ワインエキスパートに教わるワイン入門

EU規則で学ぶワインラベルの読み方

EUのワインラベルには「義務的表示事項」を必ず表示するはずですが、アルコール度数や瓶詰め業者の表示が見当たらないことがあります。これはなぜでしょうか。

1) EU法でいう「義務的表示事項」の中身(現行)

「アルコール度数」や「瓶詰め業者」が“ないように見える”主な理由

  1. 前面必須ではありません
    義務項目は「同一視野」でまとめる必要がありますが、背面にまとめても適法です。前ラベルだけ見て「ない」と思う事例があります。eur-lex
  2. 瓶詰め業者は“コード置換”が認められます
    2019/33 Art.46(5)により、加盟国コード(例:フランスの “EMB xxxxxA” など)で事業者名の代替が可能です。文字として “bottled by” が無くても、コード+国名表示で義務を満たす場合があります。eur-lex
  3. 発泡系は「bottler」表示が要りません
    発泡性(sparkling 等)では、義務は「生産者または販売者の表示」で足ります(1308/2013 Art.119(1)(e)、用語の具体は2019/33 Art.46(3)と附属書)。“bottled by” がなくても適法です。
  4. 瓶以外の容器では用語が変わります
    Bag-in-box 等では “packaged by(詰め替え業者)” 表示に置換します(2019/33 Art.46(2) 末段)。
  5. 輸出専用ラベルの“相手国優先”
    EU域外向けでは、相手国の法で要求される表示がEU規則と矛盾する場合、加盟国が例外を許可できます(2019/33 Art.42(2))。このため、EU式の “Alc. x % vol” や “bottled by” の形式が異なる/省略されるケースがあります(EU市場に戻す場合は不可)。eur-lex
  6. 経過措置の誤解
    2023-12-08以前に生産されたワインは、新の「原材料・栄養」要件は免除のまま在庫尽きるまで販売可能ですが、AASVや事業者表示の免除ではありません。

もし本当に見当たらない場合は?

ワインボトルには「前面」「背面」という法的な区別はあるのでしょうか。

回答(結論先)

例外(同一視野の外に出せるもの)

「フロント(前ラベル)/バック(裏ラベル)」という呼び方よりも、義務的表示事項をひとまとまりに示した面を「メインラベル」、それ以外を「サブラベル」と分けて説明したほうが分かりやすいのではないでしょうか。

はい。 説明や実務確認では、

と分けて述べるほうが分かりやすいです。

使うときの前提と注意

  1. EUの正式用語ではありません
    EU規則は「同一視野に義務項目をまとめる」ことだけを要求していて、「前面/背面」「メイン/サブ」という語は定義していません。したがって文章中で定義を明記して使うのが安全です。
  2. 位置は前でも背でもよい
    同一視野の要件さえ満たせば、メインラベルが背面にあって問題ありません。「フロント/バック」は商習慣上の呼称にすぎません。
  3. “全部がメインに載る”には例外あり
    アレルゲン表示、ロット番号、(輸入時の)輸入者表示、脱アルコール化ワインの期限などは同一視野の外でも可という運用があります。したがって「義務項目=すべてが常にメインに載る」と断定しないほうが正確です。
  4. 国別の制度語との整合
    • ドイツ語圏(とくにドイツやオーストリア)の実務では、Hauptetikett(主ラベル)という語が「義務項目をまとめたラベル」を指す便宜的な用語として使われることがあります。
    • ケベック:étiquette principale / principal display panelが制度上の主ラベルとして使われています。 EUの横断規則を説明するときも、便宜語としての「メイン/サブ」は使えますが、上記の例外と定義の明示を添えると誤解が避けられます。

推奨の書き方(例)

本稿では、EU規則の「同一視野」に義務項目が集約された面をメインラベル、それ以外の面をサブラベルと呼びます。なお、アレルゲン・ロット・輸入者等は例外としてメインラベル外でも可とされています。

この基準で整理すれば、「フロント/バック」という主観的な呼び分けに依存せず、法的実体(同一視野)に沿った説明になります。

あなたが「フロント/バック」と言っているのは、ワインボトルを商品棚に並べたときに正面になるのが「フロント(前ラベル)」という意味ですか。

「フロントラベル」「バックラベル」という言い方には法律上の定義はありません。これはあくまで流通やデザインの世界で使われてきた慣用表現です。一般に「フロント」とされるのは、棚に並べたときに消費者の目に入りやすい面で、ここには装飾を兼ねたラベルが置かれます。造り手がブランディングや視覚的な訴求を意図して設計する部分です。

