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2021年ドイツワイン法改正

2021年1月27日のドイツワイン法改正を説明してください。

2021年1月27日 ドイツワイン法改正の背景と目的

EU法との整合性
2009年以降、EUでは「PDO(g.U.)」および「PGI(g.g.A.)」を柱とする地理的原産地保護制度が導入されました。
この制度は、品質の等級を定めるものではなく、特定の産地(Terroir)とその品質特性を法的に結びつける仕組みです。
一方、ドイツではこれとは独立して、ぶどうの糖度を基準とする品質等級制度(Qualitätswein/Prädikatswein)が長く運用されており、EUの地理的原産地制度とは目的も構造も根本的に異なっています。
そのため、EU法の施行後もドイツは自国の等級体系を維持しつつ、「Mosel」「Rheingau」などの g.U. 名称(地理的原産地名)を表示の中心に据えながらも、伝統的用語「Qualitätswein」「Prädikatswein」を品質等級として併記する形で運用を続けてきました。
2021年の法改正は、こうした国内慣行をEU規則で既に認められている仕組み(伝統的用語を「g.U.」表記の代替として使用できるという規定)に沿って、国内法体系の中でも明確に位置づけることを目的としたものです。
テロワール重視と明瞭な産地構造の要請
国内外での市場ニーズに対応するため、「地域性(Terroir)」を明確に示すことが重視されるようになりました。
これにより、地理的表示(地域・村・畑など)と品質カテゴリー(Qualitätswein/Prädikatsweinなど)の関係を、法制度として整理する必要が生じました。

改正の全体像(概要)

区分 改正前 改正後(2021年〜段階的施行)
上級ワインの表示体系 Qualitätswein・Prädikatswein = g.U.(事実上) g.U. と伝統的用語を制度的に分離
法構造 「Qualitätswein」ベースのワイン法条文群 § 1aを新設し、「g.U.」表示のみでも法律が準用されることを明記
地理階層表示 表示は任意。VDPなどが独自に運用 Gebietswein/Ortswein/Einzellagenwein の階層を法定化。2026年以降、地名を表示する場合には新要件を満たすことが義務に。
独自呼称(GGなど) VDP等の自主ルール 一部の呼称が国内法上で明文化。品質要件の統一へ

§ 1aの新設(最重要ポイント)

§ 1a Geltungsbestimmung

(1) Vorschriften dieses Gesetzes oder auf Grund von Ermächtigungen dieses Gesetzes erlassener Rechtsverordnungen für Weine, die mit der Angabe „Qualitätswein“ bezeichnet werden, gelten vorbehaltlich abweichender Vorschriften auch für Weine mit geschützter Ursprungsbezeichnung ohne diese Bezeichnung.

(2) Vorschriften dieses Gesetzes oder auf Grund von Ermächtigungen dieses Gesetzes erlassener Rechtsverordnungen für Weine, die mit der Angabe „Landwein“ bezeichnet werden, gelten vorbehaltlich abweichender Vorschriften auch für Weine mit geschützter geografischer Angabe ohne diese Bezeichnung.

ChatGPT訳 : (1) この法律およびその委任に基づく政令により、「Qualitätswein」として指定されたワインに関して定められた諸規定は、仕様書などに異なる定めがある場合を除き、「Qualitätswein」という表示がなくても、保護原産地呼称(g.U.)に該当するワインにも適用されます。

意義:
  • 法体系を「g.U.中心」に読み替える橋渡し。
  • EU法への完全対応を可能にし、将来的に“g.U.”単独表示のワインにも同一の法的根拠を適用できるようにした。
  • 表示の有無にかかわらず、保護原産地呼称(g.U.)付きワインには「Qualitätswein」と同等の品質要件・生産条件が及ぶことを明確化。

地理的階層表示(Gebietswein/Ortswein/Einzellagenwein)は義務なのですか?

ご指摘のとおり、義務ではありません。
2021年改正で導入されたのは「地理的階層の法定化」であり、これをラベルに表示するかどうかは生産者の任意です。

ただし、2026年ヴィンテージ以降は、地名を表示する場合に限り、対応する階層の製造条件(収量、最低糖度、販売時期など)を満たすことが義務になります。

整理:
  • 「表示を行うかどうか」→ 任意
  • 「表示した場合の条件」→ 義務
  • 「Mosel」だけの表示も引き続き可能
したがって、制度は“強制ではなく明確化”が目的です。

改正前から、地域・村・単一畑名を表示することはできたのでは?

そのとおりです。改正前も地名表示(地域名・村名・単一畑名)は Weinverordnung に基づき認められており、Qualitätswein/Prädikatsweinとしての一般的な品質要件(収量・最低アルコール度など)は存在していました。
ただし、村名や単一畑名の表示に対応した追加の法定要件はなく、どの地名を表示しても同一カテゴリーとして扱われていました。

2021年以降、初めてWeinverordnung(ワイン規則)により、これらの地名ごとに明確な基準が定められました。

時期 状況 制度上の特徴
改正前 慣例として自由に使用可能 Anbaugebiet レベルの一般的な Qualitätswein/Prädikatswein 要件のみ(村名・単一畑名に対する追加要件はなし)
改正後 法定階層として認定 収量・糖度・販売時期などの要件あり
2026年以降 表示する場合は要件遵守が義務 地名と品質を一致させる仕組み

geschützte Ursprungsbezeichnung と Qualitätswein などの伝統的用語は併記できますか?

条文上は、「geschützte Ursprungsbezeichnung」という語や略号 g.U. をラベルに書いてはならないと定めた直接の禁止条項はありません。
しかし、EU 規則およびドイツの製品仕様書の構造からみると、Qualitätswein/Prädikatswein などの伝統的用語が “geschützte Ursprungsbezeichnung” を置き換える設計になっており、両方を併記することを前提とした運用ではないと解釈するのが妥当です(判例がないため、この点は仮説段階の解釈です)。

EU規則の立場

EU規則(Reg. (EU) No 1308/2013, Art.119(1)(b)、(3)(a) および Art.112)は次のように定めています:

つまり、制度の趣旨は「Qualitätswein/Prädikatswein などの伝統的用語」または「geschützte Ursprungsbezeichnung」のいずれか一方を表示すれば足りる、という点にあり、ドイツの現行制度・製品仕様書を前提にすると、両者を並べて表示することは想定されていないと考えるのが自然です(併記が争点になった判例はなく、ここも仮説段階の整理です)。

ドイツ法の扱い

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