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EUワインラベルの品種名表示
EU のワインラベルにおけるぶどう品種名表示のルールを教えてください。
EU では、ぶどう品種名の表示は 「任意表示(optional particulars)」 に分類されます。書いてもよいが、書く場合には厳格なルールがあります。
基本ルール(Reg. (EU) 1308/2013 Art.120、Reg. (EU) 2019/33)
- 登録済みの品種のみ
- EU の共通品種リスト(各加盟国の国家登録簿を含む)に登録されたぶどう品種名だけが表示できます。未登録品種は使用不可。
- 85%ルール
- 1品種だけをラベルに表示する場合、そのワインのぶどうの 少なくとも 85%以上 がその品種でなければなりません。
- 複数品種表示
- 2品種以上を表示する場合、表示したすべての品種を合わせて 100% を構成していなければなりません(例:Merlot 60% / Cabernet Sauvignon 40%)。Reg. (EU) 2019/33 Art.50(1)(a) により、品種名は使用比率の高い順に並べ、文字の高さも同じにする必要があります。そのうえで、% 表示の有無や義務表示との位置関係などの細かなレイアウトについては、各国が定めるガイドラインに従います。
- 名称の使い方
- 品種名は 消費者が混同しない形で記載する必要があります。地名や商標に似た品種名(例:Riesling Italico と Riesling の区別など)は、誤認を避けるため特別規定があります。
GIワインと品種表示
- PDO/PGIワインでも表示は可能ですが、その場合は 当該 GI の製品仕様書(product specification)で品種表示が許可されていることが前提になります。
- ブルゴーニュの赤のグラン・クリュは、製品仕様書で主要品種が Pinot Noir に限定されているとはいえ、ラベルに “Pinot Noir” と書くことは認められていません。
表記方法の制限
- 言語:販売国の消費者が理解できる言語で記載(Reg. 1169/2011 Art.15)。
- フォントや位置:義務的表示事項と同一視野である必要はありませんが、義務表示を妨げない位置・大きさで表示する必要があります。
- 禁止表記:品種名がワインのスタイルや原産地と誤認されるような使い方は禁止されています(例:品種名が地名と紛らわしい場合)。
参照リンク
- Regulation (EU) No 1308/2013(共通農産物市場規則/ワインを含む):eur-lex
- Commission Delegated Regulation (EU) 2019/33(ワインのラベル表示・保護用語・製品仕様書など補足規則):eur-lex
- Regulation (EU) No 1169/2011(食品表示一般規則、Article 15 は言語要件):eur-lex
EU の品種リストに登録されている「品種名やシノニム」をラベルに表示する場合、大文字・小文字・アクセント記号・ハイフンなどを登録通りに完全一致させなければならないのですか。
原則:登録名どおりに表示
- Reg. (EU) 2019/33, Art.50(1)(b) により、ラベル上のぶどう品種名は 加盟国の品種リストに登録された正式名称またはそのシノニムに基づかなければなりません。
- この「正式名称」には スペリング(大文字小文字、アクセント記号、ハイフンなど) が含まれます。つまり、原則として登録表記どおりに表示することが求められます。
実務上の柔軟性
- 大文字/小文字:食品表示の一般規則(Reg. 1169/2011)では、可読性を高めるために 全て大文字で表記することも認められており、品種名も例外ではありません。例:Pinot Noir → PINOT NOIR。
- アクセント・ダイアクリティカルマーク:これは 原則保持が必要です。誤認を避けるため、アクセントを外すと別品種とみなされる可能性があります(例:Müller-Thurgau と Muller-Thurgau)。
- ハイフン/スペース:公式登録に基づく形を用いるのが原則です。ただし、加盟国当局が「同一視」と認めている場合には、慣用表記(例:Garnacha Tinta vs. Garnacha-Tinta)が許容されることがあります。
EU 品種リストと国リストの関係
まとめ
- 原則:品種名やシノニムは、国の登録リストに記載された形と一致させて表示する必要があります。
- 例外的に認められる緩和:
- 大文字化(PINOT NOIR など)は可。
- アクセント・ハイフンなどは原則保持すべき(省略や変形は不可)。
- 実務上の最終判断:加盟国のラベル審査当局が「許容される表記かどうか」を判断します。
「禁止表記:品種名がワインのスタイルや原産地と誤認されるような使い方」について詳しく教えてください。
回答(要点)
