ワインエキスパートに教わるワイン入門
レギュラーボトルはなぜ750mlなのか?
EUでレギュラーボトルの容量が750mlに統一されたのは、なぜですか。
EUにおいて750mlが標準ボトル容量となった背景は、歴史的慣習の統一と市場・貿易の効率化にあります。
歴史的背景
- ヨーロッパでは地域ごとにボトル容量が異なっていました(例:フランスでは720〜800ml台、スペインやイタリアでも地域差あり)。
- ボルドーでは19世紀後半から225Lバリック=約300本(750ml換算)の慣行が強まり、国際貿易の中で750ml相当の容量が「扱いやすい単位」として浸透していきました。
- 1970年代、特にイギリス市場向けワインの取引では、英ガロン(Imperial gallon ≈ 4.546L)との換算から750ml前後(1ガロン=約6本)の規格が便利とされ、国際的に広まります。
EUによる法的統一
- 1975年:EC指令 75/106/EEC
容器入り飲料の容量を一定の標準サイズに統一する目的で制定。ワインの「標準容量」として750mlが採用されました(他に375ml・1,5Lなども規定)。
- 理由は、加盟国間で異なる規格を廃止し、単一市場での取引コストを下げることにありました。容量のバラつきは輸出入、税関、価格表示、ラベル表記に混乱を招くためです。
決定要因の整理
- 経済的要因:ボルドーやブルゴーニュなど主要産地の慣行が国際標準になりやすかった。
- 技術的要因:1ケース12本(9L)単位の流通が可能で、重量・サイズ的にも取り扱いやすい。
- 制度的要因:1975年以降のEC指令で標準化し、各国の国内規格を上書き。
まとめると、750mlは最初からEUの発明ではなく、貿易上の実務慣行として国際的に普及した容量を、1975年のEC指令で法的に統一したという経緯です。
750mlの規格はワインガロンではなく、英ガロンが基になっているのですか。
ワインガロン時代(1707年〜1824年)
- 1707年の英国法(Queen Anne wine gallon)で
1ワインガロン=231 cubic inches=約3.785 L と定義。
- 「wine gallon」という名前の通り、ワイン取引でもこの単位が使われましたが、当時は瓶詰めが標準化されておらず、樽(hogshead, tierceなど)単位での取引が中心でした。
- このワインガロンを5等分すると約757mlになり、計算上は750mlに近い数値が出ます。しかし「ワインガロン÷5ボトル」方式が慣行化した証拠はありません。
英ガロンへの移行(1824年〜)
- 1824年 計量法(Weights and Measures Act)で、酒類・穀物など液体の計量単位を統一するため、英ガロン(Imperial gallon)が制定。
- 定義:10ポンドの水の体積=277.42 cubic inches=約4.546 L。
- この新ガロンは、それまで別々に存在していたワインガロン(3.785L)やエール・ガロン(4.632L)に代わって、英国国内の唯一の公式ガロンとなりました。
- 「wine gallon」という名の単位は消滅し、以後はワインも英ガロン基準で取引されます。
750mlとの直接的つながり
- 英ガロン(4.546 L)を6等分すると約0.7576 L(=757.6 ml)。
- この「1ガロン=6本」の分け方は、重量・体積・輸送効率の点で都合がよく、19世紀後半には英国向け輸出ワインで広く用いられるようになったと考えられます(ただし、すべての取引で一律に採用されていたわけではありません)。
- 後に12本ケース(約2ガロン=9L)も標準化され、この容量が世界的に広まりました。
- 1975年のEC指令で、750mlはEUの標準的なボトル容量のひとつとして明文化されますが、その背景には「1英ガロン(4.546L)≒6本のボトル」という19世紀以降の英国向け貿易慣行があり、これを750ml誕生の有力な起源説として位置づけることができます。
1970年代半ば以前のフランスで流通していた750ml規格のレギュラーボトルは、瓶口まで満たした状態で750ml入り、コルクで封をすると正味容量は約730mlになったといわれます。
これは「英ガロン÷6本」という考え方と矛盾しませんか。
- 「英ガロン÷6本」=757mlの意味
- 英ガロン(Imperial gallon)は4.54609L。これを6等分すると757.68mlになります。
- この数値は、「公称容量」や「満量容量(brimful capacity)」に近い考え方で、実際に飲料として瓶詰めされる「正味容量(net content)」とは必ずしも同じではありません。
- フランスの「750ml規格」と実際の充填量
- 戦前〜1970年代半ばまでのフランスでは、「レギュラーボトル=750ml」というのは瓶形状の公称容量であり、満量(瓶口ギリギリまで)で測った場合に750mlになる設計でした。
