ワインエキスパートに教わるワイン入門
ズースレゼルヴとは? 添加量の上限とEU規則
ショ糖でアルコール度数を上げられるように、完成したワインをショ糖で甘味付けすることはできますか。
回答(要点)
- 静置ワイン(スティル)
- EU では不可です。ワインの甘味付け(sweetening)は、ぶどう由来の原料のみ(ぶどう果汁/濃縮ぶどう果汁/精製濃縮ぶどう果汁)で行うことが認められ、ショ糖(蔗糖)は使えません。また、甘味付けによって上がる総アルコール度数の増加は「4.0 % vol 以下(≤ 4 % vol)」に制限されています。eur-lex
- スパークリングワイン
- ドサージュ(リキュール・デクスペディシオン)にはショ糖が認められています。 これはEU上の定義では「甘味付け」や「増強」には数えません。さらに、ドサージュによって上がる実測アルコール度数は「0.5 % vol 以下(≤ 0.5 % vol)」に制限されています。
- 注意点(補足)
- ティラージュ用リキュール(二次発酵用)もショ糖が可。
- アロマティック系高泡(例:アスティなど「quality aromatic sparkling wine」)ではドサージュ自体が禁止です。
- 原則に加え、各PDO/PGIや生産国がより厳しい条件を課すことがあります(例:同規則は加盟国の追加・厳格化を許容)。
まとめ
- スティルワインをショ糖で甘くすることはできません(EU規則)。甘味付けはぶどう由来原料のみ許容(アルコール総量の増加は≤ 4 % vol)。
- スパークリングはドサージュに限ってショ糖が可(「甘味付け」扱いではなく、実測アルコールの増加は≤ 0.5 % vol)。
根拠:EU委員会委任規則 (EU) 2019/934(甘味付けの定義・許容物質・スパークリングのティラージュ/ドサージュの組成と上限値・例外規定)
ドイツで行われる「ズースレゼルヴ(Süßreserve)」はぶどう果汁で甘味を付ける方法ですが、甘口(残糖 45 g/L 以上)のワインにするには、どの程度の果汁を加える必要がありますか。
前提
- 目標:甘口=残糖 = 45 g/L
- 基礎ワイン:残糖 約 2 g/L、アルコール 10 % vol
- 果汁の糖濃度(目安):60/70/80° Oe ≒ 156/182/208 g/L
- 数値は発酵なし(希釈のみ)を想定・四捨五入しています。
必要量(基礎ワイン 1 L 基準と、「出来上がり 1 L」基準)
| 果汁のモスト重(°Oe) |
果汁の糖濃度 (g/L) |
果汁量(mL / 基礎ワイン 1 L) |
果汁量(mL / 出来上がり 1 L) |
仕上がり推定アルコール(% vol) |
| 60 |
156 |
387 mL |
279 mL |
7.21 |
| 70 |
182 |
314 mL |
239 mL |
7.61 |
| 80 |
208 |
264 mL |
209 mL |
7.91 |
読み方:たとえば 70 °Oe の果汁なら、最終的に 1 L の甘口ワイン(45 g/L)を得たい場合、果汁が約 239 mL/出来上がり 1 L を占める設計になります(基礎 10 %vol の希釈で 約 7.61 %vol になります)。
総アルコール(TAV)の増加分は、それぞれどれくらいになりますか。
また、4 % volの上限ぎりぎりまで果汁を加えた場合はどうなりますか。
前提はこれまでと同じく、基礎ワイン:10 % vol・残糖 ≈ 2 g/L、目標は甘口(残糖 = 45 g/L)、果汁は 60 / 70 / 80 °Oe(≈ 156 / 182 / 208 g/L)です。糖→潜在アルコール換算は 16.83 g/L ≈ 1 % vol を用いています。
残糖 45 g/L に甘味付けした場合(出来上がり 1 L 設計)
| 果汁(°Oe) |
果汁量(mL/出来上がり 1 L) |
仕上がり ABV(% vol) |
総アルコールの増加分 ΔTAV(% vol) |
| 60 |
279 |
7.21 |
−0.24 |
| 70 |
239 |
7.61 |
+0.17 |
| 80 |
209 |
7.91 |
+0.47 |
解釈:60 °Oe では希釈の影響が勝ちわずかに減少、70–80 °Oe では小幅に増加します(いずれも +1 % vol 未満)。
「4 % vol」上限ぎりぎりまで果汁を加えたら?
