ワインエキスパートに教わるワイン入門
ボジョレー・ヌーヴォー誕生
その年に収穫されたぶどうで造られる AOC ワインの販売日に関して調べてください。
AOCワインの販売日規制の歴史的変遷(1935〜1951年)
- AOC 制度発足直後(1935〜1937年)
- 1935年7月30日 デクレ=ロワ「Statut viticole」
- 1919年法以来の appellation d’origine 制度を引き継ぎつつ、ぶどう・ワイン市場の統制枠組み(いわゆる「Statut viticole」)が本格的に整備される。
- このデクレ=ロワにより、ぶどう・ワイン分野の原産地呼称を所管する専門機関 CNAO(Comité national des appellations d’origine、のちの INAO)が創設され、appellation d’origine contrôlée(AOC)カテゴリーが明確に位置づけられる。
- 条文中の第8条に、「ワインが原価を大きく下回る価格で取引される場合、政府はデクレにより『段階放出(échelonnement des sorties)』を定めうる」とする規定が置かれ、後の放出統制の法的根拠が与えられる。
- 1936年5月15日政令(Arbois や Tavel など初期6産地)
- 各 AOC について、地理範囲・使用品種・最低アルコール度数などの技術的条件のみを規定。
- この段階では、「販売開始日」や「証票」に関する一般的な条文は置かれておらず、各生産者は原則として任意のタイミングで販売を開始できる状態にあった。
- 全国レベルでの段階放出スケジュールの導入(1938年ヴィンテージ)
- 1938年の豊作と段階放出
- 1938年の豊作により供給過剰と価格下落が懸念されたため、政府は1938年7月〜8月の一連のデクレによって、1938年収穫ワインの「段階放出」を全国的に定める方針を打ち出す。
- これにより、「収穫直後から一気に市場へ放出する」のではなく、キャンペーン期間中に何回かのトランシュ(分割枠)に分けて市場放出量を管理するという考え方が具体化する。
- 「色分けされた移動証明書(titre de mouvement de couleur spéciale)」の位置づけ
- 1935年7月30日デクレ=ロワ第21条と、これを補完する1938年1月13日法により、特定の AOC について「色分けされた titre de mouvement(移動証明書)」を与えること、
さらに、大臣がデクレで「この証票がなければそのAOC名を名乗るワインは流通できない」と義務化できることが規定される。
- 1938年時点では、こうした移動証明書は、あくまで「特定AOCに対して個別のデクレで義務化される仕組み」が整った段階であり、すべての AOC ワインに一律で必須だったわけではない。
- 戦争と統制強化(1939〜1940年)
- 「Code du vin」の整備・改正と出庫制限
- 1930年代後半〜1939年にかけて、既存のワイン関連法令が整理され「Code du vin」として体系化される。
- その中で、収穫者だけでなく買い付け業者にも貯蔵義務や出庫制限への協力義務を課す規定、段階放出と強制蒸留を組み合わせて在庫を調整する仕組みが明文化される。
- 戦争準備の文脈で、鉄道・河川輸送が軍需優先とされるなか、ワインの民間市場への放出は、二段階・三段階といった複数トランシュに分割して行う体制が強まっていく。
- ヴィシー政権と配給統制(1941〜1944年)
- 1941年4月12日法律:CIVC 法
- 1941年4月12日法によって、シャンパーニュ地域に CIVC(Comité interprofessionnel du vin de Champagne) が創設される。
- この法律と後続デクレにより、シャンパーニュについては、生産量・販売条件・輸送・在庫管理などを単一のインタープロ職能団体が調整する枠組みが整えられ、戦時下における 価格・配給統制のモデルケースとなる。
- 他地域については CIVC 法の「準用」ではなく、別個の政令・価格決定・配給規則によって AOC ワインの統制が進められる。
- 1943年1月6日省令:AOCワインの配給統制への組み込み
- 1943年1月6日付の省令により、一部の AOCワインが一般配給に組み込まれ、供給が割当制の枠内で管理される。
- これにより、AOCワインも「高級品の例外」ではなく、配給・カルテ制度の対象となる方向が明確になる。
- 1943年11月8日法律:小売店の台帳義務
- 1943年11月8日法によって、AOC ワインおよび AOC ブランデーを扱う小売業者に「入出庫台帳」の記録義務が課される。
- これにより、流通の末端まで、どの AOC がいつ・どれだけ動いたかを追跡できる体制が整う。
- 多段階の段階放出
- 戦時期には、Statut viticole や Code du vin に基づくデクレにより、3〜5段階に分けた段階放出がしばしば採用され、市場価格の暴落・高騰を抑えつつ、軍需・民需を配分する仕組みが機能していたと考えられる。
