ワインエキスパートに教わるワイン入門
ランブルスコとは
1963年の大統領令(D.P.R.)第930号「モストおよびワインの原産地呼称の保護に関する規定」は、原産地呼称(denominazioni di origine)にぶどう品種名を組み込むことも考慮していますが、イタリア以外で同様の考え方をワイン法に取り入れている国はありますか。
1963年の大統領令(D.P.R. 930/1963)で、原産地呼称にぶどう品種名を「付加することもできる」と法文上明確に認めたのは、当時としてはイタリアに特徴的な考え方でした。他国は当初その発想を持たず、基本的に「原産地呼称=地名」として運用していました。ただし、例外的に品種名を含む呼称がフランスやポルトガルでは歴史的に存在しました。
イタリア(1963年)
フランス(例外的事例)
- AOC 制度(1935年法)は原則「地名ベース」。
- しかし一部には、品種名を正式名称に含む AOC が存在します。
- これは「例外的に品種名を呼称名に組み込んだ歴史的実例」であり、制度全体の原則ではありません。
ポルトガル(例外的事例)
- 1930年代からの DO 制度において、品種名を含む呼称が公式に存在しました。
- Moscatel de Setúbal(1907年の法令で原産地として公式に認められ、その後の法改正を経て現在は DOP として位置づけられています)
DOC Lambrusco di Sorbara の主要品種は Lambrusco di Sorbara ですが、この品種名がそのまま原産地呼称として用いられているのでしょうか。
DOC Lambrusco di Sorbara は、ランブルスコ系品種の総称「Lambrusco」と、モデナ県ソルバーラ地区を指す地名「Sorbara」を組み合わせた原産地呼称です。
規定では Lambrusco di Sorbara を最低 60%以上含むことが求められ、残りは Lambrusco Salamino を最大 40%、さらに他の ランブルスコ系品種を少量加えることが認められています。
この呼称の中心となる Lambrusco di Sorbara は、機能的に雌性(雌花性)で自家受粉が困難な特徴をもちます。そのため、伝統的に花粉樹として Lambrusco Salamino を混植する習慣があり、この栽培実態が規定上の品種構成にも反映されています。
したがって、DOC 名称は主要品種に由来しつつも、地名と結びつけて成立した呼称であり、さらに栽培面では受粉を補うために他のランブルスコ系品種が不可欠という背景を持っています。
ランブルスコ系品種は「地理的表示のないワイン」では品種名を表示できません。PGI においても、個別品種名は用いられず、総称としての「Lambrusco」が使われます。
PDO では一部の品種について品種名表示が認められる場合もありますが、基本的には PGI と同様に、複数の ランブルスコ系品種を認可し、総称として「Lambrusco」を用いる規定が採用されています。
なぜ製品仕様書では、単一品種名の表示を最初から避けるような規定が多いのでしょうか。
製品仕様書で単一品種名表示を避け、総称「Lambrusco」を用いる規定が多いのは次の理由によります。
栽培上の必然性
- 代表品種のひとつ Lambrusco di Sorbara は雌花性で自家受粉が難しく、Lambrusco Salamino など他系統を花粉樹として混植する必要があります。
- そのため実際の栽培・醸造は複数品種が関与するのが前提となり、単一品種表記は現実と乖離しやすいのです。
歴史的慣行
- モデナやレッジョ・エミリアでは、古くから複数の ランブルスコ系品種を組み合わせてワインを造るのが一般的でした。
- 製品仕様書で総称を用いるのは、この伝統を法的に反映したものです。
消費者認知とブランド性
- 海外市場を含め、「Lambrusco」という総称は長年「赤い発泡ワイン」のカテゴリー名として定着しています。
- 個別品種名(Sorbara、Maestri、Marani など)は認知度が低く、総称を使う方がブランドの一貫性を維持しやすいのです。
まとめ
単一品種名を避けるのは、栽培面での実態、歴史的なブレンドの慣行、そして市場での認知度とブランド維持のためであり、総称「Lambrusco」を前面に出す方が制度的にも実務的にも合理的だからです。
PDO では「Lambrusco」は赤・ロゼですが、PGI では白ワインの製造も認められています(frizzante・spumanteを含む)。
白の「Lambrusco」はどの程度生産され、スタイルは何が主流でしょうか。
従来 PDO の「Lambrusco」は赤・ロゼでしたが、DOC Lambrusco di Sorbara に白スプマンテが追加されました(2024年末の改正)。
白「Lambrusco」の生産量と主流スタイル
- 公的に分解された統計(“白Lambrusco”の生産量や比率)は、現時点で公開ソースを確認できませんでした。Lambrusco 全体の統計はあっても、色・様式別(白/ロゼ/赤、スティル/発泡)の細分は提示されていないのが実情です。
→ よって正確な数量・比率は不明とお答えするのが妥当です。
- 傾向(制度・市場実例からの推定)
- PGI での白は少量の“ニッチ”:白仕立てを許容する規定は存在しますが、実際の市場露出は限定的で、主に frizzante として流通している事例が目立ちます。
- PDO での白は新設:制度上可能になったばかりで、当面は小規模スタートと見るのが自然です。現行の告示・解説も「追加」という位置づけで、主要枠は依然として赤・ロゼ。
1970〜80年代にアメリカで「ランブルスコ」が大ブームとなったのはなぜですか?