- 結論:ご指定の通常モスト(60–80 °Oe)だけでは到達しません。理論的に 4 % vol に達するために必要な出来上がり中の果汁比率は下記のとおりで、物理的に不可能(または製品規格上不適切)です。
- 60 °Oe:到達不可(加えるほど ΔTAV は減少)
- 70 °Oe:約 575 %(=出来上がり 1 L 中に 5.75 L 相当)
- 80 °Oe:約 179 %(=同 1.79 L 相当)
参考:実務で 4 % vol に近づけるには、より高糖度の(濃縮)ぶどう果汁が必要になります。通常モストの範囲では、上表のとおり ΔTAV は上限未満に収まります。
- 注:
- TAV (Total alcoholic strength by volume):製品中のアルコールを、実測アルコール度と「発酵可能糖に由来する潜在アルコール」の合計として表した値(% vol)です。
- ΔTAV:甘味付け・補糖・濃縮などの処理によるTAVの変化量です(% vol)。例:処理前10.0→処理後11.2なら ΔTAV=+1.2 % vol。
「4 % vol 以下」というのは、濃縮ぶどう果汁で甘味を付ける酒精強化ワインを想定した規定でしょうか。
また、「4 %」という数値はどこから来たのでしょうか。
結論
- 「4 % vol 以下」は、一般のワインの甘味付け(sweetening)に共通して課される上限で、酒精強化ワイン(EU 区分の liqueur wine)だけを想定したものではありません。甘味付けによって総アルコール度(TAV)が4 % vol を超えて増えてはならない(≤ 4 % vol)と定めています。eur-lex
- 酒精強化ワインには別建ての規定があり、一般には +3 % volまで、特定の伝統的類型(例:スペインの vino generoso de licor、マデイラ PDO)では+8 % volまで認められると明記されています。
- 「4 %」という数値の出所は、EUの委任規則 2019/934 付属書 I・Part D(甘味付けの限度と条件)です。加えて、この上限は旧・規則 606/2009の付属書 I・Dにも同文で存在しており、制度的に継承されています。
もう少し詳しく
- 一般ワインの甘味付け
- 許容される甘味付け原料はぶどう果汁/濃縮ぶどう果汁/精製濃縮ぶどう果汁に限定され、TAV の増加は ≤ 4 % vol に制限されています。第三国産の地理的表示ワインについては、EU 域内での甘味付けが禁止されています。また PDO ワインでは、甘味付けは原則としてその PDO 産地内(または隣接直近地域)で行い、ぶどう果汁と濃縮ぶどう果汁はワインと同一地域産に限ることなどが条件になります。
- 酒精強化ワイン(liqueur wine)
- 一般則とは別に付属書 III(規則本文の Annex III)で扱われ、甘味付けの上限は通常 +3 % vol。ただし特例として、スペインの vino generoso de licor や Madeira PDO では+8 % volまで認可されています。
- スパークリングの扱い(参考)
- ティラージュ/ドサージュは「甘味付けでも濃縮でもない」とされ、別途ティラージュによる TAV 増は ≤ 1.5 % vol、ドサージュによる実測アルコール増は ≤ 0.5 % volという個別上限が設定されています。
補足:数値「4 %」の立法趣旨(なぜ 4 か)については、規則の前文・本文に明確な理由説明はありません。ただし、2009 年の規則 606/2009 → 2019 年の規則 2019/934へと同一水準で踏襲されていることから、EU の醸造実務と品質/分類管理の均衡点として運用されてきた歴史的上限と解するのが自然です。
Montilla-Moriles 産の原料が、DO Jerez-Xérès-Sherry の Vinos generosos de licor(Pale Cream/Medium/Cream 等)の甘味付けに使われていますが、甘味付け(sweetening
)に用いる原料の産地はどのように制限されていますか。
要点(結論)
- EU 一般則(甘味付け)
- 使える原料は ぶどう果汁/濃縮ぶどう果汁/精製濃縮ぶどう果汁。
- PDO ワインでは、甘味付けはその産地内(または隣接直近地域)で行い、ぶどう果汁と濃縮ぶどう果汁はワインと同一地域産に限る(= 産地制限)。※精製濃縮ぶどう果汁(RCGM)については同条で産地の明示的な縛りは記載なし。また甘味付けによる TAV(総アルコール)増は ≤ 4 % vol。
- Jerez の “Vinos generosos de licor”(リキュールワイン)の特則
- PDO のリキュールワインで用いる(ぶどう)原料はその PDO 産地のものでなければならない。
- ただし例外として、Jerez-Xérès-Sherry(および Málaga)では、「発酵を防ぐためにぶどう由来中性アルコールを加えたペドロ・ヒメネスの干しぶどう果汁」(= PX ミステラに相当)は Montilla-Moriles 産でも可。この越境例外は EU 本則と Jerez の公的文書に明記。www.sherry.wine
g.U. Moselで用いられるズースレゼルヴは、規定によりg.U. Mosel の生産区域内で収穫されたぶどう由来でなければならないと思いますが、Einzellage(単一畑)や Gemeinde(村名)を表示したワインの場合、甘味付け(sweetening)に用いる原料の産地はどのように扱われますか。
