ワインエキスパートに教わるワイン入門

ブルネッロとサンジョヴェーゼのクローン

イタリアでは数多くのサンジョヴェーゼのクローンが登録されていますが、DOCG Brunello di Montalcino ではどのクローンが使われているのでしょう。

1.法規上の位置づけ

2.ブルネッロで実際に使われる主なクローン

区分 クローン名 特徴・採用事例 備考
歴史的・象徴的クローン BBS 11 (Brunello Biondi-Santi 11) 1970年代にテンータ・グレッポで選抜。小粒・厚皮で長熟型ワインを生む。Biondi-Santi を筆頭に周辺生産者にも普及。 ブルネッロの代名詞的存在
公共苗木・大学系 R24, R10, F9(ラウスセード/フィレンツェ大) 1960-70年代の植替えで大量導入。R24は色調と果実味が安定、R10は収量過大になりやすい。依然として旧畑で目にする。 近年は高密度区画で更新が進行
CCL 2000/1-8 シリーズ(Chianti Classico 2000プロジェクト) 粒径小・皮厚・疎房を狙った改良系統。2000年代以降ブルネッロにも導入例が増加。 早熟傾向で雨前収穫が容易
エステート固有クローン BF 10, BF 30, TIN-10, TIN-50, JANUS-10, JANUS-20(Castello Banfi) 12年に及ぶ社内選抜。区画適応力を重視し多様性を残す設計。
SG-CDO-4, 5, 6, 8(Col d’Orcia) コル・ドルチャが選抜・登録した低収量・高色調タイプの Sangiovese N. クローン群。
シルヴィオ・ナルディ 5系統 シルヴィオ・ナルディ自社全域の詳細調査の結果得られた登録クローン群。詳細非公開だが各単一畑に組み合わせて植栽。Dall’Umbria al Brunello, passando per l’Onu e la zonazione: Tenute Silvio Nardi, una storia importante - Brunello di Montalcino News
少量登録・研究機関系 CRA-BR 1141, CRA-BR 1872(Ricasoli由来)ほか もともとキアンティ用だが、ブルネッロでも試験的に導入例あり。

3.クローン選択の実務ポイント

DOCG Brunello di Montalcino に使われるのは「グロッソ」に分類されるクローンなのですか?

概論

実態整理

  1. 大半は“ブルネッロ由来=grosso 系”
    • BBS 11やBanfi・Col d’Orcia・Nardiなど、モンタルチーノ域内の古樹を母材とした選抜が主流。
  2. 外部導入クローンも“grosso”表記が多い
    • R10は名称に「Grosso」を冠し、R24も近年は grosso 系に括られる研究がある。
  3. バイオタイプ未記載クローンの台頭
    • CCL 2000シリーズなど、粒径の小さいクローンも品質目的で採用されているが、登録簿はバイオタイプを示さず「Sangiovese N.」一本化。
    • こうしたクローンはpiccolo的形質を示す場合もあるが、モンタルチーノでは品質評価が優先され、粒径分類は重視されていない。
  4. 規制上の自由度
    • DOCG の条文はバイオタイプに触れないため、grosso/piccoloを問わず登録済みクローンなら利用可能。
    • それでも生産者の間では「伝統=grosso」という意識が強く、植替え時も地元由来クローンが選好されやすい。

バイオタイプとは?

その地域由来のクローン集合」をバイオタイプと呼ぶ慣行もかつて存在しましたが、そうしたクローンが当該地域を越えて流通・移植されるようになった現代では、その分類の妥当性が揺らいでいます。

バイオタイプという言葉は行政・法律のカテゴリではなく、研究者・生産者が状況に応じて使う「同一品種内の系譜や形態的まとまりを指す技術的な慣用語」に近い概念です。

BBS 11 (Brunello Biondi-Santi 11) の特徴では「小粒・厚皮で長熟型ワインを生む。」と書かれていますが「グロッソ・タイプ」なのですか?

1.BBS 11 の公式区分

2.「小粒」「厚皮」と grosso 呼称が両立する理由

観点 解説
語源と現状 1900年頃の文献では grosso=大粒、piccolo=小粒と記述されたが、近年の DNA・形態研究では両者を分子マーカーで明確に区別できないことが示されており、現在は「環境や選抜による表現型差・系譜グループの呼称」と解釈される。従って grosso は必ずしも“物理的大粒”を意味しない。Sangiovese on Edge
現在では「Sangiovese grosso」は果粒の大きさではなく、主にモンタルチーノなど特定地域に由来する地理的・系譜的グループ名として用いられている。
クローン内変異 同じ grosso 系統でもクローンごとに房・粒サイズは幅があり、BBS 11 は 房が小さめ・粒は中庸・皮が厚いという“高濃度タイプ”に選抜された。
対比対象 1960–70 年代に大量植栽された R10・R24 などは房も粒も大きく薄皮で、これに比べると BBS 11 の粒は「相対的に小さい」ため、現場では「小粒」と表現されることがある。

3.BBS 11 のアンペログラフィー(主な数値)

4.実務上の位置づけ

5.結論

イタリアでは同一品種が複数の名称で登録されていることがよくあり、ワイン産地(DOCG, DOC)の仕様書では別品種のように扱われています。
Prugnolo gentile の登録クローンは、仕様書が Sangiovese になっているものには使えないのですか?

登録簿上の位置づけ

DOC(G)仕様書が参照する名称

Prugnolo Gentile クローンを「Sangiovese」規定下で使えるか

ケース 法的可否 理由
DOC(G) 規格に Sangiovese のみ記載 原則不可 クローンがコード201(Prugnolo Gentile)に属する限り、登録簿上は別品種として扱われる。
DOC(G) 規格に Sangiovese(Prugnolo Gentile) など両記載 規格が同一視しているため、コード201と218のクローン双方を利用可能。
クローンが Sangiovese N. として二重登録されている場合 同一クローンでも、登録時に品種コード218で承認されていれば「Sangiovese」として扱える。

まとめ

関連ページ