ワインエキスパートに教わるワイン入門

EUワインラベルの品種名表示

EU のワインラベルにおけるぶどう品種名表示のルールを教えてください。

EU では、ぶどう品種名の表示は 「任意表示(optional particulars)」 に分類されます。書いてもよいが、書く場合には厳格なルールがあります。

基本ルール(Reg. (EU) 1308/2013 Art.120、Reg. (EU) 2019/33)

GIワインと品種表示

表記方法の制限

参照リンク

EU の品種リストに登録されている「品種名やシノニム」をラベルに表示する場合、大文字・小文字・アクセント記号・ハイフンなどを登録通りに完全一致させなければならないのですか。

原則:登録名どおりに表示

実務上の柔軟性

EU 品種リストと国リストの関係

まとめ

「禁止表記:品種名がワインのスタイルや原産地と誤認されるような使い方」について詳しく教えてください。

回答(要点)

仕組み(条文ベース)

1) 一般の「誤認禁止」ルール(横断規則)
  • Reg. (EU) 1169/2011 Art.7:食品情報は、特性/本質/組成/原産地(provenance)/製法等について誤認させてはならない。ワインの任意表示(品種名・ヴィンテージ等)もこの原則に従います。
2) ワイン特有の「品種名」ルール
  • Reg. (EU) 2019/33 Art.50:
    • 単一表示=85%以上, 複数表示=100% の配合要件など、品種表示の基本条件を定める。
    • Art.50(3):GI名と「同一」の品種名・シノニムをラベルに載せられるのは、付属書IV-Aに挙がる限定ケースのみ。
    • Art.50(4):GI名を「一部に含む」品種名・シノニムで地理要素を直接指すものは、当該GI等を負う製品に限って表示可(=それ以外では不可)。付属書IV-Bが該当一覧。
  • 付属書IV(具体例):
    • 例:“Teran” はクロアチアPDO Hrvatska Istra での条件付き併記のみ可(同一視野・フォント条件)。他では不可。eur-lex
    • 例:“Bourgogne”を含むシノニムとの関係など、国別に許容が細かく指定されています。
3) GI 名称の「不正使用/模倣/想起(evocation)」の禁止
  • Reg. (EU) 1308/2013 Art.103(2)(b):PDO/PGI は「いかなる不正使用・模倣・想起」からも保護。“…風/タイプ/方式/スタイル”等の但し書きを付してもアウト、との解釈が確立しています。

典型的なNGパターン(誤認を招く使い方)

  1. GI 名と「同一」・「一部を含む」品種名を、付属書IVの例外に該当しないのに表示する。
    • 例:付属書IVにない組合せで、地名由来の語を含む品種名を表示 → 禁止。
  2. 品種名の見せ方が、あたかもPDO/PGI を負っている/特定産地由来であるかのように見えるデザイン・文言(“X 方式” “X スタイル” で GI を想起)
    • Art.103(2)(b) の「想起」該当→不可。eur-lex
  3. スタイルの誤認(例:伝統的製法や熟成表示を誤用)
    • 例:“bottle-fermented / traditional method” は Art.53(3)(4) の技術要件を満たす場合に限り使用可。満たさないのに併記し、品種名と合わせて高級スパークリングを装う → 誤認。

フランスの品種リストには、品種名表示の禁止条件が記載されています。代表的な品種名と禁止条件を、対応関係がわかるようにまとめて示してください。
Liste des variétés de raisins de cuve pouvant être plantées, replantées ou greffées aux fins de la production vitivinicole

回答(代表例と禁止条件の対応)

以下は、フランス農業省「ワイン用ぶどう品種リスト(2025年3月25日付・BO掲載 2025年4月3日)」の脚注(1)〜(7)に基づく表示禁止(または制限)条件の要旨と、該当する代表的な品種名の例です。条文出典は脚注に併記されています。

