を、産地・カテゴリー・色などの条件が異なるワインやマストを混合する行為として定義したうえで、非PDO・非PGIの白ワインと赤ワインをクーパージュしてロゼワインを得ることを禁止しています。
- PDO/PGIワインについては、個々の製品仕様書や委任規則〖2019/33〗などにより、原則として「異なるPDO間のワインを混ぜること」は認められず、クーパージュの可否や条件も詳細に制限されています。
アッサンブラージュ(assemblage):設計的な構成
- 基本的な意味
- 「組み立てる」「構成する」の意味を持ち、ワインの設計段階におけるブレンド行為。
- 原則として、同一ドメーヌ内、同一AOP内、同一収穫年または明示された条件下で行う。
- 実務的な使われ方
- 高品質ワイン(例:ボルドー、シャンパーニュ)では不可欠な工程。
- 醸造責任者が、複数の原酒(区画別、品種別、樽別など)をテイスティングしながら理想のワインを「構築」する行為。
クーパージュは「完成したワイン同士を混ぜる技術的行為」であり、アッサンブラージュは「ワイン設計の一環としての芸術的ブレンド」。
このように整理すると、使い分けが明確になります。
スパークリングワインにおいて、白ワインに赤ワインを加えてベースワインを造ることが認められるようになった経緯を教えてください。
スパークリングワインにおいて、白ワインに赤ワインを加えてベースワインを造ることが認められるようになった経緯には、以下のような歴史的・制度的背景があります。
歴史的背景:シャンパーニュにおける伝統的慣行
フランス・シャンパーニュ地方では、19世紀以降、ロゼ・スパークリングの製造において以下の2つの手法が伝統的に用いられてきました。
| 手法 |
概要 |
| セニエ法(Saignée) |
黒ブドウを短時間マセラシオンして色素を抽出し、その後搾汁する方法。 |
| アッサンブラージュ(Assemblage) |
白ワインに赤ワインをブレンドすることで、ロゼのベースワインを造る方法。 |
特にアッサンブラージュは、色調と味わいの調整が容易で安定性も高く、シャンパーニュのロゼ製造で広く実践されてきた伝統的技術です。
EU法における明文化と制度化(2009年)
こうした実態は、2009年のEU実施規則〖Regulation (EC) No 606/2009〗および現在の委任規則〖Regulation (EU) 2019/934〗の中で、スパークリングワイン向けの許容醸造操作として明確に整理されています。
- 委任規則 2019/934 第8条第1項ただし書きなどでは、次のような点が示されています:
- 通常は禁止されている白ワインと赤ワインのクーパージュであっても、その最終製品がスパークリングワイン用のキュヴェ(cuvée)やセミスパークリングワインの製造に供される場合には例外として認められる。
つまり、ロゼ・シャンパーニュを含むEU産スパークリングワインについて、アッサンブラージュによるロゼ製造がEUレベルの規則の中で明示的に容認されている、という整理になります。
制度化の背景と目的
- 実務上の必要性
- セニエ法では毎年の色調と品質の安定性に限界がある。
- ブレンドによるアッサンブラージュは色や味の調整が精密に行えるため、品質の一貫性が確保しやすい。
- 国際競争力の維持
- シャンパーニュをはじめとするEU産スパークリングワインが国際市場で高い競争力を維持するうえで、伝統的なブレンド技術の保護が重要視された。
- 表示の透明性確保
- アッサンブラージュによるロゼ製造が合法であることを明示することで、消費者への透明性を高めた。
Crémant de Bordeaux や Crémant de Bourgogne では、白ワインと赤ワインのアッサンブラージュが認められていますが、他のクレマンでは認められていないのはなぜですか。
特に理由はなく、各AOC生産者団体の意向と考えてもいいですか。
結論
「特に理由はなく各AOC生産者団体(ODG)の意向だけで決まる」と考えるのは正確ではありません。仕様書改正はODGの提案が出発点ですが、必ず技術的・経済的根拠を添え、INAOの審査・全国意見募集(PNO)・国家告示という多段階プロセスを経て承認されています。
改正の公式手順
- ODGが改正案を起草
- 変更理由をまとめた「ノート・ド・モチヴァシオン(動機説明書)」を添付。
- INAO委員会が技術・経済面を審査
- 伝統との整合性、製品特性の一貫性、市場影響などを評価。
- 2か月の全国意見募集(PNO)
- 最終承認・国家告示
実際に挙げられる主な改正理由
- 歴史・伝統の尊重:既存スタイルとの整合を確認しています。
- 品質と一貫性の確保:色調・味わいを安定させるためブレンド技術を導入するケースがあります。
- 市場戦略:産地アイデンティティ(例:ピノ・ノワール単一ロゼ)を強調したい場合は逆に制限を維持しています。
まとめ
- ODGの意向は出発点ですが、「理由なし」で通ることはなく、動機・技術的根拠を示してINAO審査をクリアする必要があります。
- そのため、各クレマンAOCでブレンド可否が異なるのは、地域ごとの伝統・市場ニーズ・ブドウ供給状況を踏まえた結果といえます。
セニエは、赤ワインの製造工程では果汁に色が移る前に早めに抜き取る方法だと思いますが、同じ「セニエ」という用語でも、ロゼワインの場合は果汁に色が移るのを待ってから抜くのですか?