- 誤認を招く表示は禁止:食品一般の原則として、消費者を誤認させる情報を表示してはならない(特性・原産・製法等)。任意表示(品種名など)にも適用されます。Regulation (EU) No 1169/2011
- 品種名が PDO/PGI と「同一・一部含む」場合の厳格規制:
- GI(PDO/PGI)の名称と「一致/含む」品種名・シノニムは、原則ラベルに使えません。
- ただし 2019/33 付属書IV に例外として列挙された場合のみ、定められた条件・国に限り使用可。未収載なら禁止です。eur-lex
仕組み(条文ベース)
- 1) 一般の「誤認禁止」ルール(横断規則)
- Reg. (EU) 1169/2011 Art.7:食品情報は、特性/本質/組成/原産地(provenance)/製法等について誤認させてはならない。ワインの任意表示(品種名・ヴィンテージ等)もこの原則に従います。
- 2) ワイン特有の「品種名」ルール
- Reg. (EU) 2019/33 Art.50:
- 単一表示=85%以上, 複数表示=100% の配合要件など、品種表示の基本条件を定める。
- Art.50(3):GI名と「同一」の品種名・シノニムをラベルに載せられるのは、付属書IV-Aに挙がる限定ケースのみ。
- Art.50(4):GI名を「一部に含む」品種名・シノニムで地理要素を直接指すものは、当該GI等を負う製品に限って表示可(=それ以外では不可)。付属書IV-Bが該当一覧。
- 付属書IV(具体例):
- 例:“Teran” はクロアチアPDO Hrvatska Istra での条件付き併記のみ可(同一視野・フォント条件)。他では不可。eur-lex
- 例:“Bourgogne”を含むシノニムとの関係など、国別に許容が細かく指定されています。
- 3) GI 名称の「不正使用/模倣/想起(evocation)」の禁止
- Reg. (EU) 1308/2013 Art.103(2)(b):PDO/PGI は「いかなる不正使用・模倣・想起」からも保護。“…風/タイプ/方式/スタイル”等の但し書きを付してもアウト、との解釈が確立しています。
典型的なNGパターン(誤認を招く使い方)
- GI 名と「同一」・「一部を含む」品種名を、付属書IVの例外に該当しないのに表示する。
- 例:付属書IVにない組合せで、地名由来の語を含む品種名を表示 → 禁止。
- 品種名の見せ方が、あたかもPDO/PGI を負っている/特定産地由来であるかのように見えるデザイン・文言(“X 方式” “X スタイル” で GI を想起)
- スタイルの誤認(例:伝統的製法や熟成表示を誤用)
- 例:“bottle-fermented / traditional method” は Art.53(3)(4) の技術要件を満たす場合に限り使用可。満たさないのに併記し、品種名と合わせて高級スパークリングを装う → 誤認。
フランスの品種リストには、品種名表示の禁止条件が記載されています。代表的な品種名と禁止条件を、対応関係がわかるようにまとめて示してください。
Liste des variétés de raisins de cuve pouvant être plantées, replantées ou greffées aux fins de la production vitivinicole
回答(代表例と禁止条件の対応)
以下は、フランス農業省「ワイン用ぶどう品種リスト(2025年3月25日付・BO掲載 2025年4月3日)」の脚注(1)〜(7)に基づく表示禁止(または制限)条件の要旨と、該当する代表的な品種名の例です。条文出典は脚注に併記されています。
- (1) フランスで生産されるすべてのワイン区分について品種名表示が禁止
- Reg. (EU) 1308/2013 Art.100(3)(GI 名と同一・紛らわしい品種名の取扱いに特別ルールを求める規定)を受けて、フランスの分類品種リスト(2025年3月25日付・BO 掲載)が脚注(1)として「当該品種名はフランス産ワインのラベルには表示しない」と定めています。
- 代表例: Duras、Gascon、Jurançon blanc、Jurançon noir など(リスト中に「(1)」印)。
- — 意味: これらの品種名は、フランス産のいかなる区分のワインでもラベルに表示できません。他国での扱いは、それぞれの国の品種リストおよび EU 規則を別途確認する必要があります。
- (2) すべてのワイン区分で品種名表示が禁止
- 根拠: Reg. (EU) 2019/33 付属書IV・Part A
- 代表例: Calabrese、Montepulciano など(「(2)」印)。
- — 意味: 指定の全区分で表示不可(GIの有無にかかわらず)。
- 説明:Reg. (EU) 2019/33 付属書 IV Part A に列挙された品種名(またはシノニム)が対象。
- (3) GIなし(VSIG)ワインで表示禁止
- 根拠: Reg. (EU) 2019/33 付属書IV・Part A
- 代表例: Alicante Henri Bouschet など(「(3)」印)。
