「Klosterneuburger Mostwaage 度(KMW度)」:1 Klosterneuburger Mostwaage 度(1° KMW)とは、20% ショ糖水溶液の質量含有量の 1/17 に相当するものである。
この定義は、KMWが経験的に調整された糖度目盛であることを示しており、比重によって読み取られる果汁の糖分を、20%ショ糖水溶液との比較をもとに規定しています。
以下に、「なぜオーストリア・ワイン法で1°KMWが“20%ショ糖水溶液の1/17”と定義されたのか」について、制度的・技術的・歴史的背景を踏まえて正確にご説明します。
ぶどう果汁の密度(比重)は、主に糖分によって増加しますが、それ以外にも:
…といった糖以外の水溶性成分(非糖分, Zuckerfreier Extrakt)も含まれます。
したがって、比重や屈折率から単純に「糖分=密度」と読み取ってしまうと、糖以外の成分によって糖分が多めに見積もられてしまうという問題があります。
20%の純粋なショ糖水溶液は:
この比重と実際のぶどう果汁で同じ密度を示す果汁を測定すると、長年の観測によりその成分構成が次のようになることが分かりました:
| 成分 | 概算含量(w/w) |
|---|---|
| 糖分 | 約 17% |
| 非糖分(酸など) | 約 3% |
| 合計 | 約 20% |
つまり、「20%のショ糖水と同じ比重を示すぶどう果汁」は、実際には糖分17%しか含んでいないのです。
この観測結果をもとに、果汁の糖分含有量(g/100g)をより正確に表す目盛として、以下のように定義されました:
20%ショ糖溶液の質量含有量を17等分したときの1単位を 1°KMW とみなすことができ、この構造から理論的には次のような係数が得られます。
数学的には:
20% ÷ 17 = 約 1.176(質量パーセント)
このように、定義式からは 1°KMW に対して約 1.176% という理論値が導かれますが、HBLA/BA Klosterneuburg など公的な解説では、1°KMW はおよそ 10 g 糖/kg(≒ 1% w/w)を示す実務上の目安として扱われています。
「1°KMWが20%ショ糖水の1/17に相当する」と定義されているのは、ぶどう果汁の密度から非糖分の影響を差し引き、実質的な糖分のみを読み取る補正式目盛として設計されているからです。
したがって、KMWは比重の絶対値ではなく、「糖に相当する重さ」に換算された制度的スケールであり、その1°が「1:17の20%溶液に相当」するのは、あくまで糖分補正値としての経験的定数なのです。
はい、その通りです。20%ショ糖水と同じ比重の位置に「17」の目盛りを刻み、果汁では糖分17%に相当すると読み替える設計です。
ご要望のとおり、Babo(正しくは August‑Wilhelm Freiherr von Babo) による KMW(Klosterneuburger Mostwaage) の設計思想と起源について、信頼のおける文献に基づき整理してご説明します。
「Klosterneuburger Mostwaage は、ぶどう果汁の糖度(g/100 g)を質量パーセントで示す沈降浮子式目盛であり、1°KMW は20%ショ糖水溶液の質量含有量の1/17に相当する」
Babo は、19世紀中頃に Balling のサッカロメーターを基盤として、ブドウ果汁中の非糖分の影響を補正し、実質的な糖分を制度的に読み取れる目盛(KMW) を設計・導入しました。その定義は、20%ショ糖水の質量糖分の1/17に相当する目盛を1°KMWとするという構造的設計によるものです。
非常に本質的なご質問です。
この問いには、比重計の利用目的と、KMW(Klosterneuburger Mostwaage)のような補正式スケールの設計意図を区別して考える必要があります。
はい、おっしゃる通りです。
一般的に、比重計は「収穫の適期を見極める」ために使われるため、果汁の比重=全溶解物(糖分+酸+ミネラルなど)の総量を把握できれば十分であり、糖分だけを特定する必要は本来ありません。
Babo は、果汁の比重と糖分の関係を観察する中で、非糖分成分の影響を補正すれば糖分量を直接読み取れると気づきました。KMW は、その観察結果を基に設計された目盛であり、「糖分だけを測ろうとした」という制度的方針が文献から明示されているわけではありません。むしろ、非糖分成分の影響をあらかじめ差し引くことで糖分を直接読み取れることが分かり、それを実務的に利用するために導入された補正式スケールであったと解釈されています。
はい、あります。代表的には次のとおりです。
このうち、Babo 本人が“17:3”に気づいたことを明示する一次的説明としては、HBLA/BA Klosterneuburgの公式記事が最も直接的です。
実際、果汁の比重(密度)さえ分かれば、そこから糖分濃度を計算し、理論的なアルコール度数を見積もることは可能です。これは、Oechsle度、Brix、Bauméなど、どのスケールでも変わりません。
KMWの特徴は、まさにご指摘いただいたように、その「計算(補正)」を目盛り設計の中にあらかじめ組み込んだ点にあります。
KMWは、「果汁中の糖分だけを直接読みたい」という醸造現場のニーズに応じて、比重と糖度の関係を17:20の係数であらかじめ換算し、目盛りに組み込んだ制度的・実用的スケールと言えます。したがって、技術的には「換算を組み込んだ比重計」であるという理解で正確です。
いいえ、Balling の比重計が最初の比重計というわけではありません。比重という概念や比重計の原理自体は、17世紀以前から存在していました。たとえば:
Carl Joseph Napoleon Balling(1805–1868)は、ショ糖水溶液の濃度と比重の関係を詳細に測定・表にまとめたことで知られています。
彼が開発した「Balling スケール(°Balling)」は、ぶどう果汁や麦汁中の糖濃度を比重から推定するための実用的な目盛として大きく普及しました。
つまり、比重計そのものの発明者ではありませんが、比重計を糖度測定に特化して校正・普及させた功績があるということになります。
はい、そのとおりです。
現在のオーストリアでは、伝統的な浮ひょう式の比重計(Klosterneuburger Mostwaage)に代わり、KMWスケールに対応した屈折計(Refraktometer)が現場で広く使われています。
屈折計は、基本的には Brixスケール(%ショ糖換算)で校正されているものが多いですが、オーストリアでは:
の両方が流通しています。特にワイン法に基づく収穫時の糖度記録が必要な場合、KMWスケールに準拠した測定値が求められるため、KMW目盛を備えた屈折計や換算機能付きのデジタル屈折計が実務上好まれています。
メーカーによっては「KMW(Babo)」「Oechsle」「Brix」「Baumé」など複数の目盛を切り替えられるモデルも販売されています。オーストリアの醸造学校や検査機関では、公式にKMWスケールでの提出を求める場合もあります。
はい、そのとおりです。
収穫時の最低糖度は、オーストリアをはじめ多くのワイン生産国で法的に定められた品質基準(たとえばKMWで○度以上)として扱われており、これを下回るとその等級(例:Qualitätswein、Prädikatswein)として認可されません。
そのため、現場では:
といった理由から、最低基準をやや上回る糖度(1〜2°KMW 以上)で収穫されるのが一般的です。
特に機器によっては、±0.5〜1°KMW 程度の誤差があるため、安全域を確保することは実務上不可欠です。また、等級申請時には公式の分析機関で再測定されるため、現場の測定値がギリギリではリスクがあるからです。