はい、ご理解のとおりです。「セニエ(saignée)」という言葉は共通していますが、赤ワインとロゼワインでは目的もタイミングも異なります。以下に、両者の違いを明確に整理します。
赤ワイン醸造における「セニエ」
- 目的:
- 果皮・果肉・種との比率(固液比)を高めるために、マセラシオン初期に果汁を一部抜き取る。
- タイミング:
- 色やタンニンがほとんど移っていない段階で早めに抜く(12時間以内が一般的)。
- 抜いた果汁の扱い:
- 副産物としてロゼに使われることもあるが、品質を目的としていないことが多い。
ロゼワイン製造における「セニエ」
- 目的:
- ロゼワインとして仕上げることそのものが目的。
→ 果皮から適度な色素やフェノールを抽出して、赤と白の中間的な色・味わいを得る。
- タイミング:
- 短時間マセラシオン(6〜24時間程度)を経て、狙った色合いになった時点で果汁を抜き取る。
→ 抜き取った果汁は、そのまま白ワイン同様に低温で発酵。
- 特徴:
- セニエ・ロゼは、色がやや濃く、タンニンもわずかに感じられることが多い。
- 果皮接触時間があるため、アロマや構造もやや赤ワイン寄りになる。
用語は同じでも、文脈で意味が異なる
| 用語 |
文脈 |
目的 |
抜くタイミング |
| セニエ(赤ワイン) |
赤ワイン主醸の補助操作 |
固液比を高めるための果汁調整 |
色がつく前に早めに抜く(無着色) |
| セニエ(ロゼワイン) |
ロゼ主醸 |
ロゼの色調・構造を得るため |
着色が目的なので、色が出てから抜く |
補足
- INAOの規定や技術書でも、「ロゼ用のセニエ」は「macération pelliculaire(果皮マセラシオン)」と一体の操作とされることがあります。
- 特にクレマンのロゼなどで「セニエ方式(rosé de saignée)」と明記されている場合、それは「着色した果汁を抜いてロゼに仕立てる製法」と理解すべきです。
色やタンニンがほとんど移っていない段階で早めに抜く(12時間以内が一般的)のであれば、すぐ抜いたほうがよくありませんか。
とても良いご指摘です。この点については、目的によって「すぐ抜く方が良い場合」と「ある程度時間を置く方が良い場合」に分かれます。以下に詳しく整理します。
赤ワイン醸造におけるセニエの目的:固液比の調整
- 目的の本質
- 赤ワインの主仕込みのタンクから一部の果汁を抜くことで、果皮や種との比率(固形分比率)を高め、抽出を強めるのが狙いです。
- 果汁を「すぐ抜く」方が理想的な理由
- 色素(アントシアニン)やタンニンは果皮・種に存在します。
- 果汁にこれらが移る前に抜き取らないと、抜かれた果汁と残された果皮に成分の偏りが出にくい。
- そのため、果汁が果皮から成分を抽出する前に、抜いてしまった方が「純粋な濃縮効果」になる。
- ではなぜ12時間程度置くのか?
- 実際には収穫・除梗・破砕・初期冷却などの準備に時間がかかり、タンク投入から即抜き取りが技術的に難しいことが多いため、自然と「数時間〜12時間以内」という表現になります。
- また、少量でも色素が抽出された果汁を抜くことで、抜かれた果汁側も副次的にロゼ商品として使える品質になるため、両者にとって実用的なバランスを取っている面もあります。
フランスでは、ロゼワインの製法として Saignée、Macération pelliculaire、Égouttage、Pressurage direct などが挙げられますが、このうち Égouttage とはどのような製法ですか?
