ワインエキスパートに教わるワイン入門

ワイン教育(WSETなど)における「Training(仕立て)+ Pruning(剪定)」の関係

WSETでは栽培に関する専門用語も英語で学ぶと思いますが、Guyot や Cordon のようなフランス語由来の用語は、教材内でどのような位置づけで整理されているのでしょうか。

WSETでは、仕立て・剪定の用語混在を「英語の機能分類(上位カテゴリ)」で整理し、その上に Guyot / Cordon のようなフランス語由来の“方式名(固有名・借用語)”を代表例として載せる、という折り合いの付け方をしています。

骨格は英語のカテゴリで固定

WSET Level 3 の学習要項では、栽培の「Managing the vine」として

という形で、まず英語の分類語で整理されています。

Guyot / Cordon は「カテゴリに載る方式名(ラベル)」

Guyot:
一般的に「cane pruning(= cane replacement / replacement cane)」側に属する代表的方式名として扱われます(Single/Double Guyotなど)。
なお、WSETの体系では、Guyot は明確に「head-trained system」に分類されます。これは、Guyot が「水平の永久腕(permanent cordon)を作らず、結果母枝(fruiting cane)を更新していく」という構造上の定義に基づいているためです。
Cordon:
語そのものが「水平に延ばした永久木(腕)」を指すため、主に cordon training(仕立て)の語彙として機能します。
WSETでは、Cordon-trained(仕立て)は典型的には spur pruning と組み合わされます(ただし、cordon系でもcane pruningを用いる例外があり、後述します)。

いちばん誤解が少ない書き方(WSET学習向け)

ノートや答案では、

のように「Training(仕立て)+ Pruning(剪定)」の英語カテゴリをセットにして整理すると、言語由来の混在による混乱が起きにくくなります。

ワイン教育(WSETなど)において「Training」という用語は、「剪定によって樹形を形作ること」そのものではなく、head/cordon のような仕立て様式(樹形・構造)を指しているのでしょうか。

はい、WSETなどのワイン教育でいう Training は「剪定そのもの」ではなく、主として head / cordon のような「仕立て様式(樹の骨格・空間配置のタイプ/仕立て体系)」を指すという理解でよいです。

WSET Level 3 Award in Wines の公式 Specification(学習要項)では、Managing the vine の中で Training(head, cordon) と Pruning(spur, replacement cane) を並列に示しており、両者を学習上の別カテゴリとして整理しています。

ただし、Training を「出来上がった形(完成形)だけの名称」と狭く捉えるより、次のように捉えるのが誤解が少ないです。

WSET文脈での Training の中身

Training はブドウ樹の果実を付ける木部(結果母枝や結果部位)や永久木(幹・腕=cordon等)を、支柱・ワイヤー等に沿って空間的に配置し、望む構造(仕立て体系)にする/維持することを含む概念です。

その上で、教育上は 「training のタイプ名」= head / cordon のように、仕立て体系(樹形・骨格)の分類ラベルとして提示されます。

Pruning との関係(切り分けのしかた)

Pruning(剪定)は年1回の休眠期剪定を中心に「木部を除去して芽数や収量を調整し、同時に Training system に合う樹形を維持する」行為として説明されます。

つまり Training(骨格・配置の体系) と Pruning(毎年の除去と更新の方式)は別概念ですが、現場では相互依存で、教材でも「セットで理解する」形になりやすい、という位置づけです。

整理すると、WSETの Training は「剪定で形作る行為そのもの」ではなく、head/cordon のような仕立て体系(樹の骨格・配置タイプ)を指す用語で、実務的には「その体系を作り維持する一連の管理」まで含む、と考えるのがいちばん整合的です。