- 戦後移行期(1945〜1949年)
- 1945年11月2日 Ordonnance:アルザスの再建と Statut viticole の継続
- Ordonnance n°45-2675 du 2 novembre 1945 は、アルザス地域の「Vin d’Alsace」を Appellation d’Origine(AO)として定義し、第1条以下でぶどう品種・アルコール度数・地理的区分などを規定したものである。
- 同時に、Code du vin の規定により、戦時中に整えられた Statut viticole(植栽制限・ブロカージュ・強制蒸留・段階放出など)の枠組みが基本的には戦後も継続される。
- 地域別の放出日決定
- 戦後も、各収穫年について「地域別の放出日」を定めるデクレが毎年のように発出され、供給状況に応じて 第一トランシュ・第二トランシュ… の解禁が新聞でも報じられる。
- 個別 AOC 政令と「証票なしの流通禁止」条項
- この時期の新設・改正 AOC デクレの中には、「証票を伴わない AOC ワインは流通させてはならない」という趣旨の条文を含むものが現れる。
- 段階放出の変容と「12月15日」統一(1950〜1951年)
- 1950年8月25日デクレ:段階放出統制の継続
- Décret n°50-1043 du 25 août 1950「Autorisation et échelonnement des sorties de vin de la propriété (campagne 1950-1951)」により、1950〜1951年キャンペーンにおける「所有者セラーからの出庫許可」と「段階放出」統制が継続される。
- 1951年3月7日省令:1950年収穫 AOC の商業化調整
- Arrêté du 7 mars 1951「Commercialisation des vins de la récolte 1950 d’appellations d’origine contrôlées」(JO 1951年3月11日掲載)は、1950年収穫の AOC ワインの販売条件・出庫スケジュールを調整する省令である。
- 戦時〜直後の細かい段階放出を前提としつつ、1950年ヴィンテージの AOC について、出庫の条件・テンポを簡素化する方向に舵を切った措置と理解される(ただし、制度全体としての「段階放出原則の全面廃止」とまでは一次資料からは断定できないため、この点は解釈レベル)。
- 1951年9月8日省令:1951年収穫 AOC & Vin d’Alsace の「12月15日以降」統一解禁
- Arrêté du 8 septembre 1951「Commercialisation des vins : échelonnement des sorties récolte 1951」(JO 1951年9月9日掲載)は、1951年収穫のワインの商業化と段階放出について定める省令。
- その第2条で、次のように規定される:生産者は、1951年12月15日以降になるまで、原産地統制呼称を有する1951年収穫ワイン、および地域呼称「Vins d’Alsace」のワインを自らのセラーから出庫することを許可されない。
- ここで、「特定の収穫年について、AOC全体(+Vin d’Alsace)に全国一律の販売開始日を設定する」という仕組みが明確な形で現れる。
- その後への連続性
- 1951年9月8日省令は、以後のすべての年に自動的に「12月15日一律解禁」を義務づけるものではないが、「収穫年ごとに全国共通の解禁日を定める」という発想を制度として初めてはっきり打ち出した例であり、後の1967年のデクレによる解禁日設定、1985年デクレによる「ボジョレー・ヌーヴォー第三木曜日」ルール
へと連なる重要な前段階となったと評価できる。
ボジョレー等の早出しを認めた「1951年11月13日の通達(Note du 13 novembre 1951)」は Legifrance に残っているのでしょうか?
「Note du 13 novembre 1951」は、1951年収穫ワインに対する早期出荷を一部AOCに特例的に認めた 税務当局(Contributions indirectes)による内部通達であり、Legifrance や Journal officiel には掲載されていません。
- 通達の根拠となったのは、「収穫1951年ワインの商業化に関する1951年9月8日の政令」(arrêté du 8 septembre 1951)。この政令自体は Legifrance に掲載されています。
- 11月13日通達は、1951年9月8日アレテに基づく例外措置として、Beaujolais、Mâcon、Côtes-du-Rhône など最大9つとされるAOCに12月15日以前の商業化を認める運用を示しています。なお、『nouveau/primeur』の表示を用いた早期販売が言及されることはありますが、表示の義務化までを当該通達から確認できる一次公刊資料は見当たりません。
その後、誰がどうやって解禁日を定めていったのですか?