フランス語のワイン醸造用語における 「Égouttage」 は、状況によって意味が変わる言葉ですが、ロゼワイン製造において「独立した製法」として使われる場合には、以下のように理解されます。
語義と一般的な意味
- Égouttage(エグタージュ)とは、
- 「液体を自然に排出させること(=液切り、自然流出)」
を意味し、ぶどうの破砕後やマセラシオン中に、圧搾せずに果汁だけをタンクから抜き出す操作を指します。
ロゼワイン製法としての「Égouttage」
- 製法の位置づけ:
- 黒ブドウを除梗・破砕して短時間(数時間〜12時間程度)放置したあと、発酵槽または浸漬槽の下から自重で流れ出た果汁だけを回収し、それを発酵させてロゼに仕上げる方法です。
- 圧搾は行わず、あくまで「自然に流出する果汁(jus d’égouttage)」のみ使用します。
破砕によって流れ出る果汁だけでなく、醸造タンクに入った果汁も含まれるのですか。
はい、ご質問のとおり、ロゼワイン製法における「égouttage(エグタージュ)」では、破砕時に流れ出た果汁だけでなく、除梗・破砕されたブドウが醸造タンク(または浸漬槽)に入れられた後に自然に流れ出す果汁も含まれます。
以下に詳しく説明します。
Égouttage に含まれる果汁の範囲
| 果汁の種類 |
Égouttage に含まれるか |
説明 |
| 破砕後に即座に流れ出た自由果汁 |
含まれる |
果粒破砕後に即時に流れる果汁。圧を加えず自重で出る。 |
| 果皮とともにタンクに入れた後、短時間静置して流出する果汁 |
含まれる |
浸漬中(短時間)に果皮から染まった果汁がタンク底部から自然流出する。 |
| 圧搾機で圧力を加えて得られる果汁 |
含まれない |
Égouttage では明確に除外される。 |
操作の流れ(典型例)
- 除梗・破砕(黒ブドウ)
- 醸造タンクまたは短時間の浸漬槽に投入
- 果汁は果皮や種と接触した状態で静置(6〜12時間など)
- タンクの底から自然に流れ出てくる果汁(重力排出)を抜き取る
- これが jus d'égouttage(エグタージュ果汁)
- この果汁のみでロゼワインを仕込み、果皮や種は他用途へ回すか、別に圧搾
補足:セニエとの実務上の違いは連続的
- 実際の醸造現場では、「どの時点で」「どの濃さの果汁を」抜くかの基準は流動的であり、
- Égouttage と saignée の違いは「操作の意図」と「抜き取る果汁のタイミング・性質」によって区別されます。
| 製法名 |
意図 |
操作の強さ |
果汁の出どころ |
| Égouttage |
自然に流出した果汁だけで造る |
無圧・自然流出 |
自重排出果汁 |
| Saignée |
着色させてから抜く |
人為的な抜き取り(バルブ操作等) |
マセラシオン中の果汁 |
結論
Égouttage は「破砕時に流れる果汁」だけでなく、短時間マセラシオン後にタンクの底部から自然に流出してくる果汁(無圧)を含みます。
このため、セニエのように「色が出るまで待ってから人為的に抜く」のではなく、より受動的・穏やかな抽出に基づく製法といえます。
「タンクの底から自然に流れ出てくる果汁(重力排出)を抜き取る」のであれば、タンクの底の排出バルブを開けた状態でぶどうをタンクに投入するのですか?
「この果汁のみでロゼワインを仕込み、果皮や種は他用途へ回すか、別に圧搾」といいますが、圧搾しなければ果皮や種だけでなく、ほとんどの果肉は残っているのではないでしょうか?
破砕時に流れ出る果汁だけがエグタージュ果汁で、醸造タンクに入ってしまえばSaignée、Macération pelliculaireとしての製造になるのではないでしょうか?
以下、ロジックを整理しながら、あなたの疑問に順にお答えします。
「タンクの底から自然に流れ出てくる果汁」を抜き取るには、タンクのバルブを開けておくのか?
通常は、ぶどう投入後に短時間置いてからバルブを開けます。
理由は以下のとおりです:
- 破砕直後は果皮や果肉も一緒に流動しており、いきなり開けるとタンク下部に固形物が詰まりやすい。
- 多くのセラーでは、除梗破砕した果粒(=マスト)をタンクに入れた後、しばらく自然に果汁が落ち着いて底部にたまるのを待ち、上澄みや果皮層と分離された段階でバルブから果汁を抜くという操作を取ります。
つまり、「タンク投入=即抜き」ではなく、「静置して自然分離→バルブ開放→無圧果汁を採取」という流れが基本です。
圧搾しなければ、果皮や種だけでなく果肉もほとんど残っているのでは?
