ワインエキスパートに教わるワイン入門

レギュラーボトルはなぜ750mlなのか?

EUでレギュラーボトルの容量が750mlに統一されたのは、なぜですか。

EUにおいて750mlが標準ボトル容量となった背景は、歴史的慣習の統一と市場・貿易の効率化にあります。

歴史的背景

EUによる法的統一

決定要因の整理

まとめると、750mlは最初からEUの発明ではなく、貿易上の実務慣行として国際的に普及した容量を、1975年のEC指令で法的に統一したという経緯です。

750mlの規格はワインガロンではなく、英ガロンが基になっているのですか。

ワインガロン時代(1707年〜1824年)

英ガロンへの移行(1824年〜)

750mlとの直接的つながり

1970年代半ば以前のフランスで流通していた750ml規格のレギュラーボトルは、瓶口まで満たした状態で750ml入り、コルクで封をすると正味容量は約730mlになったといわれます。
これは「英ガロン÷6本」という考え方と矛盾しませんか。

  1. 「英ガロン÷6本」=757mlの意味
    • 英ガロン(Imperial gallon)は4.54609L。これを6等分すると757.68mlになります。
    • この数値は、「公称容量」や「満量容量(brimful capacity)」に近い考え方で、実際に飲料として瓶詰めされる「正味容量(net content)」とは必ずしも同じではありません。
  2. フランスの「750ml規格」と実際の充填量
    • 戦前〜1970年代半ばまでのフランスでは、「レギュラーボトル=750ml」というのは瓶形状の公称容量であり、満量(瓶口ギリギリまで)で測った場合に750mlになる設計でした。
    • 実際の瓶詰めでは、コルクを打ち込むためにコルク下の空間(ullage)を確保する必要があるため、充填量はやや少なくなります。
    • この結果、実際の正味容量は730〜735ml程度になることが多く、「750ml入り」と表示していても計量法的には許容範囲内でした(許容誤差の規定あり)。
  3. 矛盾しない理由
    • 「英ガロン÷6=約757ml」という値は、あくまで規格容量(brimful)に相当します。
    • フランスの750mlボトルの実際の充填量(730ml前後)は、規格容量からコルク分の空間を引いた結果であり、これを「英ガロン由来の750ml」としても矛盾はありません。
    • 同様の現象は現在のEU規格でも見られ、表示容量(nominal volume)と実際の充填量は区別されます。

英国向けのワインには、73clと表示されたラベルが貼られていたという話がありますが、本当でしょうか。

  1. 73cl表示の背景
    • 73cl(= 730ml)という表示は、実際の正味容量(net content)に近い数値です。
    • 戦後〜1960〜70年代にかけて、英国市場向けのフランス産ワインには、実際の正味容量に近い「73cl」表示のボトルが一定数存在したことが確認されています。
    • フランス国内では同じ瓶を「75cl」(公称容量)として販売していても、英国向け輸出品では満量容量(750ml)ではなく、充填後の容量(730ml程度)を表示する例がありました。
  2. なぜ英国は正味容量を表示したのか
    • 英国の計量法(Weights and Measures Acts)は、一般に消費者が実際に受け取る量(net content)の明示を重視しており、輸入ワインの検査や表示でもこの考え方が影響したと考えられます。
    • ワインの場合、コルク下に空間(ullage)を残すため、満量750mlのボトルでも実際は約730mlしか入りません。
    • このため、一部の輸出業者が英国向けラベルに「73cl」と正味容量を記載したのは、当時の英国側の表示慣行・検査実務に合わせた措置とみなせますが、すべての輸出ワインに一律に求められたわけではありません。
  3. 実例について
    • 当時の輸出用ラベルやボトルの現物写真(特に1960〜70年代のボルドーやブルゴーニュの英国市場向け品)で、「73cl」表示の存在が確認されています。
    • ただし、全ての輸出品が73cl表示だったわけではなく、英国市場の規制・検査に対応するための特定ロットや銘柄に限られました。