以下のように、主に税務局とINAOによる「通達」(note de service)→政令による一元管理へと移行していきます:
| 期間 |
告示主体・法形式 |
中身 |
対象ワイン例 |
| 1951–1966年 |
税務署+INAO 連名の年次「通達」 |
収穫年ごとに10月末〜11月第3週で変動 |
Beaujolais, Muscadet, Gaillac 等 |
| 1967年 |
政令(décret)n°67-1007 |
11月15日 0時を全国一律の解禁日に設定 |
AOCで nouveau / primeur 表示可 |
| 1979年 |
政令(décret)n°79-756 du 4 septembre |
Vin de pays(IGP前身)で “primeur/ nouveau” 表示を制度化。「10月第3木曜 0時」から出荷可能 |
Vin de pays(後のIGP) |
| 1985年〜現在 |
政令 n°85-1149 du 29 octobre |
「11月第3木曜 0時」に変更 |
表に記載のすべての AOC(Beaujolaisなど) |
- 1952〜1966年はBeaujolaisとMuscadetが同日になるとは限らなかった
- 1967年以降、全国一律で11月15日に統一 → 1985年から11月第3木曜へ移行
- 1967年以降の解禁日通達は Journal officiel 掲載 → Legifrance で閲覧可
1967年まで公的には「Nouveau」という用語は使われなかったのですか?
Beaujolais のポップで「Nouveau Arrive」のようなものがあったと思いますが
結論 — 「公的な表示」と「現場での呼称」は別物
- AOC ワインのラベルに “nouveau / primeur” を明記してよい、という全国一律の法的根拠が初めて与えられたのは
デクレ(政令)n° 67-1007(1967年11月15日公布)です。これによって発売解禁日時も11月15日0時に統一されました。
- しかし 「Beaujolais nouveau」という文句自体は、その16年前から現場で使われており、非公式の店頭ポップ「Le Beaujolais Nouveau est arrivé」も 1950 年代初頭には確認できます。これは法規ではなくマーケティング用語としての慣行でした。
ポップ「Nouveau Arrive」が見られた理由
- 1951年の特例通達(Note du 13 novembre 1951) により、Beaujolais を含む一部の AOC ワインに対して、例外的に12月15日以前の出荷が許可されました。
これにより、リヨンやパリのカフェ・ビストロでは「届いたばかりの若飲みワイン」であることをアピールする必要が生じました。
- 当時はラベル表示に対する法的規制がまだ整備途上だったため、以下のような表現が店頭で自由に使われていました:
- 「Nouveau Arrive」や「Le Beaujolais Nouveau est arrivé」などのキャッチコピーを、黒板やガラス窓、ポップ看板に任意に掲示。
- 「primeur(若酒)」「vin de l’année(当年ワイン)」などの呼称が混在しており、用語の使い分けも明確には規定されていませんでした。
- この自由な店頭表示文化の中で、「Nouveau Arrive」のような簡略で印象的な表現が自然発生的に使用されたと考えられます。
まとめ
- 公的(法的)に “nouveau / primeur” を表示できるようになったのは1967年であり、それ以前の AOC 規格や官報には用語が現れません。
- とはいえ 1951 年の特例通達を契機に、現場では “Beaujolais nouveau” という呼称が広く流通していました。
よって「存在しなかった」のではなく、「法文に明記されていなかった」と理解するのが正確です。
ボジョレーとミュスカデは1951年時点で違いがあったのですか?
いいえ、どちらも1951年の通達で「例外的早期流通ワイン」としてまとめて扱われており、制度的な差はありません。ただし、実際の出荷日は ODG(栽培者団体)とINAO が個別協議して決定していたため、年によってはミュスカデの方が1週間以上早いこともありました。
「1951年11月13日の通達」後、ワインはすぐに出荷されたのですか?
文献・証言からの推測としては以下のとおりです:
- 通達は生産者側の要望を受けて急遽出されたもので、多くの生産者は瓶詰め・ラベル貼りなどの準備をすでに完了していました。
- したがって、通達直後(11月13〜14日)にはすでにリヨンやパリで販売が始まったと考えられます。
- ただし、当時の輸送手段(トラック・鉄道)によっては販売開始まで数日かかることもあったようです。
なぜ「primeur」と「nouveau」がほぼ同義になったのですか。
用語の本来のニュアンスと現在の扱い
| 観点 |
primeur(早出し) |
nouveau(若い) |
| 定義(本来) |
「通常よりも早出しする若飲みワイン」 |
「当年産の若いワイン」 |
| 現在の法的取扱(EU・フランス法) |
EUワイン法では、「primeur」は「nouveau」とセットの伝統的表示(traditional term)として PDO/PGI ワインに結びつけられている。
旧 Reg.(EC) No 607/2009 の規定が現行 Reg.(EU) 2019/33 などに引き継がれ、フランス国内では AOP/IGP ワインに限定して使用可能。 |
「nouveau」も「primeur ou nouveau」というペアの伝統的表示の一部として PDO/PGI ワインに位置づけられており、フランス国内では AOP/IGP ワインでのみ使用可能。 |
| Vin de France における使用可否 |
使用禁止(フランスの実務上、「primeur」は地理的表示付きワイン専用とされ、Vin de France では用いない) |
