ワインエキスパートに教わるワイン入門
EU規則で学ぶワインラベルの読み方
EUのワインラベルには「義務的表示事項」を必ず表示するはずですが、アルコール度数や瓶詰め業者の表示が見当たらないことがあります。これはなぜでしょうか。
1) EU法でいう「義務的表示事項」の中身(現行)
- カテゴリー名(Annex VIIに基づく)
- PDO/PGIの種別と名称(該当する場合)
- 実アルコール度数
- 原産の表示(Indication of provenance)
- 瓶詰め業者の表示(静置系)/生産者または販売者の表示(発泡系)
- 輸入者の表示(EU域内に「輸入」される場合)
- 発泡系の糖分表示
- 栄養表示・原材料表示(2023-12-08以降、eラベル可:栄養=エネルギーのみ紙面可/完全版は電子提供可、原材料=電子提供可。ただしアレルゲン表示は電子ラベルではなく、容器本体(ラベルを含む)に物理的な文字で表示)
- — 根拠:Reg. (EU) 1308/2013 Art.119(1)(a〜j)とその注記、電子提供の条件は同条(5)。
- — 体裁や同一視野配置のルール:2019/33 Art.40(1)、AASVの書式:Art.44。eur-lex
- — 新要件(原材料・栄養)は2023-12-08適用開始(eラベル可)。agriculture.ec.europa.eu
「アルコール度数」や「瓶詰め業者」が“ないように見える”主な理由
- 前面必須ではありません
- 義務項目は「同一視野」でまとめる必要がありますが、背面にまとめても適法です。前ラベルだけ見て「ない」と思う事例があります。eur-lex
- 瓶詰め業者は“コード置換”が認められます
- 2019/33 Art.46(5)により、加盟国コード(例:フランスの “EMB xxxxxA” など)で事業者名の代替が可能です。文字として “bottled by” が無くても、コード+国名表示で義務を満たす場合があります。eur-lex
- 発泡系は「bottler」表示が要りません
- 発泡性(sparkling 等)では、義務は「生産者または販売者の表示」で足ります(1308/2013 Art.119(1)(e)、用語の具体は2019/33 Art.46(3)と附属書)。“bottled by” がなくても適法です。
- 瓶以外の容器では用語が変わります
- Bag-in-box 等では “packaged by(詰め替え業者)” 表示に置換します(2019/33 Art.46(2) 末段)。
- 輸出専用ラベルの“相手国優先”
- EU域外向けでは、相手国の法で要求される表示がEU規則と矛盾する場合、加盟国が例外を許可できます(2019/33 Art.42(2))。このため、EU式の “Alc. x % vol” や “bottled by” の形式が異なる/省略されるケースがあります(EU市場に戻す場合は不可)。eur-lex
- 経過措置の誤解
- 2023-12-08以前に生産されたワインは、新の「原材料・栄養」要件は免除のまま在庫尽きるまで販売可能ですが、AASVや事業者表示の免除ではありません。
もし本当に見当たらない場合は?
- EU市場向けの現行ボトルで AASV や (該当する)事業者表示が完全に欠落していれば、不適合の可能性が高いです(販売不可の対象)。
- ただし実務上は、背面・小さな字・コード置換・用語差(発泡)・輸出専用体裁が原因で「見落とし」になっていることが大半です。
ワインボトルには「前面」「背面」という法的な区別はあるのでしょうか。
回答(結論先)
- EU法に「前面/背面」という法的区分はありません。
- ワインの表示は「容器上の同一視野(field of vision)」に義務項目をひとまとまりで示すことが原則です。eur-lex
- 同一視野=単一の視点から読める面の集合という一般食品ルールの定義が準用されます(FIC 規則 1169/2011)。「主視野(principal field of vision)」は一般食品に用語がありますが、ワイン固有規則は「同一視野」を求めます。
- したがって、実務で言う「フロント(前ラベル)/バック(裏ラベル)」は商習慣上の呼び分けに過ぎません。
義務項目を前だけにまとめても、後ろだけにまとめても適法です。分散して配置するのは原則NGです(下の例外を除く)。
例外(同一視野の外に出せるもの)
- アレルゲン表示(FIC 21条に基づくもの)とロット番号は、同一視野の外でも可。
- 輸入者表示と(脱アルコール化ワインの)期限表示については、1308/2013第119条1項に含まれるため原則は同一視野に置く建付けですが、欧州委員会のQ&Aは「読みやすさを確保する範囲であれば同一視野の外でも可」とする解釈を示しています(最終判断は各加盟国当局の運用によります)。eur-lex
- 原材料・栄養を電子提供(QR等)する場合は、リンク(QR)を他の義務項目と同一視野に置き、アレルゲン語句は容器上に出します(ただし同一視野でなくても可)。eur-lex
「フロント(前ラベル)/バック(裏ラベル)」という呼び方よりも、義務的表示事項をひとまとまりに示した面を「メインラベル」、それ以外を「サブラベル」と分けて説明したほうが分かりやすいのではないでしょうか。