- — 意味: VSIGでは不可。GI(PDO/PGI)ワインでの取り扱いは別途規則・仕様書による。
- 説明:同じく付属書 IV Part A に基づくが、適用が「VSIG 限定」。
- (4) すべてのワイン区分で品種名表示が禁止
- 根拠: Reg. (EU) 2019/33 付属書IV・Part B
- 代表例: Aleatico、Barbera、Fiano、Nebbiolo、Primitivo など(「(4)」印)。
- — 意味: 指定の全区分で表示不可(GIの有無にかかわらず)。
- 説明:Reg. (EU) 2019/33 付属書 IV Part B に列挙された品種名(またはシノニム)が対象。
- (5) GIなし(VSIG)ワインで表示禁止(フランス国内規定)
- 根拠: 仏政令 2012-655(2012年5月4日)
- Aligoté、Altesse、Clairette、Clairette rose、Gewurztraminer、Gringet、Jacquère、Mondeuse、Mondeuse blanche、Persan、Poulsard、Riesling、Savagnin blanc、Savagnin rose、Sylvaner、Trousseau、Trousseau gris(「(5)」印)。
- — 意味: VSIGでは不可。これらは地域的典型性と強く結びつくため、仏国内の非GIラベルでの使用を制限。
- 説明:仏政令 2012-655 に基づく国内ルールで、特定の品種名を非 GI ラベルで使えないよう制限。
- (6) GIなし(VSIG)ワインで、GIと受け取られ得る使い方をした場合に表示禁止(条件付)
- 根拠: Reg. (EU) 2019/33 Art.55(1)
- 代表例: Abondant、Aramon、Auxerrois、Castets、Gamay de Bouze、Gamay de Chaudenay、Lauzet、Marsanne、Mauzac、Franc noir de Haute-Saône など(「(6)」印)。
- — 意味: VSIGでの使い方が「地理的表示のように見える」場合に禁止。表記態様・文脈によっては不可となる条件付の制限。
- 説明:Reg. (EU) 2019/33 Art.55(1) に基づき、品種名の置き方・文脈が GI を示すかのように見える場合はNG。
- (7) (参考)スパークリングでの品種表示を許容(禁止ではない注記)
- スパークリングカテゴリに限って「Pinot(泡用)等の表記を認める」旨(Reg. 2019/33 Art.50(2))。禁止条件ではありませんが、用途限定の許容として付されています。
上記の禁止規定はフランス産ワインを対象としたものだと思いますが、Aleatico/Barbera/Fiano/Nebbiolo/Primitivo の品種名表示の禁止はフランスだけに適用されるのですか。
回答(要点)
- フランスだけの規制ではありません。 ご提示の5品種は、フランスの品種リストでも「(4)=EU規則 2019/33 付属書IV Part B に基づく禁止・制限」と明示されており、根拠はEU委任規則(2019/33)そのものです。したがって、EU域内共通の適用になります。
- EU本則の仕組み: 2019/33 Article 50(3)–(4) と Annex IV が、GI(PDO/PGI)名と同一または一部を含む品種名の取り扱いを定めています。
- Part A:GI名と同一/含む品種名で、特定の条件下のみ表示可。
- Part B:GI名を一部含み、その地理要素を直接指す品種名は、該当GIを負う製品に限って表示可(=それ以外では不可)。この規定はEU域内全体に適用されます。
- フランスのリストの位置づけ: フランスのBO掲載リストは、上記EU規則を国内運用へ写し込んだもので、(4)印として Aleatico/Barbera/Fiano/Nebbiolo/Primitivo などを掲げています。これはフランス独自の規則ではなく、EU共通の法令の反映です。
- 補足(適用の範囲指定): Annex IVの表には「当該の国で、当該GIを負うワインに限り可」といった国別注記が付く場合があります(例:脚注「For the countries concerned…」)。いずれもEU規則に基づく横断規律であり、フランスだけの話ではありません。
イタリアのワイン産地では、仕様書で Barbera や Nebbiolo などの品種名表示が認められているところもあると思いますが、これはどう扱われますか。
回答
結論から言うと、イタリアではこれらの品種名表示が認められる場合があります。根拠は EU 委任規則 2019/33 附属書 IV・Part B です。ここには、PDO/PGI を負うワインに限ってラベルに表示できる「品種名(またはシノニム)」と、その使用を認める国が列挙されています(Art.50(4))。したがって、列挙された国以外では表示不可です。eur-lex
