| レフュジア | 考古・古生態証拠 | 現生集団の遺伝的痕跡 | 役割 |
|---|---|---|---|
| イベリア南部・西部沿岸 | 完新世初頭まで連続する花粉/種子層 | 葉緑体DNAクロロタイプAなど西地中海系統が高頻度 | 西ヨーロッパ再拡散の出発点 |
| イタリア半島(ティレニア〜アドリア沿岸) | マクロレマン群・炭化材 | 中部〜北イタリア野生群に固有対立遺伝子 | 北・中欧への「イタリア回廊」形成 |
| バルカン半島(ダルマチア・ギリシャ) | 湖成堆積物中の持続的花粉 | バルカン独自のハプロタイプクラス | ドナウ・カルパチア盆地への拡散源 |
| コーカサス〜黒海南岸 | 更新世後期〜完新世にかけて連続する木質遺骸・花粉記録 | 高多様性・原始的ハプロタイプ | 東欧・中東双方への供給基地 |
| レバント〜ザグロス | 旧石器〜中石器遺跡のVitis種子と、新石器時代の容器から検出される酒石酸残渣 | 近縁育種系統が集中 | 後の栽培化(西アジア)と交差 |
はい、「氷河期」と「氷期」は意味が異なります。また、「ハプロタイプ」という用語は遺伝学で重要な概念です。以下に整理して説明します。
| 用語 | 説明 | 代表的な時期 |
|---|---|---|
| 氷河期(Glacial age / Ice age) | 地球規模で極地や高緯度に氷床が存在する時代全体のこと。温暖期(間氷期)を含む長い地質時代。 | 約260万年前〜現在(第四紀) ※現在も「氷河期」に含まれる |
| 氷期(Glacial) | 氷河期の中で、寒冷で氷床が拡大した時期。 | 最終氷期:約11万7000年前〜約1万1700年前(=完新世の直前) |
| 用語 | 説明 |
|---|---|
| ハプロタイプ(haplotype) | 遺伝子やDNAの中で、特定の領域において一緒に受け継がれる一群の遺伝的変異(アレル)の組合せ。核ゲノムでもミトコンドリアDNAやクロロプラストDNA(母系遺伝)でも用いられる用語で、ブドウの系統地理ではとくに葉緑体DNAのハプロタイプ(クロロタイプ)がよく使われる。 |
あるブドウ個体の葉緑体DNAに以下の3か所の変異があったとします:
| 位置 | 塩基配列 |
|---|---|
| 101番目 | A → G |
| 205番目 | C → T |
| 330番目 | G → A |
この変異の組み合わせが特定の系統と一致すれば、それが「ハプロタイプ X」とされ、分類・系統樹解析に使われます。
ここまでで「ハプロタイプ」を整理しました。ご指摘のとおり、過去の分布を花粉から考えるなら、その前提として、ブドウの花の性型を押さえておく必要があります。花粉の性質(量や形、稔性の有無など)は、この性型の違いを強く反映するからです。
野生のブドウ(Vitis vinifera subsp. sylvestris)は基本的に雌雄異株で、雌株は雌性花(機能的雌花)、雄株は雄花をつけます。雌性花にも雄しべはありますが、多くの場合うまく機能せず、花粉は不稔(または極めて低稔性)です。そのため、雌株が結実するには近くに雄株があり、花粉を受け取れることが必要です。
一方、栽培化の過程では、栽培上の都合から「1本でも安定して実がなる」個体が選ばれ、雄しべと雌しべを同時にもつ両性花の個体が広がりました。両性花は自家受粉しやすく、受粉相手がいなくても結実しやすいため、畑で扱いやすいからです。
ただし栽培ブドウでも、少数ですが雌性花(機能的雌花)を示し、花粉が不稔で自家受粉できない品種があります。こうした品種は結実のために、近くに別品種などの花粉源を必要とします。
| 指標 | 種子 | 花粉 |
|---|---|---|
| 主要形態差 | 野生: 球状で嘴短い 栽培: 梨形で嘴発達 |
性型による dimorphism が主体 |
| 判別精度 | 光学顕微鏡で高い | 性型は区別可、野生vs栽培は困難 |
| 考古利用 | 分布域・栽培化時期の推定 | 分布域・花型組成の推定 |
| 花型 | 花粉タイプ | 開口部 | 粒径目安 | 稔性 |
|---|---|---|---|---|
| 野生 subsp. sylvestris ♂ | trizonocolporate | 3 | 25–30 µm | 可稔 |
| 野生 subsp. sylvestris ♀ | inaperturate | 0 | 15–20 µm | 不稔 |
| 栽培 subsp. vinifera 両性 | trizonocolporate | 3 | 25–30 µm | 可稔 |
| 栽培 雌系統(少数) | inaperturate | 0 | 17–25 µm | 不稔 |
後氷期(約12,000年前以降)の気候温暖化により、南ヨーロッパのレフュジア(避難地)からヴィニフェラは再拡散しましたが、河畔の砂礫混じりで通気性が良く、ときに冠水する氾濫原が好適環境の一つであり、そうした場所を中心に再定着が進んだと考えられます。
| 年代 | 主な出来事 |
|---|---|
| 1850年代 | ビクトリア朝の植物収集家が北米苗木を英国へ導入 |
| 1863年 | 仏ローヌ南部で初の大規模被害確認 |
| 1860–1900年 | 欧州ブドウ園の2/3〜9/10が壊滅 |
| 20世紀以降 | 世界のワイン産地へ拡散 |
| 土壌・立地条件 | フィロキセラの繁殖性 | 野生ブドウへの影響 | 生残・枯死の傾向 | 典型例 |
|---|---|---|---|---|
| 粘土質・シルト質で排水が悪い土地 | 高い(根に長く留まれる) | 根瘤が多発しやすく、弱る | 高い枯死率 | ハンガリー平野部、フランス内陸低地(例:ボルドー周辺) |
| 砂質・礫質・排水が良く、周期的に冠水する河畔地 | 低い(水はけが良く、冠水により窒息死) | 寄生が抑えられ、根の健康が保たれる | 生残個体が多い | ドナウ川氾濫原、地中海沿岸の砂丘・潅木林 |