結論(要点)
- g.U. Mosel のワインを甘味付けする原料(ぶどう果汁・濃縮ぶどう果汁)は、EU規則上「そのワインと同じ地域の産」でなければなりません。したがって Mosel 産が原則です。
- より小さい地理的表示(Einzellage や Gemeinde)をラベル表示する場合:
- EU 規則 2019/33 第55条により、「そのワインを生産したぶどう」の少なくとも 85% は表示した小地域(その畑または村)由来である必要があります。この 85% の判定には、甘味付けに用いるぶどう製品(Süßreserve など)は含めません。
- これとは別に、ドイツ国内のいわゆる bezeichnungsunschädlicher Verschnitt の運用として、“表示していない地域”由来分の合計(ワイン本体+Süßreserve などの Fremdanteil)は、最終製品の 25% を超えてはならないとされています。
- g.U. の条件としては、最終製品 100% がその g.U.(= Mosel)由来であること(Süßreserve を含む)が前提になります。
つまり:Einzellage/Gemeinde 表示では、(1)ベースワインに用いたぶどうについて EU の 85% ルールを満たしつつ、(2)表示した畑/村以外由来の成分(Süßreserve を含む Fremdanteil)の合計を、ドイツ国内の運用に従って 25% 以下に抑える、という二重の条件を満たす必要がある、という整理になります。
運用の目安(例)
- 「Piesporter(Gemeinde) Riesling」を 45 g/L へ甘味付け:
- ベースワイン:少なくとも 85% は Piesport 由来。
- ズースレゼルヴ:Mosel 産であれば可(Piesport 以外の Mosel も可)。ただし“Piesport 以外分”として総量の ≤25%に収まるよう設計。
- 「Piesporter Goldtröpfchen(Einzellage)」でも同様に、ベース 85% 以上=その Einzellage、ズースレゼルヴは Mosel 産で、小地域外分の合計 ≤25%。
ズースレゼルヴに濃縮ぶどう果汁は使えますか。
ズースレゼルヴ(Süßreserve)には、濃縮ぶどう果汁は使えません。
ドイツ国内法(Weinverordnung, §16)は、Qualitätswein/Prädikatswein/Landwein の甘味付けについて、「未発酵のぶどう果汁(Most)」のみを許容しており、濃縮ぶどう果汁(konzentrierter Traubenmost, M.C.)や精製濃縮果汁(RCGM/MCR)を使うことは認められていません。
補足
- EU規則(2019/934, Annex I Part D)では、ワインの甘味付け原料として「ぶどう果汁」「濃縮ぶどう果汁」「精製濃縮ぶどう果汁」が挙げられていますが、これは各国法に従う前提付きです。
- ドイツは国内法でより厳格に制限しており、伝統的に「Süßreserve=その地域の未発酵ぶどう果汁」と規定しています。
- このため、ドイツワインの品質カテゴリー(Qualitätswein/Prädikatswein)において、甘味付けに濃縮果汁を使うことはできません。
「表示単位別の原料産地要件(g.U./Gemeinde/Einzellage)」と「ズースレゼルヴの許容比率」をひと目で確認できる対応表を作ってください。
条文の整理
- EU 2019/33 Art.55(小地域名の使用)
- 「少なくとも85 %はその小地域産ぶどう」
- 「sweetening・tirage・expedition liqueurに使う分はこの85 %計算に含めない」
- 残り15 %は同じPDO内ぶどうに限る。
- ドイツ国内の運用(bezeichnungsunschädlicher Verschnitt)
- EU 規則 2019/33 第55条自体は「85%(ぶどう)+残り 15% は同一 PDO 内」という原則だけを定めており、25% という数値は規定していません。
- ドイツの Weinverordnung や BLE『Das Weinrecht』などでは、地理的表示・品種・年のいずれについても、「表示していない出自」の成分(Süßreserve を含む Fremdanteil)の合計が 25% を超えない範囲であれば「表示に影響しない Verschnitt」として扱う、という補足ルールが運用されています。
ズースレゼルヴによって残糖 45 g/L にしたワインを想定
| シナリオ |
構成(最終製品=100%) |
85%ルールの判定(小地域=Gemeinde/Einzellage) |
25%枠の判定(“表示していない地域”由来の合計) |
| A:80 °Oeのズースレゼルヴを同一小地域から |
ベース小地域 79% ズースレゼルヴ 21%(同一小地域) |
計算対象はベース79%。 100%小地域 ≥85% → 適合 |
“表示していない地域”=0% → 適合 |
| B:80 °Oeのズースレゼルヴを小地域外から |
ベース小地域 79% ズースレゼルヴ 21%(小地域外) |
計算対象はベース79%。 100%小地域 ≥85% → 適合 |
“表示していない地域”=21% → 適合 |