一方で、ワイン法で本当に重要なのは「義務的表示事項を同一視野にまとめて載せるラベル」であり、これが実質的な「主ラベル(メインラベル)」に当たります。これが前面にあるか背面にあるかは規則上の問題ではなく、販売上の慣習やデザインの都合で「フロント」か「バック」かが決まるにすぎません。

容量は「義務的表示事項」に含まれないのですか。

容量(正味量/net quantity)はEUの義務的表示事項に含まれます。食品一般の枠組み(FIC規則 1169/2011)第9条1項(e)が、すべての包装食品について正味量の表示を義務づけています。

なぜ「ワインの義務項目一覧」に容量が載らないことがあるのか

配置のルール(どこに書くか)

容量そのものの規格(ボトルサイズ)

要点:容量表示は義務です(1169/2011)。「ワイン固有リスト」に出てこないのは別法(一般規則)側の義務だからで、実際のラベルでは品名・容量・アルコール度数を同一視野にまとめる必要があります。

カテゴリー名(Vin, Vin mousseux など)がラベルに表示されているのを見たことがありませんが、これは「義務的表示事項」に当たるのでしょうか。

結論

原則は義務です。 EU法では、ぶどう酒製品のカテゴリー名(Annex VII Part II に定義された wine / sparkling wine など)を表示することが義務的表示事項の一つです。eur-lex

ただし、よく見かけない主な理由(重要な例外)

補足(どんな語がカテゴリー名か)

実務での見え方

Indication of provenance を「原産の表示」と書かれていましたが、provenance は「原産地」を意味するのでしょうか。

回答(結論)

結論: provenance は一般語としては「来歴/産地」を指しますが、EUワイン表示での Indication of provenance は「(ぶどうの収穫とワイン化が行われた)国レベル等の産地表示」を意味する制度用語です。GI(PDO/PGI)の「原産地名」そのものとは別概念です。

用語の整理

PDO/PGI の「種別」と「名称」は、それぞれ何を指すのですか。

回答(結論)

根拠(逐条)

シンボル・略称の扱い(よくある誤解の整理)

用語(PDO/PGI)の省略が許される特例

まとめ

「protected designation of origin」や「protected geographical indication」の表記は「各国語訳で可」ではなく、原産国の言語が基本なのではありませんか。

結論

いいえ。

ワインのラベルで用いる「種別の用語」(= protected designation of origin / protected geographical indication)は、原産国の言語に限定されず、EUの公用語のいずれかで表示できます(=「各国語訳で可」)。一方で、GIの「名称」はその名称の保護が及ぶ言語形で表示する義務があります(通常は原産地域の言語形)。

根拠(条文)

実務での読み替え

「protected designation of origin」等の表示を伝統的用語で代替する場合の要件と運用について、詳しく説明してください。

結論(要点)

法的根拠(条文の整理)

  1. 伝統的用語の定義(2類型)Traditional terms | Ambrosia
    • 112(a):PDO/PGIに代えて用いられてきた用語(=eAmbrosiaの区分「In place of PDO/PGI」)。
    • 112(b):製法・熟成・品質・色・場所のタイプ等を示す用語(例:riserva / réserve など)。
  2. 表示義務と例外
    • 原則として、「PDO/PGI の語」+「名称」の表示が義務。
    • 例外:ラベルに 112(a) 型の伝統的用語を、当該PDO/PGIの製品規格(product specification)に従って表示したときは、「PDO/PGI の語」を省略可。
  3. 言語
    • 伝統的用語は、その保護言語(起源言語/商取引で用いられる言語)で登録・使用するのが原則。
  4. 既存用語の継続保護
    • 旧規則(EC)607/2009 で保護されていた伝統的用語は、2019/33の下でも保護が自動継続。eur-lex

代替に使える「伝統的用語」:代表例(112(a)/In place of PDO/PGI)

以下は「PDO/PGI の語」の代替として認められている登録例(公的レジスター)です。

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