はい。 説明や実務確認では、
- メインラベル=義務的表示事項を同一視野で集約した面、
- サブラベル=任意表示中心の面、
と分けて述べるほうが分かりやすいです。
使うときの前提と注意
- EUの正式用語ではありません
- EU規則は「同一視野に義務項目をまとめる」ことだけを要求していて、「前面/背面」「メイン/サブ」という語は定義していません。したがって文章中で定義を明記して使うのが安全です。
- 位置は前でも背でもよい
- 同一視野の要件さえ満たせば、メインラベルが背面にあって問題ありません。「フロント/バック」は商習慣上の呼称にすぎません。
- “全部がメインに載る”には例外あり
- アレルゲン表示、ロット番号、(輸入時の)輸入者表示、脱アルコール化ワインの期限などは同一視野の外でも可という運用があります。したがって「義務項目=すべてが常にメインに載る」と断定しないほうが正確です。
- 国別の制度語との整合
- ドイツ語圏(とくにドイツやオーストリア)の実務では、Hauptetikett(主ラベル)という語が「義務項目をまとめたラベル」を指す便宜的な用語として使われることがあります。
- ケベック:étiquette principale / principal display panelが制度上の主ラベルとして使われています。
EUの横断規則を説明するときも、便宜語としての「メイン/サブ」は使えますが、上記の例外と定義の明示を添えると誤解が避けられます。
推奨の書き方(例)
本稿では、EU規則の「同一視野」に義務項目が集約された面をメインラベル、それ以外の面をサブラベルと呼びます。なお、アレルゲン・ロット・輸入者等は例外としてメインラベル外でも可とされています。
この基準で整理すれば、「フロント/バック」という主観的な呼び分けに依存せず、法的実体(同一視野)に沿った説明になります。
あなたが「フロント/バック」と言っているのは、ワインボトルを商品棚に並べたときに正面になるのが「フロント(前ラベル)」という意味ですか。
「フロントラベル」「バックラベル」という言い方には法律上の定義はありません。これはあくまで流通やデザインの世界で使われてきた慣用表現です。一般に「フロント」とされるのは、棚に並べたときに消費者の目に入りやすい面で、ここには装飾を兼ねたラベルが置かれます。造り手がブランディングや視覚的な訴求を意図して設計する部分です。
一方で、ワイン法で本当に重要なのは「義務的表示事項を同一視野にまとめて載せるラベル」であり、これが実質的な「主ラベル(メインラベル)」に当たります。これが前面にあるか背面にあるかは規則上の問題ではなく、販売上の慣習やデザインの都合で「フロント」か「バック」かが決まるにすぎません。
容量は「義務的表示事項」に含まれないのですか。
容量(正味量/net quantity)はEUの義務的表示事項に含まれます。食品一般の枠組み(FIC規則 1169/2011)第9条1項(e)が、すべての包装食品について正味量の表示を義務づけています。
なぜ「ワインの義務項目一覧」に容量が載らないことがあるのか
- ワイン固有の義務項目は1308/2013 第119条(カテゴリー名、PDO/PGI、実アルコール度数、原産表示、瓶詰め業者等)で定められます。この“ワイン固有リスト”には容量は列挙されていません(容量は食品一般の義務として別法〔1169/2011〕でカバー)。
- そのため、解説や一覧表がワイン固有リストだけを抜き出している場合は、容量が抜けて見えることがあります。実務上は両方(一般+ワイン固有)を同時に満たす必要があります。
配置のルール(どこに書くか)
- FIC 第13条5項:品名(a)・正味量(e)・>1.2%vol飲料のアルコール度数(k) は同一視野に表示する義務があります。ワインは飲料>1.2%volに該当するため、容量は品名とアルコール度数と同じ視野に置きます。
- ワイン固有規則 2019/33 第40条1項:第119条のワイン固有の義務項目は同一視野にまとめます。アルコール度数は固有リストにも入っているため、結果として容量も他のワイン義務項目と同じ視野に来るのが通常運用になります。eur-lex
容量そのものの規格(ボトルサイズ)
- ワインに使える標準容量は2007/45/EC 付属書で規定(例:静置=100/187/250/375/500/750/1000/1500 mL、発泡=125/200/375/750/1500 mL など)。eur-lex
要点:容量表示は義務です(1169/2011)。「ワイン固有リスト」に出てこないのは別法(一般規則)側の義務だからで、実際のラベルでは品名・容量・アルコール度数を同一視野にまとめる必要があります。
カテゴリー名(Vin, Vin mousseux など)がラベルに表示されているのを見たことがありませんが、これは「義務的表示事項」に当たるのでしょうか。
結論
原則は義務です。 EU法では、ぶどう酒製品のカテゴリー名(Annex VII Part II に定義された wine / sparkling wine など)を表示することが義務的表示事項の一つです。eur-lex
ただし、よく見かけない主な理由(重要な例外)