| C:70 °Oeのズースレゼルヴを小地域外から |
ベース小地域 76% ズースレゼルヴ 24%(小地域外) |
計算対象はベース76%。 100%小地域 ≥85% → 適合 |
“表示していない地域”=24% → 適合(上限近い) |
| D:60 °Oeのズースレゼルヴを小地域外から |
ベース小地域 72% ズースレゼルヴ 28%(小地域外) |
計算対象はベース72%。 100%小地域 ≥85% → 適合 |
“表示していない地域”=28% → 不適合 |
Süßreserve に使うぶどう果汁はベースワインと同じ品質段階(Qualitätswein/Kabinett など)に揃える必要がありますか。また、Süßreserve 追加後の最終ワインはどのクラスになりますか。
品質段階
- モスト重量(糖度)をベースワインとぴったり揃える義務はありません。
- ただし Süßreserve の果汁については、検査要領や A.P.-Nr. 申請書式(BLE『Das Weinrecht』など)でも「ベースワインと同じ出自・品種・年」であることが基本前提とされており、少なくともベースワインと同じ品質段階に相当することが求められます。
- 例:ベースが Qualitätswein → 果汁も少なくとも Qualitätswein 相当。
- 例:ベースが Kabinett → 果汁も少なくとも Kabinett 相当(Spätlese 以上でも可)。
- 最終製品のクラスはベースワインのまま。Prädikat は収穫時のモスト重量で決まるため、Süßreserve で格上げはできません。
出自要件
- 色:白ワインには白ぶどう果汁、赤・ロゼには黒ぶどう果汁。Rotling の場合は同品種または白/黒いずれも可(法文に明記)。
- 産地:Qualitätswein/Prädikatswein は当該 Anbaugebiet 産が 100% 要件です。したがって Süßreserve も同じ Anbaugebiet に属する必要があります。
- 年・品種:ラベルに表示する場合は、基本的には EU の 85% ルールに従います(ぶどう由来部分の少なくとも 85% が表示した年/品種由来であること。甘味付けに用いるぶどう製品は、EU 規則上この 85% 計算からは除外されます)。これに加えて、ドイツ国内の運用では、「表示していない年/品種」由来分の合計(ワイン本体+Süßreserve を含む Fremdanteil)が 25% を超えない範囲であれば表示に影響しない、と整理されています。
実務上の運用(A.P.-Nr. 検査)
- 品質審査の様式には「Süßreserve はベースワインと同一の出自・品種・年か」を確認する欄があります。
- 同一であればラベル要件は安全。異なる場合は 85%ルールの適用により調整が必要。
基礎ワインのアルコールが 10 % vol あるということは、収穫時のモスト重量は Kabinett や Spätlese の基準に達していると考えられます。
この場合、60°Oe の果汁を Süßreserve として使うことはできませんよね。
- Prädikat の基準
- Prädikatswein(Kabinett, Spätlese など)は収穫時のモスト重量(°Oe)で区分されます。
- 目安として、完全発酵した場合にアルコール度数 10 % vol を得るには、おおよそ 75 °Oe 前後のモストが必要です。
- したがって、基礎ワインが補糖なしで 10 % vol 程度あるのであれば、ぶどうは Kabinett の最低基準付近かそれ以上であったと推測できます(あくまで目安であり、個々のワインごとに分析が必要です)。
- 60°Oe の果汁の位置づけ
- 60°Oe は多くの地域で Qualitätswein の下限近くであり、Kabinett や Spätlese の Prädikat 基準には届きません。
- ドイツの検査要領(A.P.-Nr. 申請書など)では、Süßreserve についても「ベースワインと同じ出自・品種・年」であることが原則とされ、Prädikatswein の場合には、甘味付けに用いる果汁も同じ Prädikat レベルに相当することが求められます。
- このため、Kabinett/Spätlese として申請するワインに 60°Oe の果汁を Süßreserve として用いることは、通常は適合しません。
- 例外・補足
- ただし、そのワインを Prädikatswein としてではなく Qualitätswein として申請・販売する場合には、60°Oe の果汁を Süßreserve として用いることは可能です。
- また、基礎ワインのアルコール 10 % vol が補糖によって上がっているケースもあり、この場合はモスト重量が Prädikat の下限に満たないこともあります。そのような場合でも、クラスが Qualitätswein であるかぎり、60°Oe の果汁を Süßreserve として用いること自体は許容されます。
関連ページ
- posted : 2025-08-24, update : 2025-11-26
- Author : katabami (Editor) / ChatGPT (Writing Assistant)
- シャプタリザシオンとは?EU栽培ゾーン・補糖上限 « HOME » EU規則で学ぶワインラベルの読み方