ワイン教育(WSETなど)で用いられる「Training(仕立て)」と「Pruning(剪定)」の組み合わせ例を示してください。

「Training」と「Pruning」の組み合わせだけで理解しようとすると、かえって混乱を招くことがあります。

混乱の原因は、「樹の骨格(Training)」と「切り方(Pruning)」に加えて、「支柱・ワイヤー(trellising:trellised/untrellised)」や「樹冠管理(canopy management)」という別レイヤーが、方式名(例:Guyot、VSP、Scott Henry など)の説明の中で一緒に語られやすいためです。

そこで、まずは「基本の3パターン」を固定し、その上に応用(trellis/canopy)を重ねる形で整理すると理解しやすくなります。

基本3パターン

まずはここを完璧にするのが最優先です。

仕立て(Training) 剪定(Pruning) 代表例(方式名) WSET的理解のポイント
Head Replacement cane(= cane pruning) Guyot(ギヨー) 「水平な永久腕(cordon)を持たない head-trained」が骨格。
幹(trunk)は永久構造として残り、毎年 cane と更新用 spur を残します(Single/Double Guyot)。
Head Spur Bush vine / Gobelet 短い幹+短梢(spurs)で更新。支柱・ワイヤーを使わない(または単杭)ことが多いです。
Cordon Spur (Spur-pruned)Cordon 水平な永久腕(cordon)を作り、そこから出る結果枝候補を短梢(1〜3芽など)に切り戻して繰り返します。

※ここでの要点は、“Training=骨格(head / cordon)” と “Pruning=更新単位(spur / cane)” をいったん分離して覚えることです。

応用:キャノピー(樹冠)の分割・「支柱の組み方」

基本ができるようになったら、次は「空間をどう使うか(trellis/canopy)」を上に重ねます。

方式名 骨格+剪定(基本形) 特徴(キャノピー管理/支柱)
VSP (Vertical Shoot Positioning) どれでも可(例:Guyot でも Cordon でも) VSP自体は「シュートを垂直に整列させる trellis/樹冠配置」。同じVSPでも cane-pruned / spur-pruned の両方があり得ます。
Scott Henry (よくある形)cane pruning(例:4 canes)※spur もあり 垂直分割(上向き+下向き)。解説では「4本の cane に剪定して樹冠を分割」し、spur pruning も可能とされています。
Smart-Dyson (多くの例で)Cordon + Spur 垂直分割。果実帯は1つだが樹冠を上下に分けると整理されます。実務では cordon を spur で更新しつつ上下に振り分ける代表例として説明されます。
Lyre / GDC (Geneva Double Curtain) 固定しない方が安全 水平分割(Lyre)/水平カーテン(GDC)。LyreやGDCは水平分割の典型とされ、GDCは fruiting canes にも cordons にもでき、spur pruning も可能と整理されます。

その他の「例外」として覚えると楽なケース

長梢(ちょうしょう)/短梢(たんしょう)という用語との関係も含めて、Cane pruning と Spur pruning を具体的に説明してください。
あわせて、よく使われる「トレリス(Trellis)」という用語と、支柱・ワイヤーとの関係も説明してください。

用語の土台

日本語との対応
  • 長梢=長く残した Cane(1年枝)
  • 短梢=短く切り戻した Spur(短い Cane)

Cane pruning(長梢剪定)

当年の結実用に Fruiting canes(長く残す1年枝)を選び、同時に翌年更新用の Renewal spur(更新短梢)を近くに残して回す剪定です。「更新短梢を1〜2芽で残す」ことを明示する資料があります。

Cane pruning は Head training と併用されることが多く、樹頭から伸ばした前年枝(cane)を、結果枝を支持する fruting wire 上に水平に誘引することを特徴とします。

芽数(長梢の長さ)は“設計値”で、たとえば OSU Extension は1本あたり約15芽、更新短梢は1〜2芽という具体例を示しています(あくまで一例)。oregonstate.edu

Spur pruning(短梢剪定)