- PDO/PGI を表示しているワインは、カテゴリー名の省略が認められます。
- Reg. 1308/2013 Art.119(2) により、(脱アルコール化品を除き)PDO/PGI 名をラベルに含む場合は、カテゴリー名の記載を省略可。そのため、原産地名称付きワインでは、Vin や Vin mousseux が書かれていなくても適法です。
補足(どんな語がカテゴリー名か)
- カテゴリーは Annex VII Part II に列挙されています(例:wine, sparkling wine, liqueur wine, semi-sparkling wine など)。カテゴリーを表示する義務は Art.119(1)(a) に対応しています。
実務での見え方
- PDO/PGI ワイン:上記のとおり省略可能なので、カテゴリー語を見かけないのが普通です(例:Champagne、Chablis などは PDO 表示で足りる)。
- PDO/PGI でないワイン:カテゴリー表示が必要です。
- 脱アルコール化ワイン:省略不可(Art.119(2)但書)。GI を表示していてもカテゴリー名は要表示です。
Indication of provenance を「原産の表示」と書かれていましたが、provenance は「原産地」を意味するのでしょうか。
回答(結論)
結論: provenance は一般語としては「来歴/産地」を指しますが、EUワイン表示での Indication of provenance は「(ぶどうの収穫とワイン化が行われた)国レベル等の産地表示」を意味する制度用語です。GI(PDO/PGI)の「原産地名」そのものとは別概念です。
- 法的には Reg. 1308/2013 Art.119(1)(d) が義務的表示事項として “an indication of provenance” を要求しています。
- その書き方は Reg. 2019/33 Art.45 が具体化しており、
- 「Wine of [Member State] / Produced in [Member State] / Product of [Member State]」
- 「European Union wine」「Blend from [countries]」
- 「Wine obtained in [X] from grapes harvested in [Y]」
など、加盟国名・EU・第三国名を用いる形式で表示します(発泡等の例外書式も規定)。eur-lex
用語の整理
- indication of provenance:産地(国等)の表示/プロヴェナンス表示
- 最小スコープは国(加盟国)。混醸や越境製造時の書式も上記のとおり国名やEUで表します。
- country of origin / place of provenance(FIC 1169/2011):原産国/原産地(の場所)という一般食品の枠組みで、place of provenance は「国以外の来歴場所」を指す定義があります(=「原産地名」とは限らない)。
- PDO/PGI(原産地呼称/地理的表示):GIの名称を指し、Art.119(1)(b) で別途義務的に表示(用語+名称)します。プロヴェナンス表示(国等)とは別の項目です。
PDO/PGI の「種別」と「名称」は、それぞれ何を指すのですか。
回答(結論)
- 種別=保護制度の区分。
- ラベル上で “protected designation of origin(PDO)” か “protected geographical indication(PGI)” の用語(各国語訳で可)を表示することを指します。これは義務的表示事項として規定されています。
- 名称=その PDO/PGI の登録固有名。
- 例:Bordeaux, Champagne, Rioja, Toscana など。これも義務的表示事項として、上の「種別」の用語と併せて表示します。
根拠(逐条)
- Reg. 1308/2013, Art.119(1)(b)
- ワインに PDO/PGI が付く場合、ラベルは
(i) 「protected designation of origin」または「protected geographical indication」という用語(= 種別)と、
(ii) その名称
を含むこと、と明記。
- 表示言語(Reg. 1308/2013, Art.121)
- 義務事項はEUの公用語で表示可。名称は、その名称の保護が及ぶ言語形で表示します。
シンボル・略称の扱い(よくある誤解の整理)
- EUシンボル(PDO/PGIロゴ)=任意(オプション)。付けても良いが、必須ではない。
- “PDO/PGI” 略称=任意の追加情報。略称だけでは義務を満たしません(義務は上記の用語+名称)。
用語(PDO/PGI)の省略が許される特例
- 伝統的用語で代替する場合(例:DOC/DOCG 等)→ 「protected designation of origin 等」の用語表示は省略可(Reg. 1308/2013, Art.119(3)(a))。