- おっしゃるとおりです。ブドウ果実の重量のうち、
- 果汁として自然流出するのは20〜35%程度
- 多くは果肉細胞内に留まっています。
したがって、Égouttage 果汁だけでロゼを仕込む場合、残渣(marc)は圧搾することでかなりの果汁が追加的に得られることになります。
- このため、多くの現場では果汁の質と色調によって流れを分ける運用が行われています。
- Égouttageで流出した果汁だけを高品質ロゼに使用(色淡く繊細)
- 圧搾果汁は別タンクへ(より構造的なロゼ、または赤ワイン、または蒸留用などに転用)
「破砕時に流れ出る果汁だけがÉgouttage果汁で、タンクに入ればSaignéeやMacération pelliculaireなのでは?」
この見解には一定の正当性があります。ただし、現場や文献での「Égouttage」の使い方はもう少し幅があります。
厳密に分類する立場(あなたの見解)
| 用語 |
操作 |
| Égouttage(狭義) |
破砕時に出るフリーラン果汁のみを採取 |
| Saignée |
タンクでマセラシオン→着色後に果汁を抜く |
| Macération pelliculaire |
果皮接触を主目的とする全体浸漬 |
この分類では、マストがタンクに入って果汁が果皮と接触した時点で「macération」と見なすことになるため、エグタージュという言葉を使うのは不正確になります。
- 実務上の運用(広義のÉgouttage)
- 一方で現場や技術文書では、「短時間静置して色がほとんど出ないうちに自然に流出する果汁」も含めて「jus d’égouttage」と呼ぶことがよくあります。
- Égouttage naturel avant pressurage(圧搾前の自然流出果汁)
- Rosé de goutte(滴り落ちるロゼ)
そのため、「Égouttage=果皮抽出の始まる前の流出果汁のみ」と定義するか、「弱いマセラシオンを伴うが、圧をかけずに流出した果汁」とするかは、狭義/広義の使い分け次第です。
結論
- 実務的には、「Égouttage」はマストをタンクに投入した後の自然流出果汁まで含むことが多いですが、
- 厳密に言えば、それはすでに「macération pelliculaire(果皮接触)」が始まっており、「Saignée」との境界も曖昧になるため、
- 「どのタイミングで、どの程度色が出るまで置くか」によって、用語が使い分けられるべきです。
したがって、ご指摘の「タンク投入後の果汁はもはやÉgouttageではないのでは?」という問いは、定義を狭くとる場合、きわめて妥当です。
Macération pelliculaire は Égouttage や Saignée の後に残ったマストを圧搾したものですか?
初めから Macération pelliculaire として造られるロゼワインもありますか。
はい、Macération pelliculaire(果皮浸漬)は、Égouttage や Saignée の後に残ったマストを圧搾する工程として行われる場合もありますが、初めから Macération pelliculaire を目的として仕込まれるロゼワインも確実に存在します。以下に分類と構造を明確に整理します。
Macération pelliculaire とは
- 直訳すれば「果皮との浸漬」
- 発酵前に、破砕した果粒(または除梗果粒)を短時間(数時間〜24時間ほど)果皮とともに浸漬し、色素・香気・一部の構造成分を果汁に移す操作
- 圧搾前に行われ、果皮との接触時間を調整してロゼらしい淡色とアロマを得る
Macération pelliculaire の適用パターン
| 適用状況 |
説明 |
| 最初からロゼを目的に仕込むケース |
ロゼワインを造るために黒ブドウを破砕→短時間マセラシオン→圧搾→発酵。この場合、Macération pelliculaire は最初から主目的として設定される製法 |
| SaignéeやÉgouttageで果汁を抜いた後 |
残った果皮付きマストを短時間静置して色や香りを軽く抽出し、圧搾してロゼや赤ワインの原料とする。 |
つまり、Macération pelliculaire は「副産物処理」としても使われますが、それ自体を主目的にしたロゼ醸造法としても重要です。
実際の製法との関係
| 製法名 |
操作順序の主眼 |
Macération pelliculaire を含むか |
| Pressurage direct |
破砕後すぐ圧搾、果皮接触ほぼなし |
通常含まない |
| Macération pelliculaire |
意図的に果皮接触を設ける(6〜24時間程度) |
含む(これ自体が主たる操作) |
| Saignée |
色づいてから果汁を抜き取る |
マセラシオンを行ったうえで抜くので実質含まれる |
| Égouttage |
短時間自然流出のみでロゼを造る |
接触時間が短い場合、軽く含む場合もあるが限定的 |
初めから Macération pelliculaire を目的とする例
まとめ
- Macération pelliculaire は、Égouttage や Saignée 後の残りマストへの操作として行われる場合もあるが、それだけに限らない
- ロゼワインを最初から造る目的で設計された製法として Macération pelliculaire を採用する醸造家も多い
- 特に色調・香気・構造を緻密に調整したい生産者にとって、Macération pelliculaire は有効な主導的手法である
- posted : 2025-07-22, update : 2025-11-25
- Author : katabami (Editor) / ChatGPT (Writing Assistant)
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