該当5品種の「使用を認める国」(抜粋)
(いずれも “PDO/PGI を負うワインに限り” 使用可)
- Aleatico → Italy, Australia, United States
- Barbera → Italy, South Africa, Argentina, Australia, Croatia, Mexico, Slovenia, Uruguay, United States, Greece, Malta
- Fiano → Italy, Australia, United States
- Nebbiolo → Italy, Australia, United States, Croatia
- Primitivo → Italy, Australia, United States, Croatia
これらは EU 全域の共通ルールで、フランスの国内リストに付されている注記「(4)=2019/33 附属書 IV Part B に基づく禁止・制限」は、この EU 規則の写し込みです。フランスは上記の「認める国」には入っていないため、フランス産ワインではこれら品種名のラベル表示はできません。
実務での解釈ポイント
- イタリアでの可否
- 上のとおり国としてイタリアが許容国に含まれるため、イタリアの 各 PDO/PGI の製品仕様書が品種表示を許可していれば、ラベルに Nebbiolo や Barbera 等を出せます(例:Langhe Nebbiolo DOC など)。
- 国による禁止の例
- ドイツなど 許容国に挙がっていない国では、たとえ国内で栽培していても 品種名表示は不可です(EU 議会の照会でも、ドイツ産ワインに Barbera などの品種名を付せない旨が確認されています)。
- GI 名に品種名が含まれるケース
「販売国の消費者が理解できる言語」とは、ギリシャ語やブルガリア語のラテン文字表記を指すのでしょうか。ギリシャ語やブルガリア語の現地文字(ギリシャ文字/キリル文字)による品種名との併記が必須ですか。それともラテン文字表記のみでもよいのでしょうか。
結論(要点)
- ワイン分野の言語規則は特則(lex specialis)です。必須・任意の表示事項(品種名を含む)は、EUの公用語のうち1言語以上で表示すれば足ります。販売国の現地文字による併記は義務ではありません。したがって、ラテン文字による表示だけでも可です。
- 例外的に、PDO/PGI の「保護名称そのもの」は保護されている言語で表示するのが原則。ただし、その名称が非ラテン文字の場合は、EU公用語での併記(転写・翻字)を“追加で”載せてもよい(義務ではない)。
- 品種名は各国の品種リストに記載された正式名またはシノニムを用いる必要があり、非ラテン文字で登録されている場合も転写形が定められていれば、それをラベルに表示することができます。
「ラテン文字へ転写された品種名」を使用する場合も、その転写形が品種リストに登録されていることが条件ですよね。
はい、そのとおりです。
登録された名称の使用が原則
- Reg. (EU) 2019/33 Art.50(1)(b) によれば、EU域内産ワインに品種名を表示する際は、Reg. (EU) 1308/2013 Art.81(2) に基づく「加盟国の品種分類(classification)」に記載された名称またはシノニムでなければなりません。
- したがって、非ラテン文字で登録されている品種(例:ギリシャ文字、キリル文字など)の場合でも、転写されたラテン文字表記が公式に品種分類へ記載されていなければ、ラベルに用いることはできません。
登録されていない転写は不可
- 単なる「慣用のローマ字表記」や「市場で通じやすい英語表記」であっても、分類簿に記載がなければ使用できません。
- これは 統一性と消費者保護のためで、例えば同じ品種が国によって異なる転写方法で流通しないようにする狙いがあります。
実例
- ギリシャの品種「Ξινόμαυρο」:国家分類簿には「Ξινόμαυρο」と同時に「Xinomavro」の転写形が登録されています。このため、ラベルに「Xinomavro」と表示できます。
- ブルガリアの「Мавруд」:分類簿に「Mavrud」という転写形が記載されており、ラベルに「Mavrud」と出せます。
まとめ
- ラテン文字転写形の使用も、品種分類に公式に登録されていることが条件。
- 登録がなければ、ラベルでその転写形を使うことはできません。
- よって、「非ラテン文字品種名=必ず対応するラテン文字表記が品種リストに記載されている」ことが前提になります。

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- posted : 2025-08-31, update : 2025-11-27
- Author : katabami (Editor) / ChatGPT (Writing Assistant)
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