- 特定PDOの歴史的特例(Reg. 2019/33, Art.23)→ Champagne, Cava, Port/Porto などは「protected designation of origin」の用語を省略可。
まとめ
- 種別=PDO か PGI という制度区分の用語。
- 名称=その PDO/PGI の登録名。
- ロゴ・略称は任意で、用語+名称が基本義務。伝統的用語や一部PDOに省略特例あり。
「protected designation of origin」や「protected geographical indication」の表記は「各国語訳で可」ではなく、原産国の言語が基本なのではありませんか。
結論
いいえ。
ワインのラベルで用いる「種別の用語」(= protected designation of origin / protected geographical indication)は、原産国の言語に限定されず、EUの公用語のいずれかで表示できます(=「各国語訳で可」)。一方で、GIの「名称」はその名称の保護が及ぶ言語形で表示する義務があります(通常は原産地域の言語形)。
根拠(条文)
- Reg. 1308/2013 Art.121(1)
- 義務・任意の表示事項が言葉で示されるときは、「EUの公用語の一つ以上」で表示する、と規定。=「種別の用語」は英語以外(仏語AOP表記、独語*g.U.*の語句など)でも可。eur-lex
- 同 Art.121(2)
- PDO/PGIの「名称」は、その保護が及ぶ言語(登録言語形)で表示しなければならない。非ラテン文字の名称は、EUの公用語を併記してもよい。
- (一般食品の横断規則)Reg. 1169/2011 Art.15
- 販売国の消費者が理解しやすい言語で表示すべきとし、各加盟国が自国内で用いる言語を定め得る。=実務上、販売先の国の言語要件も満たす必要があります。
実務での読み替え
- 種別(PDO/PGI の用語):
- 「原産国の言語が基本」という縛りはありません。たとえばドイツで販売する仏PDOワインに、独語の用語(geschützte Ursprungsbezeichnung)を使っても規則上は適法です(※販売国の言語要件との整合を取るため、現地語を採ることが多い)。
- 名称(Bordeaux/Rioja/Toscana 等):
- 登録どおりの言語形で表示(=通常は原産地域の言語)。非ラテン文字(例:ギリシャ語等)は、EU公用語の併記可。
「protected designation of origin」等の表示を伝統的用語で代替する場合の要件と運用について、詳しく説明してください。
結論(要点)
- 原則:PDO/PGIワインのラベルには
①「protected designation of origin(PDO)」または「protected geographical indication(PGI)」という語と、
②その名称(例:Bordeaux, Rioja など)
を表示する義務があります。eur-lex
- 例外:その代わりに、Article 112(a) 型の「伝統的用語(Traditional term)」をラベルに表示すれば、①の「PDO/PGI の語」は省略可能です(名称②は引き続き必要)。
法的根拠(条文の整理)
- 伝統的用語の定義(2類型)Traditional terms | Ambrosia
- 112(a):PDO/PGIに代えて用いられてきた用語(=eAmbrosiaの区分「In place of PDO/PGI」)。
- 112(b):製法・熟成・品質・色・場所のタイプ等を示す用語(例:riserva / réserve など)。
- 表示義務と例外
- 原則として、「PDO/PGI の語」+「名称」の表示が義務。
- 例外:ラベルに 112(a) 型の伝統的用語を、当該PDO/PGIの製品規格(product specification)に従って表示したときは、「PDO/PGI の語」を省略可。
- 言語
- 伝統的用語は、その保護言語(起源言語/商取引で用いられる言語)で登録・使用するのが原則。
- 既存用語の継続保護
- 旧規則(EC)607/2009 で保護されていた伝統的用語は、2019/33の下でも保護が自動継続。eur-lex
代替に使える「伝統的用語」:代表例(112(a)/In place of PDO/PGI)
以下は「PDO/PGI の語」の代替として認められている登録例(公的レジスター)です。
- イタリア:Denominazione di Origine Controllata / … e Garantita(PDO の代替)。
- ドイツ、オーストリア:Qualitätswein / Prädikatswein は対応する Spätlese, Auslese 等の称号(PDO の代替)。
- フランス:Appellation d'Origine Contrôlée(PDO の代替)。
関連ページ
- posted : 2025-08-30, update : 2025-11-26
- Author : katabami (Editor) / ChatGPT (Writing Assistant)
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