使用可能(Décret n° 2012-655 du 4 mai 2012 art. 11 に基づき、「nouveau」を表示する場合は収穫年の表示が義務。その文字サイズは「nouveau」と同等以上とされ、さらに ANIVIN/FranceAgriMer のガイドラインによりヴィンテージ認証も求められる) |
- AOP/IGP ワインにおいては、「primeur」と「nouveau」は法的に完全に同義語として扱われている。
- 一方で Vin de France には「早出し」制度が存在せず、制度上「primeur」は使用不可。nouveau のみ使用可能。
歴史的には「primeur=早出し」「nouveau=若いワイン」の対立概念だった
| 年代 |
キー文書 |
主語となったカテゴリ |
内容 |
用語のニュアンス |
| 1951 |
税務当局による通達「Note du 13 nov. 1951」 |
AOC Beaujolais など |
「12月15日まで販売不可」の制限に対して、収穫年11月中旬の販売を許可 |
「primeur」=通常より早く販売するワイン |
| 1979 |
Décret 79-756 |
当時の V.d.P(現在のIGP) |
消費者解禁=10月第3木曜。条文で「primeur ou nouveau」を併記 |
「nouveau」を「早出しワインの語」として取り込む |
| 1985 |
Décret 85-1149 |
AOCワイン |
解禁日を「11月第3木曜」に統一、「primeur ou nouveau」表記が法的に完全同格化 |
|
Vin de France(地理的表示なし)が primeur を名乗れない理由
- 解禁日という概念が存在しない
- VSIG(Vin de France)にはAOP/IGPのような認証スケジュールがなく、「通常より早い」という概念自体が存在しない。
- 誤認防止
- フランス国内法(Décret 2012-655 art.11)は、primeur/nouveau と表示するすべてのワインに対して収穫年の表示義務と文字サイズの条件を課すものであり、VSIG での使用可否そのものは規定していません。VSIG が primeur を名乗れず nouveau のみ使用できるのは、EU の伝統的表示制度とフランス当局・業界団体(Anivin de France/FranceAgriMer など)のガイドラインによる運用によるものです。
- マーケティング上の自律制限
- 業界団体 Anivin de France のラベルガイド等では「VSIG は nouveau のみ」と繰り返し周知。
結論(ご質問への回答)
「primeur は “早出し”、nouveau は “新酒” だけでは?」
- 歴史的にはその通り:1950年代までは primeur が「早出し」を意味し、nouveau は「今年の若いワイン」を意味していた。
- しかし、1979年以降のフランス法および2018年 EU規則により、「primeur ou nouveau」がペアで法定化され、AOP/IGPでは実質的に同義語として運用されている。
- Vin de France(地理的表示なし)は「解禁日制度」の対象外であるため、primeur を名乗れず、nouveau のみが許容される構造。
地理的表示のないワインで「新酒(nouveau)」のような語を合法的に使えるのはフランスだけですか?
EU 加盟国では、地理的表示を持たないワイン(いわゆる Vin de France や Vino da Tavola に相当するカテゴリー)には、EU 法上の伝統的表示語(たとえばフランス語の「primeur」やイタリア語の「vino novello」など)を原則として付すことができません。
これは、「primeur」や「vino novello」といった語が EU 法上の「伝統的表示語(traditional terms)」として登録されており、その使用対象が保護原産地呼称(PDO)または保護地理的表示(PGI)付きワインに限定されているためです。
EU加盟国における「nouveau」などの使用制限
EU のワイン表示一般規則(Regulation (EU) No 1308/2013 および Regulation (EU) 2019/33)では、フランス語の「primeur」やイタリア語の「vino novello」などの伝統的表示語(traditional terms)は、保護原産地呼称(PDO)または保護地理的表示(PGI)付きワインについて登録されている場合に限って使用が認められています。
したがって、地理的表示を持たないワイン(いわゆる Vin de France や Vinho de Mesa に相当)には、原則としてこれらの伝統的表示語を用いることはできません。
この点は EU レベルで制度が詳細に規定されているためであり、加盟国が独自の判断で、地理的表示のないワインにこれらの伝統的表示語の使用範囲を自由に拡張することはできません。
フランスの例外性
ただしフランスでは、地理的表示を持たないワイン(Vin de France/VSIG)についても、行政上の取扱いと業界ガイドラインに基づき「vin nouveau」表示が実務上認められています。
この取扱いは、Anivin de France(Vin de France 部門を統括する業界団体)が作成するラベルガイドや、INAO・税関(DGDDI)・消費者保護当局(DGCCRF)など関係当局による通達・ガイドライン(BOD 掲載文書を含む)によって、運用面で明確化されてきたものと整理できます。
関連ページ
- posted : 2025-07-12, update : 2025-11-25
- Author : katabami (Editor) / ChatGPT (Writing Assistant)
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