ワインエキスパートに教わるワイン入門

機械収穫を考える:技術・品質・制度から

手摘みで収穫されたぶどうも破砕や圧搾の前に除梗されることが多くあります。そう考えると、機械収穫は「畑で行われる除梗」とみなせるため、手摘みと機械収穫の間に差はないのではないでしょうか。

「機械収穫=畑での除梗」という見方の妥当性

一見すると、

という構造上の類似点があります。したがって「機械収穫=畑での除梗」と表現するのは、比喩としては理解できます。

しかし、実際の除梗と機械収穫には重要な違いがあります。

機械収穫と除梗の違い

現場での評価

まとめ

アイスワイン用ぶどうの収穫においては、機械収穫にほとんどデメリットはないのではないでしょうか。

結論から言うと、アイスワインの条件下では機械収穫のデメリットは通常のワインより大幅に小さいといえます。ただし「まったく無い」とまでは言い切れず、いくつかの注意点が残ります。

デメリットが小さい理由

残る可能性のあるデメリット

まとめ

ドイツではアイスヴァイン用のぶどうだけでなく、カビネット、シュペートレーゼ、アウスレーゼでも機械収穫が許されていますが、収穫前に手作業で未熟果や腐敗果を除去しているのでしょうか。また、その実施は義務化されていますか。

回答(先に結論)

実務上の3パターン(とくにAuslese)

まとめ

南仏で多く見られるゴブレ仕立ては機械収穫に向かないと思いますが、機械収穫はワイヤーを用いた整枝が前提なのでしょうか。機械収穫を前提に開発された仕立て・整枝方式はありますか。

要点(結論)

用語の整理:ブドウ栽培における「トレリス(trellis)」とは

ゴブレが機械収穫に不向きな主因(なぜ前提が“トレリス”なのか)

例外的に、背丈が高く整えられたゴブレや支柱を併用するゴブレ・パリッセでは、部分的に機械作業適合性が出ますが、標準設計としては“トレリス前提”が基本と考えるのが実務的です。

南仏の実務:ゴブレをどう機械化へ寄せているか

機械収穫に適合しやすい仕立て・整枝

設計パラメータ(“機械に合わせる”ための勘所)

品種・土壌・機種で最適値は変わります。以下は考え方の軸です。

運用面の要点(収穫機の性能を引き出す)

ボジョレーでは機械収穫は禁じられていませんが、機械収穫されたブドウでマセラシオン・カルボニックの効果は得られるのでしょうか。また、その効果が完全でなくとも、機械収穫でヌーヴォー向けワインを造る生産者は存在しますか。さらに、一般的な赤ワインの醸造法でヌーヴォーを造る場合には、機械収穫でも問題ないのでしょうか。

機械収穫とマセラシオン・カルボニック(MC)の効果

機械収穫によるヌーヴォー生産の実例

一般的な赤ワイン仕込みでヌーヴォーを造る場合

ボルドーでは機械収穫が広く普及していますが、クリュ・クラッセは手摘みを基本としているのでしょうか。
手摘みは純粋に品質向上のためなのか、それとも「手摘み=高品質」というマーケティング上の効果も重視しているのでしょうか。

ボルドーにおける機械収穫の位置づけ

CIVB(ボルドーワイン委員会)の最新発言として、ボルドーの収穫の約80%が機械と紹介されています。コスト・労務確保・夜間収穫など運用面の利点が背景です。

クリュ・クラッセは本当に手摘みなのか

「品質」か「宣伝」か—判断軸

品質面の合理性
  • 房/粒単位での選別:病果・未熟果・MOGの除去精度。特にグラン・ヴァンは収穫から圧搾/発酵までの“ダメージ・酸化・雑味リスク”の最小化が命題。
  • ブランド一貫性:毎年の熟度ばらつき・区画差に対して人手での機動的な拾い分けがしやすい。
ただし、技術進化でギャップは縮小
  • 最新収穫機+光学/機械選果の組み合わせで、機械収穫でも高品質が得られるとのレビュー・試験報告。
  • IFV(仏ブドウ・ワイン研究所)×ジロンド農会の比較試験でも、自動化選果の導入が不純物除去性能を大幅改善。
    → ミドル〜ボルドー汎用レンジでは、機械収穫は品質・コスト面で合理的な選択肢。
マーケティング面
  • 一流シャトーが自社サイトで「手摘み」を明記するのは、品質哲学の表明であり同時に強いシグナル効果(差別化・価格プレミアムの裏付け)でもあります。
  • 市場の認知も「手摘み=上質」の文脈が根強く、トップ銘柄ほど“手摘み訴求”を維持する傾向。

フランスでは地域ごとの機械収穫の比率はどうなっていますか。また、世界の主なワイン生産国の中で、機械収穫が最も普及している国はどこですか。

フランスの機械収穫:全国と地域差

全国概況
近年のフランス全体では、手摘みが30–40%=裏返すと機械収穫が約60–70%と報じられています(2023年記事)。leprogres.fr
地域ごとのスナップショット(代表例)
  • シャンパーニュ:全面的に手摘みが義務(機械収穫は不可)。
  • シャブリ(プルミエ/グラン・クリュも含め):地形が比較的穏やかで、機械収穫が広く普及。公的サイトも「適切に調整された自走式収穫機で、迅速かつ良質の収穫が可能」と説明しています。業界解説では機械収穫比率が9割前後とされる言及もあります(文献を引く解説記事経由)。chablis.fr, wikipedia
  • ラングドック:約9割が機械収穫と地域メディアが伝えています(長年の大規模・平坦区画中心の栽培構造)。

まとめると、「規則で手摘み必須」(例:シャンパーニュ、クレマン系など)や急斜面・段畑では手摘みが残り、平坦・大規模・コルドン/VSP系の畑が多い地域では機械収穫比率が高くなる、という地理・経済・規則の3要因で地域差が生じています。

世界で機械収穫が最も普及している国

トップクラスは以下の“ニュー・ワールド”勢です(いずれも公的・準公的機関の資料に基づく)。

よって、機械収穫の普及率は「豪州・米国・NZ」が世界的に最上位クラス。いずれも広い平地・整然としたトレリス整枝・人手不足と人件費といった条件が重なり、機械化が合理的に機能しています。

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