ボルドー樽が225リットルに統一されたのは19世紀半ばですが、750mlボトルはいつ頃から存在していたのでしょうか。

  1. 前提:225Lバリックと750mlの関係
    • ボルドーのバリック(barrique bordelaise)が225Lに公的統一されたのは1866年(フランス法令により規格化)。
    • 「225L ÷ 300本 = 0.75L」という数値から、750mlがバリックと直結しているように見えますが、実際にはこの計算が750ml誕生の直接要因ではありません。
    • 樽と瓶の単位は別系統で発展しており、750ml規格は、4.546L の英ガロンを6等分した約757mlという換算との整合性が高く、この換算が750mlという数値の定着に一定の影響を与えたと考えられます。
  2. 750ml相当瓶の登場時期
    • 18世紀末〜19世紀前半:瓶はすべて手吹きガラス製で容量に大きなバラつきがあり、同じ形状でも650〜850mlと幅広かった。
    • 19世紀半ば以降:瓶型は地域ごとに定型化し、ボルドー型・ブルゴーニュ型などの形状は安定するが、容量はまだ720〜800ml台の範囲で揺れていました。
    • 19世紀末〜20世紀初頭:英国市場向け輸出品で英ガロン÷6本 ≈ 757mlを基準とするボトルが増加。
      • これは満量(brimful)で750〜760ml程度、正味容量は730ml前後。
      • 特にボルドーの大手ネゴシアンやシャンパーニュの輸出向けで定着。
    • 1920〜30年代:フランス国内では800mlや720ml台の瓶も併存しており、「750ml統一」には至っていない。
    • 戦後(1950〜70年代前半):国際取引で750mlが事実上の標準容量となり、国内向け瓶も次第に統一方向へ。
    • 1975年 EC指令 75/106/EEC:ワインを含む容器入り飲料について、750mlを含む一群の「標準的な表示容量」が法制化され、加盟国はこの範囲の容量で出荷することが義務づけられました(静置ワインでは 75cl が事実上の中心値)。
  3. 年代感のまとめ
    • 本格的に750ml相当の輸出瓶が定着:19世紀末〜20世紀初頭(特に英国市場向け)。
    • 国内外で750mlが事実上の標準に:戦後〜1970年代前半。
    • 法的に750mlに統一:1975年EC指令以降。

「トノー=4バリック=1,200本」という概念は、なぜ広まったのでしょうか。
ワインが樽で流通していた頃、トノーは1,152本相当に該当するとされていたようですが

The Wines of Bordeaux, Sixth Edition, Edmund Penning-Rowsell, 1990

画像の完全訳(出典:The Wines of Bordeaux, Sixth Edition, Edmund Penning-Rowsell, 1990)

バリック・ボルドレーズ(barrique bordelaise)の容量は厳格に管理されている。
以前は215リットルから230リットルまでの幅があったが、1866年に正式に225リットル(49.5英ガロン、59.4米ガロン)と定められ、4バリックでトノー(tonneau)=900リットルとなった。
容量については、上下2%の誤差が許容されている。
形状、胴回り、鉄のたがの本数なども規定されている。

この容量であれば、1本75センチリットルのボトル300本を詰められるはずだが、実際には1973年ごろまでは288本または24ダースしか詰めないのが慣行であった。
そして、顧客がシャトー元詰のワインを購入した場合、これが1バリックから得られる量だと期待していた。

今日では、顧客は25ダース(=300本)を受け取ることになる。

内容のポイント整理

  1. 225L規格化とトノー
    • 1866年、バリック・ボルドレーズの容量が225Lに統一。
    • 4バリック=トノー=900L。
    • 容量から計算すると、900L ÷ 0.75L = 1,200本(理論値)。
  2. 実際の瓶詰め本数
    • 著者は「本来は300本取れるはずだが、1973年ごろまでは288本(24ダース)しか詰めなかった」と記載。
    • この差は澱引きや瓶詰め工程でのロスによるもので、慣行として定着していた。
  3. 「1,200本」概念が広まった理由
    • 計算式が単純で覚えやすく、説明や契約にも使いやすかった。
    • 実務値(1,152本)よりも、理論値(1,200本)のほうが流通上の目安として好まれた。

まとめ

「トノー=4バリック=1,200本」という考え方は、ワインの流通がボトル主体になってから生まれた概念と言えるのでしょうか。

はい、その可能性が高いです。歴史的に見ると、この「1,200本」という数字は樽取引時代の実務値から直接来たものではなく、ボトル換算での理論値が意識されるようになった段階で定着したと考えられます。