- 実際の瓶詰めでは、コルクを打ち込むためにコルク下の空間(ullage)を確保する必要があるため、充填量はやや少なくなります。
- この結果、実際の正味容量は730〜735ml程度になることが多く、「750ml入り」と表示していても計量法的には許容範囲内でした(許容誤差の規定あり)。
- 矛盾しない理由
- 「英ガロン÷6=約757ml」という値は、あくまで規格容量(brimful)に相当します。
- フランスの750mlボトルの実際の充填量(730ml前後)は、規格容量からコルク分の空間を引いた結果であり、これを「英ガロン由来の750ml」としても矛盾はありません。
- 同様の現象は現在のEU規格でも見られ、表示容量(nominal volume)と実際の充填量は区別されます。
英国向けのワインには、73clと表示されたラベルが貼られていたという話がありますが、本当でしょうか。
- 73cl表示の背景
- 73cl(= 730ml)という表示は、実際の正味容量(net content)に近い数値です。
- 戦後〜1960〜70年代にかけて、英国市場向けのフランス産ワインには、実際の正味容量に近い「73cl」表示のボトルが一定数存在したことが確認されています。
- フランス国内では同じ瓶を「75cl」(公称容量)として販売していても、英国向け輸出品では満量容量(750ml)ではなく、充填後の容量(730ml程度)を表示する例がありました。
- なぜ英国は正味容量を表示したのか
- 英国の計量法(Weights and Measures Acts)は、一般に消費者が実際に受け取る量(net content)の明示を重視しており、輸入ワインの検査や表示でもこの考え方が影響したと考えられます。
- ワインの場合、コルク下に空間(ullage)を残すため、満量750mlのボトルでも実際は約730mlしか入りません。
- このため、一部の輸出業者が英国向けラベルに「73cl」と正味容量を記載したのは、当時の英国側の表示慣行・検査実務に合わせた措置とみなせますが、すべての輸出ワインに一律に求められたわけではありません。
- 実例について
- 当時の輸出用ラベルやボトルの現物写真(特に1960〜70年代のボルドーやブルゴーニュの英国市場向け品)で、「73cl」表示の存在が確認されています。
- ただし、全ての輸出品が73cl表示だったわけではなく、英国市場の規制・検査に対応するための特定ロットや銘柄に限られました。
ボルドー樽が225リットルに統一されたのは19世紀半ばですが、750mlボトルはいつ頃から存在していたのでしょうか。
- 前提:225Lバリックと750mlの関係
- ボルドーのバリック(barrique bordelaise)が225Lに公的統一されたのは1866年(フランス法令により規格化)。
- 「225L ÷ 300本 = 0.75L」という数値から、750mlがバリックと直結しているように見えますが、実際にはこの計算が750ml誕生の直接要因ではありません。
- 樽と瓶の単位は別系統で発展しており、750ml規格は、4.546L の英ガロンを6等分した約757mlという換算との整合性が高く、この換算が750mlという数値の定着に一定の影響を与えたと考えられます。
- 750ml相当瓶の登場時期
- 18世紀末〜19世紀前半:瓶はすべて手吹きガラス製で容量に大きなバラつきがあり、同じ形状でも650〜850mlと幅広かった。
- 19世紀半ば以降:瓶型は地域ごとに定型化し、ボルドー型・ブルゴーニュ型などの形状は安定するが、容量はまだ720〜800ml台の範囲で揺れていました。
- 19世紀末〜20世紀初頭:英国市場向け輸出品で英ガロン÷6本 ≈ 757mlを基準とするボトルが増加。
- これは満量(brimful)で750〜760ml程度、正味容量は730ml前後。
- 特にボルドーの大手ネゴシアンやシャンパーニュの輸出向けで定着。
- 1920〜30年代:フランス国内では800mlや720ml台の瓶も併存しており、「750ml統一」には至っていない。
- 戦後(1950〜70年代前半):国際取引で750mlが事実上の標準容量となり、国内向け瓶も次第に統一方向へ。
- 1975年 EC指令 75/106/EEC:ワインを含む容器入り飲料について、750mlを含む一群の「標準的な表示容量」が法制化され、加盟国はこの範囲の容量で出荷することが義務づけられました(静置ワインでは 75cl が事実上の中心値)。
- 年代感のまとめ
- 本格的に750ml相当の輸出瓶が定着:19世紀末〜20世紀初頭(特に英国市場向け)。
- 国内外で750mlが事実上の標準に:戦後〜1970年代前半。
- 法的に750mlに統一:1975年EC指令以降。