(1) フランスで生産されるすべてのワイン区分について品種名表示が禁止
Reg. (EU) 1308/2013 Art.100(3)(GI 名と同一・紛らわしい品種名の取扱いに特別ルールを求める規定)を受けて、フランスの分類品種リスト(2025年3月25日付・BO 掲載)が脚注(1)として「当該品種名はフランス産ワインのラベルには表示しない」と定めています。
代表例: Duras、Gascon、Jurançon blancJurançon noir など(リスト中に「(1)」印)。
— 意味: これらの品種名は、フランス産のいかなる区分のワインでもラベルに表示できません。他国での扱いは、それぞれの国の品種リストおよび EU 規則を別途確認する必要があります。
(2) すべてのワイン区分で品種名表示が禁止
根拠: Reg. (EU) 2019/33 付属書IV・Part A
代表例: CalabreseMontepulciano など(「(2)」印)。
— 意味: 指定の全区分で表示不可(GIの有無にかかわらず)。
説明:Reg. (EU) 2019/33 付属書 IV Part A に列挙された品種名(またはシノニム)が対象。
(3) GIなし(VSIG)ワインで表示禁止
根拠: Reg. (EU) 2019/33 付属書IV・Part A
代表例: Alicante Henri Bouschet など(「(3)」印)。
— 意味: VSIGでは不可。GI(PDO/PGI)ワインでの取り扱いは別途規則・仕様書による。
説明:同じく付属書 IV Part A に基づくが、適用が「VSIG 限定」。
(4) すべてのワイン区分で品種名表示が禁止
根拠: Reg. (EU) 2019/33 付属書IV・Part B
代表例: AleaticoBarberaFianoNebbioloPrimitivo など(「(4)」印)。
— 意味: 指定の全区分で表示不可(GIの有無にかかわらず)。
説明:Reg. (EU) 2019/33 付属書 IV Part B に列挙された品種名(またはシノニム)が対象。
(5) GIなし(VSIG)ワインで表示禁止(フランス国内規定)
根拠: 仏政令 2012-655(2012年5月4日)
AligotéAltesseClairetteClairette roseGewurztraminerGringetJacquèreMondeuseMondeuse blanchePersanPoulsardRieslingSavagnin blancSavagnin roseSylvanerTrousseauTrousseau gris(「(5)」印)。
— 意味: VSIGでは不可。これらは地域的典型性と強く結びつくため、仏国内の非GIラベルでの使用を制限。
説明:仏政令 2012-655 に基づく国内ルールで、特定の品種名を非 GI ラベルで使えないよう制限。
(6) GIなし(VSIG)ワインで、GIと受け取られ得る使い方をした場合に表示禁止(条件付)
根拠: Reg. (EU) 2019/33 Art.55(1)
代表例: Abondant、Aramon、AuxerroisCastetsGamay de BouzeGamay de ChaudenayLauzetMarsanneMauzacFranc noir de Haute-Saône など(「(6)」印)。
— 意味: VSIGでの使い方が「地理的表示のように見える」場合に禁止。表記態様・文脈によっては不可となる条件付の制限。
説明:Reg. (EU) 2019/33 Art.55(1) に基づき、品種名の置き方・文脈が GI を示すかのように見える場合はNG。
(7) (参考)スパークリングでの品種表示を許容(禁止ではない注記)
スパークリングカテゴリに限って「Pinot(泡用)等の表記を認める」旨(Reg. 2019/33 Art.50(2))。禁止条件ではありませんが、用途限定の許容として付されています。

上記の禁止規定はフランス産ワインを対象としたものだと思いますが、Aleatico/Barbera/Fiano/Nebbiolo/Primitivo の品種名表示の禁止はフランスだけに適用されるのですか。

回答(要点)

イタリアのワイン産地では、仕様書で Barbera や Nebbiolo などの品種名表示が認められているところもあると思いますが、これはどう扱われますか。

回答

結論から言うと、イタリアではこれらの品種名表示が認められる場合があります。根拠は EU 委任規則 2019/33 附属書 IV・Part B です。ここには、PDO/PGI を負うワインに限ってラベルに表示できる「品種名(またはシノニム)」と、その使用を認める国が列挙されています(Art.50(4))。したがって、列挙された国以外では表示不可です。eur-lex

該当5品種の「使用を認める国」(抜粋)

(いずれも “PDO/PGI を負うワインに限り” 使用可)

これらは EU 全域の共通ルールで、フランスの国内リストに付されている注記「(4)=2019/33 附属書 IV Part B に基づく禁止・制限」は、この EU 規則の写し込みです。フランスは上記の「認める国」には入っていないため、フランス産ワインではこれら品種名のラベル表示はできません。

実務での解釈ポイント

  1. イタリアでの可否
    • 上のとおり国としてイタリアが許容国に含まれるため、イタリアの 各 PDO/PGI の製品仕様書が品種表示を許可していれば、ラベルに Nebbiolo や Barbera 等を出せます(例:Langhe Nebbiolo DOC など)。
  2. 国による禁止の例
    • ドイツなど 許容国に挙がっていない国では、たとえ国内で栽培していても 品種名表示は不可です(EU 議会の照会でも、ドイツ産ワインに Barbera などの品種名を付せない旨が確認されています)。
  3. GI 名に品種名が含まれるケース
    • Fiano di Avellino, Primitivo di Manduria のように GI 名称そのものに品種が含まれている場合は、これは品種名の任意表示ではなく GI 名称の一部です。上記の「許容国リスト」に関係なく、その GI の規則に従って表示します。

「販売国の消費者が理解できる言語」とは、ギリシャ語やブルガリア語のラテン文字表記を指すのでしょうか。ギリシャ語やブルガリア語の現地文字(ギリシャ文字/キリル文字)による品種名との併記が必須ですか。それともラテン文字表記のみでもよいのでしょうか。

結論(要点)

「ラテン文字へ転写された品種名」を使用する場合も、その転写形が品種リストに登録されていることが条件ですよね。

はい、そのとおりです。

登録された名称の使用が原則

登録されていない転写は不可

実例

まとめ

Authorised wine grape varieties 非ラテン文字品種名+ラテン文字表記が品種

関連ページ