米国ブームはなぜ起きたか(1970〜80年代)
- 飲みやすさ:甘口・低アルコール・弱発泡が当時の米国の嗜好に合致しました。
- ブランドと輸入商:イタリア・エミリア=ロマーニャ州の協同組合「カンティーナ・リウニーテ(Cantine Riunite)」が造るランブルスコは、米国では Banfi Vintners によって独占的に輸入され、大規模な流通と広告戦略で全国区に広がりました。
- マーケティング:「Riunite on ice, that’s nice」というテレビCMを大量投下し、“氷で冷やして日常的に飲む赤ワイン”という新しい飲み方を提示しました。ワイン初心者層や若年層にも浸透しました。
- 価格・流通:シャルマ方式(タンク内二次発酵)による大量生産と広域ディストリビューションで、手頃な価格と入手性を実現しました。
1970〜80年代にアメリカで流通したランブルスコはDOCだったのですか?
アメリカ市場で流通の中心となっていたのは、ブランド名で販売された安価な DOC 以外のランブルスコでした(当時は主に Vino da Tavola として扱われ、その後は IGT「Emilia / dell’Emilia」などに分類されるスタイルが主流となります)。
DOC 表示のランブルスコも一部輸出されていましたが、量的には少数派にとどまりました。
代表例は Riunite ですが、同時期には エミリア=ロマーニャ州のワイン会社「フラテッリ・チェッラ(Fratelli Cella)」 が展開した Cella も重要なブランドでした。Cella は「Chill a Cella!」というテレビ広告で広く知られ、1979年から80年代前半にかけて米国で複数のCMが放映されました。そこではユーモラスな “Aldo Cella” というキャラクターが登場し、家庭的で親しみやすいイメージを打ち出したのが特徴でした。
このほか、Cavicchioli、Chiarli、Lini、Donelli といった伝統的生産者も存在しましたが、1970〜80年代の米国マス市場における広告露出やブランド存在感という点では、Riunite と Cella が突出して確認できます。
EUでランブルスコ系品種が商業的に栽培されているのはイタリアだけですが、他の国の栽培状況はどうなっているのでしょう。
確認できる国外事例(イタリア以外)
- アルゼンチン
- Lambrusco Maestri が 44.4 ha、Lambrusco Grasparossa が 8.4 ha 栽培されています(2023年、INV統計)。合計でおよそ 53 ha にとどまり、かつての「数百ヘクタール規模」といった推測より小規模であることが確認できます。主な栽培地はメンドーサ州を中心とする地域です。
- オーストラリア
- ワインセレクターズ誌の解説によると、Lambrusco はオーストラリアでは広く植えられてはいないものの、導入例が存在するとの記述があります。
- Vinerra のプロファイルによれば、Lambrusco Maestri はオーストラリアでは通常ブレンド用に使われることがあるとの情報があります。
- その他国(確認例なしまたは弱い言及)
- ウィキペディアの “Lambrusco” 項目には「アルゼンチン、オーストラリアのほかでも Lambrusco が生産される」との記述がありますが、具体国名や規模は記載されていません。
- 一部解説サイトでは「Lambrusco はイタリアが主要産地だが、他国でも見られる」といった一般表現があるものの、具体的な植栽面積・認定例を示すものはほとんどありません。
イタリアの品種リストに載っているランブルスコ系品種を載せておきます。
Vini frizzanti
- «secco»: ..................... da 0 a 15 g/l;
- «semisecco» o «abboccato»: da 12 a 35 g/l;
- «amabile»: ................... da 30 a 50 g/l;
- «dolce»: ...................... superiore a 45 g/l.
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- posted : 2025-10-01, update : 2025-11-27
- Author : katabami (Editor) / ChatGPT (Writing Assistant)
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