理由

  1. 樽取引時代の換算は本数基準ではなかった
    • 19世紀までのワイン流通は樽単位(hogshead, barrique, tonneau)が基本で、容量はリットルやガロンで扱われ、本数換算は重視されていませんでした。
    • 実務では、1バリック=288本(正味容量換算)という現実的な数量が使われることが多く、1,200本というきれいな整数は出てきません。
  2. 1,200本は“理論値”でありボトル流通前提
    • 1バリック=225L → 4バリック=900L
    • 900L ÷ 0.75L = 1,200本(満量容量ベース)
    • この計算は750mlボトルが取引単位として広く使われるようになって初めて意味を持ちます。
  3. 20世紀中盤以降の定着
    • ワインが輸出も含めて瓶詰め流通することが標準化された戦後以降、1トノー=1,200本という表現は分かりやすい「換算用の常識」として広まりました。
    • 実務値(1,152本)との差は説明の場面で無視され、教育やマーケティング資料でも理論値が採用されやすかったのです。

結論

「トノー=4バリック=1,200本」は、樽時代の取引習慣から自然発生した数字ではなく、750mlボトルを標準単位とする流通体系が確立した後に広まった理論値と考えるのが妥当です。

トノーは現在の重さの単位「トン」の語源だと聞いたことがありますが、もともとワインの輸出は900〜1,000リットルの大樽で行われており、その後225リットルの樽に移行し、225L×4=900Lのトノーは単位としてだけ残ったのでしょうか。このあたりが複雑で理解できません。

  1. 語源と単位の関係
    • トノー(tonneau)はフランス語で「大樽」を意味します。
    • 英語の ton(トン)や tun(古形)は、もともと大きな樽(おおむね900〜1,000L)の容量単位から派生し、それが重量単位に転用されました。
    • 重量単位に転用された理由は、ワインやビール、その他液体商品を大樽単位で取引した際、その満載重量がおおよそ一定だったためです。
  2. ワイン輸出と樽の大きさの変化
    • 中世〜近世のワイン輸出では、地域や時代ごとに異なる「大樽」が使われ、容量は900〜1,000L前後が多かった。
    • これらが「トノー(tonneau)」と呼ばれ、貿易や課税の基準単位となりました。
    • 19世紀になると、ワインの熟成・輸送用として225Lバリック・ボルドレーズがボルドーを中心に普及。
    • 輸出単位としても、大樽1本よりも小樽を複数まとめる方式が効率的になり、「4バリック=1トノー(900L)」という換算が定着しました。
  3. 「単位として残った」経緯
    • 容量的には、古い1,000L大樽のトノーから、225L小樽×4=900Lのトノーに置き換わりました。
    • 実物の容器としての「大樽トノー」はほぼ姿を消し、「トノー」という言葉は取引や税の計算単位として残った形です。
    • このため、「トノー」という語は歴史的には容器の意味から始まり、のちに容量単位、さらには重量単位(トン)へと派生しています。

結論

バリック・ボルドレーズの容量は225Lですが、他の地域で使われるバリックの容量も同じなのでしょうか。

バリック・ボルドレーズ(225L)

他地域の「バリック」の容量例

「バリック(barrique)」という語はフランス語で「木樽」を意味し、地域ごとに容量が異なります。
代表的な例は以下の通りです。

地域 名称 容量 備考
ボルドー Barrique bordelaise 225 L 赤ワイン主体。輸出基準樽。
ブルゴーニュ Pièce bourguignonne 228 L 白ワイン熟成に多用。バリックと呼ばれる場合もあり。
シャンパーニュ Fût champenois 約205 L 現在はステンレス主体で使用例は減少。
ロワール Barrique ligérienne 約225 L ボルドー型とほぼ同容量。
ジュラ Pièce jurassienne 約228 L ヴァン・ジョーヌ熟成用。クラヴラン瓶と組み合わせ。
ラングドック Barrique languedocienne 約225 L 国際輸出規格に合わせた容量が多い。

まとめ

「Pièce」と「Fût」もバリックと呼ばれるのでしょうか。

用語の基本

「Pièce」と「Fût」の違いと関係

バリックと呼ばれるかどうか