前年の Shoots(→1年枝 Canes)を Spurs(短い Cane)まで切り戻して残す剪定です。

また、Cordon training と組み合わせられるのが一般的で、Cordon 上に Spurs が並ぶ、と説明されます。

芽数は地域・品種・樹勢で変わりますが、定義説明では Spur を「1〜3芽」とする例(=短い Cane の代表的イメージ)があります。winemakermag.com

ただし別資料では「4芽以下」のように幅を持たせる説明もあり、固定値として覚えない方が安全です。ucanr.edu

「トレリス(trellis)」と支柱・ワイヤーの関係

Texas A&M の資料は、トレリスを posts / wires / anchors / brackets などの“物理的ハードウェア”として定義し、これと区別して Training を“樹体各部位を配置・管理して構造を作ること”と説明しています。aggie-horticulture

したがって日本語では、
  • 支柱・ワイヤー:部材(posts / wires / anchors 等)
  • トレリス(trellis system):それら部材で構成される 支持構造(設計を含む)
と置くのが最も誤解が少ないです。

この区別を保つと、VSP(Vertical Shoot Positioning)も整理しやすくなります。VSP は「トレリス(支柱・ワイヤー構造)」という道具の上で、新梢(Shoot)を垂直方向に整列させる樹冠(キャノピー)の配置・管理のやり方を指します。

したがってWSETの理解としては、VSP は Training(head/cordon などの骨格)そのものではなく、それと直交する trellised/canopy management 側の要素として扱うのが、混同が起きにくいです。

ゴブレ(Gobelet)は複数の短い腕を持っていますが、それでも「head-trained」に分類されるのでしょうか。

はい、ゴブレ(gobelet)は複数の短い腕(arms)を持っていても、一般には head-trained に分類して問題ありません。

なぜ「腕があるのに head-trained」なのか

分類の境界は「腕がある/ない」ではなく、その腕が Cordon(ワイヤーに沿って水平に保持される“永久腕”)かどうかです。

これは意図的な Training ですが、通常は「ワイヤーに沿って水平に延ばして保持する Cordon」を作る体系ではありません。したがって head-trained に入れるのが整理として自然です。

ゴブレの「腕」は意図的に設計された Head training の重要な構成要素です。しかし、「水平ではない(放射状)」「ワイヤーに依存しない(自立的)」という2点において Cordon とは本質的に異なるため、分類上は head-trained に置くのが最も整合的であり、誤解が少ない整理となります。

日本の「棚仕立て」は Pergola(ペルゴラ)に含まれるのでしょうか。
また、「国・地域で呼称や細部が異なる」とのことですが、代表的な例を挙げてください。

日本の「棚仕立て」は、広い意味では pergola に含めて整理してよいです。

日本の「棚仕立て」は、支柱・架線で作った“水平の棚”に枝梢を誘引して上部に樹冠(キャノピー)を展開させる体系として説明されます。たとえば農業技術事典(NAROPEDIA)は、枝梢を支柱と架線で作られた水平棚に誘引固定する「平棚栽培」を一般的と説明しています。

また山梨県の資料でも、甲州式ブドウ棚が「コンクリート製の杭とステンレス線を用いて、地面と平行に設置」されることが示されています。

一方、国際的な文脈では、樹冠が頭上(overhead)に来る棚状の体系を pergola(あるいは overhead arbour)として扱う例が多く、OIVの文書でも overhead arbour を “Parral or Pergola” として示しています。

この「頭上棚(overhead)型」という“形の核”が一致するため、棚仕立て=(広義の)pergola系として整理するのが実務的に誤解が少ないです。

ただし pergola は文献や現場で

の両方で使われます。

たとえばイタリアでは pergola 系が、傾斜した“屋根”(トレンティーノ等)や水平型など複数の形を含む、と説明されています。

このため、日本の「棚仕立て」を Pergola Trentina そのものと同一視するのではなく、「頭上棚(overhead arbour)という上位概念」で結び付けるのが安全です。

国・地域での呼称の代表例

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