「トノー=4バリック=1,200本」という概念は、なぜ広まったのでしょうか。
ワインが樽で流通していた頃、トノーは1,152本相当に該当するとされていたようですが

画像の完全訳(出典:The Wines of Bordeaux, Sixth Edition, Edmund Penning-Rowsell, 1990)
バリック・ボルドレーズ(barrique bordelaise)の容量は厳格に管理されている。
以前は215リットルから230リットルまでの幅があったが、1866年に正式に225リットル(49.5英ガロン、59.4米ガロン)と定められ、4バリックでトノー(tonneau)=900リットルとなった。
容量については、上下2%の誤差が許容されている。
形状、胴回り、鉄のたがの本数なども規定されている。
この容量であれば、1本75センチリットルのボトル300本を詰められるはずだが、実際には1973年ごろまでは288本または24ダースしか詰めないのが慣行であった。
そして、顧客がシャトー元詰のワインを購入した場合、これが1バリックから得られる量だと期待していた。
今日では、顧客は25ダース(=300本)を受け取ることになる。
内容のポイント整理
- 225L規格化とトノー
- 1866年、バリック・ボルドレーズの容量が225Lに統一。
- 4バリック=トノー=900L。
- 容量から計算すると、900L ÷ 0.75L = 1,200本(理論値)。
- 実際の瓶詰め本数
- 著者は「本来は300本取れるはずだが、1973年ごろまでは288本(24ダース)しか詰めなかった」と記載。
- この差は澱引きや瓶詰め工程でのロスによるもので、慣行として定着していた。
- 「1,200本」概念が広まった理由
- 計算式が単純で覚えやすく、説明や契約にも使いやすかった。
- 実務値(1,152本)よりも、理論値(1,200本)のほうが流通上の目安として好まれた。
まとめ
- 理論値:1バリック=300本(750ml換算)、4バリック=1,200本。
- 実務値(〜1973年):1バリック=288本、4バリック=1,152本。
- 「トノー=1,200本」という表現は、実際より多いが計算しやすく、教育・説明・契約上の便宜から広く普及した。
「トノー=4バリック=1,200本」という考え方は、ワインの流通がボトル主体になってから生まれた概念と言えるのでしょうか。
はい、その可能性が高いです。歴史的に見ると、この「1,200本」という数字は樽取引時代の実務値から直接来たものではなく、ボトル換算での理論値が意識されるようになった段階で定着したと考えられます。
理由
- 樽取引時代の換算は本数基準ではなかった
- 19世紀までのワイン流通は樽単位(hogshead, barrique, tonneau)が基本で、容量はリットルやガロンで扱われ、本数換算は重視されていませんでした。
- 実務では、1バリック=288本(正味容量換算)という現実的な数量が使われることが多く、1,200本というきれいな整数は出てきません。
- 1,200本は“理論値”でありボトル流通前提
- 1バリック=225L → 4バリック=900L
- 900L ÷ 0.75L = 1,200本(満量容量ベース)
- この計算は750mlボトルが取引単位として広く使われるようになって初めて意味を持ちます。
- 20世紀中盤以降の定着
- ワインが輸出も含めて瓶詰め流通することが標準化された戦後以降、1トノー=1,200本という表現は分かりやすい「換算用の常識」として広まりました。
- 実務値(1,152本)との差は説明の場面で無視され、教育やマーケティング資料でも理論値が採用されやすかったのです。
結論
「トノー=4バリック=1,200本」は、樽時代の取引習慣から自然発生した数字ではなく、750mlボトルを標準単位とする流通体系が確立した後に広まった理論値と考えるのが妥当です。
トノーは現在の重さの単位「トン」の語源だと聞いたことがありますが、もともとワインの輸出は900〜1,000リットルの大樽で行われており、その後225リットルの樽に移行し、225L×4=900Lのトノーは単位としてだけ残ったのでしょうか。このあたりが複雑で理解できません。
- 語源と単位の関係
- トノー(tonneau)はフランス語で「大樽」を意味します。
- 英語の ton(トン)や tun(古形)は、もともと大きな樽(おおむね900〜1,000L)の容量単位から派生し、それが重量単位に転用されました。
- 重量単位に転用された理由は、ワインやビール、その他液体商品を大樽単位で取引した際、その満載重量がおおよそ一定だったためです。
- ワイン輸出と樽の大きさの変化
- 中世〜近世のワイン輸出では、地域や時代ごとに異なる「大樽」が使われ、容量は900〜1,000L前後が多かった。
- これらが「トノー(tonneau)」と呼ばれ、貿易や課税の基準単位となりました。
- 19世紀になると、ワインの熟成・輸送用として225Lバリック・ボルドレーズがボルドーを中心に普及。
- 輸出単位としても、大樽1本よりも小樽を複数まとめる方式が効率的になり、「4バリック=1トノー(900L)」という換算が定着しました。
- 「単位として残った」経緯
- 容量的には、古い1,000L大樽のトノーから、225L小樽×4=900Lのトノーに置き換わりました。
- 実物の容器としての「大樽トノー」はほぼ姿を消し、「トノー」という言葉は取引や税の計算単位として残った形です。
- このため、「トノー」という語は歴史的には容器の意味から始まり、のちに容量単位、さらには重量単位(トン)へと派生しています。
結論
- もともと「トノー」は900〜1,000L級の大樽を指した。
- 19世紀に225Lバリック4本=900Lを「1トノー」とする新しい換算体系が普及。
- 現物の大樽は姿を消し、「トノー」という語は容量・重量単位としてだけ残った。
- 現在の「トン(ton)」という重量単位は、この「大樽トノー」から派生した語です。
バリック・ボルドレーズの容量は225Lですが、他の地域で使われるバリックの容量も同じなのでしょうか。
バリック・ボルドレーズ(225L)
- ボルドー地方で使われる標準的な小樽で、1866年の法令で225Lに統一されました。
- 形状や寸法、たがの数なども規格化されています。
他地域の「バリック」の容量例
「バリック(barrique)」という語はフランス語で「木樽」を意味し、地域ごとに容量が異なります。
代表的な例は以下の通りです。
| 地域 |
名称 |
容量 |
備考 |
| ボルドー |
Barrique bordelaise |
225 L |
赤ワイン主体。輸出基準樽。 |
| ブルゴーニュ |
Pièce bourguignonne |
228 L |
白ワイン熟成に多用。バリックと呼ばれる場合もあり。 |
| シャンパーニュ |
Fût champenois |
約205 L |
現在はステンレス主体で使用例は減少。 |
| ロワール |
Barrique ligérienne |
約225 L |
ボルドー型とほぼ同容量。 |
| ジュラ |
Pièce jurassienne |
約228 L |
ヴァン・ジョーヌ熟成用。クラヴラン瓶と組み合わせ。 |
| ラングドック |
Barrique languedocienne |
約225 L |
国際輸出規格に合わせた容量が多い。 |
まとめ
- 225Lはあくまでボルドーの規格で、他地域でも「バリック」と呼ぶ場合はあるが、容量は必ずしも同じではありません。
- ブルゴーニュやジュラなどでは228Lが一般的で、コニャックのように300L前後の樽も存在します。
- 国際取引では、容量を統一して扱いやすくするために、ボルドー型225Lが参照される場面が多くなっています。
「Pièce」と「Fût」もバリックと呼ばれるのでしょうか。
用語の基本
- バリック(barrique)はフランス語で「木樽」を指す一般名詞ですが、ワイン業界では特にボルドー型225L樽を意味することが多いです。
- 地域によっては、同様の熟成用小樽に別名がついています。
「Pièce」と「Fût」の違いと関係
- Pièce
- ブルゴーニュやジュラなどで使われる228L前後の小樽を指す名称。
- 例:Pièce bourguignonne(228L)、Pièce jurassienne(約228L)。
- 容量や用途はバリックと近く、英語や他地域の説明では「Burgundy barrique」などと呼ばれることもあります。
- Fût
- フランス語で「樽」全般を指す言葉。容量に関わらず使われます。
- 地域名や形状をつけて区別することが多く、例としてFût champenois(約205L)があります。
- このサイズもバリックと近いため、外部説明では「Champagne barrique」とされる場合があります。
バリックと呼ばれるかどうか
- 容量や形状がバリックに近い(200〜230Lのワイン熟成用小樽)場合、国際的な説明や英語表記では「○○地方のバリック」と呼ばれることがあります。
- ただし、フランス語の現地用語としては地域固有名(Pièce, Fût)を優先して呼び、barriqueという語は使わないのが普通です。
- したがって、「呼ばれることはあるが、正確には地域名をつけた固有呼称が本来の名称」です。
- posted : 2025-08-13, update : 2025-11-26
- Author : katabami (Editor) / ChatGPT (Writing Assistant)
- 1855年の格付け 2 « HOME » ゲミシュター・ザッツとは